第12話・前編 新入社員、早くも休職。そして異世界(ブラック企業)に転生(就職)をしたオレはチートスキルを手に入れた。

 今エピソードはふざけて書いていたら(オイ!)少し長めになってしまったため、三部構成になっております。のんびりとお読みいただければ幸いです。



<問・精神疾患で失ったもの>

 ブラック企業に就職してからおおよそ八か月が過ぎた十二月のある日の早朝。新人社員のノルマである机拭きをしている時、僕の顔を見た社長が言いました。


「お前、大丈夫なのか?」


 大丈夫なわけねーだろ、タコ。

 と腹の中では思っていましたが、もはや口にするほどの元気はありません。


「いつまで、もつのかわからないです」


 ぼそっと口にした言葉が、その場にいた人たちに響いたのでしょう。なんせ連日「死なないで」って言われていましたから。

 それから程なくして会社の方から休職しろと命令が下され、数か月ほど実家で休養を取る事になりました。


 その日の夜、すでにA社を辞めていたDさんから突然電話がありました。どうやら僕の休職を知って電話をくれたようです。めっちゃ良い人や……。

 DさんにはすぐにA社を辞めるように言われたのですが、不思議な事に、その時僕は「辞める」と言いませんでした。完全に心神喪失。ブラック企業の洗脳に飲み込まれていたのだと思います。


・まずは病院へ

 さて、実家に帰りまして、まずは病院です。紹介状プリンター精神科医から紹介状を書いてもらっていたので、地元にある総合病院の精神科へ向かいました。お医者さんは四十代くらいの清潔感のある方でしたが、この辺りの記憶が完全に欠落しています。


 最初の診断の時、一時間くらいカウンセリングをしたそうなのですが、全く記憶にありません。また毎食後に二十錠くらい精神安定剤の類を飲んでいたらしいのですが、こちらも記憶にない。あれれー、おかしいなー。

 ちなみに、そんなに大量の薬を飲むと脳は酩酊して、朦朧としたまま身動きが取れず一日が終わります。端から見れば問題行動を起さないので治っているように見えますが、当人はただただ生き地獄を味わっています。

 また、詳細は後述しますが、少し体が動くようなとき(躁状態)は、まるで虫刺されを掻き壊すように、無茶苦茶な活動状態に陥り、心身ともに疲弊することになりました。


 診察の際に唯一、しっかり覚えているのが初診の時、脳のCTスキャンを撮影したことで、なにせCTなんて生まれて初めて。ドキドキのワクワクだったのです。

 CTの結果、脳腫瘍などの異常はなし。と言うわけで精神疾患が確定したわけです。今までCT取らなかってけど、それでいいのか!?


・療養生活が始まるも、休み方がわからない。

 その後、療養生活が始まるのですが、困ったことに。頭の悪いA社の幹部は励ましのつもりなんでしょうけれど

「丁度いい機会だから、何か新しい事を勉強してきなさい」

 実家に帰る間際、そんなこと言ってましたし。


 とりあえず、息抜きがてら地元の友達に連絡して遊びに行くことにしました。ブラック企業勤めの頃はプライベートな時間なんて取れなかったので、思いっきり羽を伸ばすのです!


 ……結論から言えば、これは完全に失敗でした。

 この時、僕は躁うつ病も発症していました。しかも完全に躁状態。


 つまりテンション爆上げ! パーリーピーポー状態!


 寝ないで遊ぶ。吐いても酒を飲む。常に体を動かしていないと我慢ならなくて、椅子に座っている時や、ご飯を食べている時でさえも上半身を前後に揺らさないと耐えられない。常時ヘッドバンキングしてるようなものです。

 日に日にアルコールの量も増え、多い時には一晩でウイスキーを一本空け、タバコは一日二箱以上。もしも当時ドラッグに関わる状況だったら手を出していたかもしれません(この数年後、ドラッグと関わりかける? 事があったので……手は出してないよ!)。ダメ! 絶対!


 ちなみに現在、お酒が不味く感じるようになり二年ほど飲んでいません。またタバコも臭いが嫌いになり五年ほど吸っていません。さらに好きだったコーヒーも、飲んだ直後に気分の落ち込み、焦燥感、冷や汗、脈拍の上昇が起こるようになり飲めなくなってしまいました。

「コーヒーでバッドトリップするヤツ初めて見たわ!」って笑われます。日本茶もちょっと苦手になり、昆布茶や紅茶やハーブティーばかり飲むようになりました。タピオカミルクティーも好きですよ。女子か!?

 長期的に見れば酒、タバコ等の娯楽を失ったわけです。まぁ、お金もったいないからいいんだけど。


・躁状態、怖い。躁状態後のうつ状態も怖い!

 当時の僕は、この躁状態と言う物の厄介さを理解していませんでした。僕なりの解釈なのですが(多少は調べましたよ)、この時の僕の脳は過労のせいで脳内の興奮物質(ドーパミン的なヤツ)が出てくる蛇口が壊れていたのだと思います。つまり興奮物質垂れ流し状態。パーリーピーポー。いえあ!

 なので、この状態で療養を取るならば、強靭な意思の元、 と決め込んで布団から動かない固い決意が必要なわけです。とはいえ脳は興奮してますので眠れませんし、じっとしていると頭の中では疑心暗鬼と白昼夢が止まらなくなります。


 さて、ちょっとお恥ずかしい話題ですが、精神疾患と性欲との関係についての話。

 バカにできない物らしく、うつ病等など症状の重症度合いを測る指針でもあるらしいです。

 で、重症化すると性欲がなくなる、なんてよく聞きますが無くなるだけじゃありません。個々人によって違いはあると思いますが、。僕の友人でうつ病にかかった人(男)が居るんですが、彼から相談された時に


友達「具合は悪いし、気分は落ち込んでるんだけど、異常に性欲が強くなってるんだよね」

ボク「あ、それ経験あるわ!」


 なんて話題になったことがあります。

 これまた僕の推論で申し訳ないですが(これも多少は調べたのよ)、垂れ流された脳内物質はいずれ枯渇してしまいます。すると今まで得られていた物がなくなってが出てきます。

 結果、興奮物質を求め、ドーパミンを手っ取り早く脳に与えるため性欲に変化がでたのかもしれません。こういう時は脳に刺激を与えてはいけないので、バカバカしいと思いつつも禁欲したほうが良いです。

 性依存症(結局のところドーパミン依存)なんて精神疾患も世の中にはあるくらいですし。


 ちなみに僕の場合、性欲が強くなっている時は躁状態が収まり、うつ状態になっている時でした。

 個人差はあると思いますが、僕の場合、こうなると指一本動かすのも面倒くさい。というか動かせない。いうなれば『布団に溺れる状態』になりますので、悶々としながら寝るしかありません。しまいに自分が悶々としてるのか、夢の中の自分が悶々としてるのかわからなくなります。

 なるほど、古代中国の荘子が言ってた『胡蝶の夢』はこういう状況だったのか(違います)。


・ついにぶっ倒れる

 とある、うつ状態の日でした。夕方、風呂から上がったとたん立ち眩みがやってきました。当時、立ち眩みは日常茶飯事だったので壁にもたれたまま立ち止まっていたのですが、そのまま意識を失いました。全裸で。

 倒れた時に大きな音を立てたので家の者が驚いて脱衣所のドアを開けると、血まみれの僕が倒れていたそうです。全裸で。


 すぐに意識は取り戻せたんですが、顔から床に突っ込み、顎のあたりがバックリ割れていました。血塗れです。とりあえずタオルで圧迫止血しながら服を着て、そのまま救急病院へ行きました。

 幸いすぐにお医者さんに診てもらえることになりました。病院のベッドに仰向けになりながら、少し気になる事があったので先生に相談しました。


「倒れた場所が埃っぽかったんで、消毒しっかり目でお願いします」

「よーし、よし。任せとけ!」


 お医者さん、口はマスクで隠れてるので表情はわかりませんでしたが、それでもテンション上がってるのがうかがえました。


 そして始まる消毒地獄。


 傷口を思いっきり引っ張られて、ブラシ? みたいなのでゴシゴシ洗われました。もう痛すぎて痛くないんですけど(何言ってるかわからないだろうけど、本当に痛すぎて、痛くないのよ)傷口をもてあそばれてるのが精神的にキツい!

 ちくしょう! この医者、とんでもねぇサド野郎だ!


 で、洗い終わったら医療用ホチキスで六~八回くらいバチン、バチンって止めて終了。ちょっと、一応顔の傷なのよ。お婿に行けなくなっちゃうじゃない。


 まぁ、いいんですよ。顔の傷くらい。ちょうどフィギュアスケートの羽生弓弦選手と同じ場所に傷ができたんで、ちょっと男ぶりが上がった、という事にしておこうじゃないか。


 蛇足ですが、すでに眉と頬にも傷があるので、今さら顎に傷が増えても気にならないのです。

 頬の方は丁度、『ワンピース』のルフィの顔の傷と同じところ。まあ、こっちも男ぶりが上がったってことにしておこう。主人公だしね。

 傷キャラといえば『ゴールデン・カムイ』の杉本佐一が理想だけど、あの数の傷を作るのは痛そうですね……いや、もうすでに十分痛いわ!


 さて、この続きは中編にて。ブラック企業に入ったことで僕が手に入れたスキル一覧をしたためております!

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