番外編 ブラック企業こぼれ話。入社前から教育まで編

 今回は趣向を変えて、A社入社から約2ヵ月弱の間に起きたブラック企業小話をオムニバス形式でお送りいたします。


【ケース1・飲み会はゲロパニック!】

 A社の飲み会はだいたい一月に一度、社長が副業で経営しているバーで行われます。ちなみに飲み会などの社内イベントのために、毎月の給料からお金が引き抜かれています。実際、飲み会は毎月じゃありませんし、イベントをやる暇なんてありませんけどね。


 さて、新人が入ったという事で行われたのが新人歓迎会です。

 バーを貸し切って行われたのですが、社長の一言で同期一同で(アカペラ)、お返しに前年に入社した先輩にも歌わせたり(アカペラ)。

 最初に社長が指名した人がビールの一気飲みをして、飲んだ人が次の人を指名する一気飲みリレーが始まったり。


 パワハラ、アルハラ、なんのその!

 そして巻き起こるゲロパニック!


 僕もゲロゲロしたわけですが、特に悲惨なのが【ソフト開発部】の部長。

 二十代で部長になった仕事の出来る人なのですが、真面目な性格がアダとなり自分を追い詰めてしまう人なんだと思います。新人歓迎会の時は耐えていましたが、大抵飲み会の後半はトイレから出てこれなくなり「こんな会社辞めてやる!」「潰れちまえ!」等々、絶叫が始まります。

 普段、優しい人だったし、よほど辛かったんだろうなぁ。


【ケース2・電話に出ろ!】

 これはブラック企業に限らず、どこでもある事かもしれません。3コール以内に近くの新人が電話に出るように促されます。もし出ないと、社長がブチギレる通常ルートへ進むだけです。


【ケース3・休日出勤でご満悦】

 ご満悦なのは社員じゃありません。社長です。

 休日出勤すると朝礼で、社長からお褒めの言葉を頂ける可能性があります。残業代は出ません。

 先日、取材を兼ねて、転職系サイトでA社を調べてみたら、今もそうらしいです。

 労働基準法違反です。


【ケース4・帽子を取れ!】

 これは同期のAさんと、Dさんが、【ソフト開発部】の先輩Gさんに飲みにつれていってもらった時の話らしいです。お休みの日だったので、皆さん私服だったそうな。

 社長の経営するバーへ行ったらしいですが、そこに現れたのが社長です。さすがに自分の会社の社長が来たので、三人は会釈をしつつ簡単に挨拶をするのですが、そこで社長がAさんに絡んできたそうです。


「なんで帽子取らないんだ?」


 さすがに自分のお店で、他にお客さんもいるので、いつものように怒鳴ったりはしませんが、そこは社長。しつこい。


「俺が若い時は……云々」


 老害の定型文をボソボソ、ネチネチ呟いてたそうです。

 Aさんは「プライベートまで口出しされる筋合い内から」と帽子は取らなかったそう。それでいいと思う。


【ケース5・保養所? 社員割引?】

 これはA社内に存在する都市伝説。

 A社は隣県に保養所を所有していて、社員は自由に使って良いらしい。

 また、社員である証明書を持っていれば、いくつかの施設(社長の経営してるバー以外にも)を特別待遇で使用できるらしい。

 これは学生向けの企業紹介や、社外向けの資料にが、あくまでも都市伝説。信じるか信じないかは、あなた次第です。誰も使ったことがなく、使う暇がないので、嘘か誠かわからない


【ケース6・タイムカードはありません】

 ブラック企業の常識。スタンダード・オブ・ブラック企業。なんで英語にした?みんな手書きです。この程度の基礎的な話題は今更ですね。


【ケース7・社員の年齢層】

 この社員の年齢層について語るのは、 という疑問を解体することでもあります。


 社員の平均年齢は時期によって変動はありましたが、三十代前半くらいだったと思います。理由はから。

 別の理由が、から。

 社会を知らない新卒はが、という誤った情報を信じてしまいます。入社直後からのスパルタ教育によって、新入社員にこの勘違いを起こさせるのがA社の狙いなのでしょう。

 結果が理解できるまでA社を辞めようという選択肢を見つけることができなくなり、「どこの会社に行ってもA社と同様に厳しいんだから……」と言って転職活動を行うことはありません。

 この洗脳が解ける期間は人それぞれですが、早い人で数日~数か月、長い人で十年弱(僕は一年半。今思うと、あんなとこに一年半もいたとか正気じゃないわ)。ただし確実に新入社員は必ず辞める、ので社員の人数に変化がなくても平均年齢はいつまでも若いままなのです。

 ちなみに新卒入社で四十歳までA社に残る人はゼロだったと思います。

 たとえて言えばポル・ポトの子供国家のような物ですね(知らない人はポルポトで検索だ!)。


 その点、中途採用の人は、ちゃんと社会を知っているので躊躇なく辞めていきます。

 それに技術職の世界と言うのは、それなりに歳が行っててもありますので(ま、エンジニア35歳定年説なんてのもありますから、一概には言えないけれど)。


【ケース8・社員の既婚率】

 これは社員の平均年齢にもかかわってくる話題です。

 はじめに結果を言ってしまえば、既婚率は極めて低いです。

 理由は給料が低いから。給料体系については別の機会に記載しますが、少なくとも結婚して子供育てるには不安な金額です。せめて労働時間が短ければ、子育て時間を捻出できるので一考の余地がありますが、子供の顔なんて見れない生活が待っているのは疑いようがありません。

 なので先輩方は結婚すると転職していく。結果的に社員の平均年齢が下がる。

 よって若手社員か、未婚のアラフォー、アラフィフ中途社員だけが会社に残り続けます。


【ケース9・はかない恋物語 ~銀のエンゼル~ 】

 これは入社して一か月後くらいに会社を辞めた同期のDさん(女性)が、同期達で開いた送別会の際に話してくれたことです。


 Dさんが朝礼の司会の日でした。彼女は朝礼最後のフリートークで、お菓子のチョコボールのおまけに付いてくる『銀のエンゼル』についてスピーチをしました。フリートークでは真面目なだけでなくユーモアも求められる謎ルールが存在したので、見事な話題選択だったと思います。

 その数日後、給湯室でDさんに声をかける人が居ました。

 【ソフト開発部】に所属していたTさんと言う人です(正直な話、すぐにリストラされた人なので、僕の記憶から消えてた人)。Tさんの簡単なプロフィールですが、


Tさん:

ソフト開発部所属(たしか)。四十代後半の男性。

中途採用。未婚。

白髪交じりのメタボ体形。

なんかいつもニコニコニタニタしてる。


 そのTさんが給湯室で、おもむろにビニール袋をDさんに差し出し、

「銀のエンゼル集めてるんだってね。はい、あげるよ」

 そう言って立ち去るTさん。ビニール袋の中にはが入っていたそうな……


 Dさんの送別会で、この話を聞いた僕らもドン引きでしたが、なぜか同期のBさんだけが

「えー、それって、めちゃくちゃ純愛じゃん」

 って笑ってたのを覚えています。Bさん、絶対、楽しんでたと思う。




 と言うわけで、番外編、今回はここまで。今後も本編では書けなかったこぼれ話を、まとめて番外編として紹介していこうと思います。


 それでは、今回も読んで頂き、ありがとうございました!

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