第6話 魔物狩り 前編
今、私は町の外にあるジュペル森に来ています。
正直にいって、かなりやばいです。低級魔物がウヨウヨいます。
元々少なからず魔物は住んでいたようだが、どうやらフォレストオーク達が来たことにより魔素が高まり生態系が変わってしまったようだ。
基本的にはゴブリン、ウルフしかいない比較的平穏な森だったが、今はそこに、フォレストオークが加わっていて、ゴブリンやウルフも凶暴化している。
今は二回ほどゴブリンとウルフに襲われて撃退した後だ。
ゴブリンは好戦的だが、こちらから攻撃したり縄張りに入らなければ襲ってこないはずのウルフが自分から向かってくるのは異常だ。
戦い方は、私とシズルが前衛で先生が後衛。先生は危なくなるまで、サポート役に徹している。
先生が後ろから、身体強化魔法を絶えずかけてくれるので危なげなく倒す事が出来ている。
「二人とも、ゴブリンやウルフには大分慣れてきたじゃないか」
先生は、町の外に出ているという事で口調はくだけたものだ。
「先生。あんなにゴブリン達が凶暴化しているなんて聞いてませんよ。特にウルフなんてなんなんですかあれ、好戦的すぎやしません」
「そうだね。そのせいで近くの村に被害が出始めているようだから上級冒険者である俺の所にギルドから直接依頼が来たのさ」
今回は、一応お手伝いと言う事で討伐に同行している。
「あの、私やエトがいてお邪魔になりませんか? えっと……」
「先生と呼んでもらって構わないよ。他の教え子にもそう呼ばせているし、それに邪魔なんて思ってないよ、元々先生が誘ったんだから」
シズルは、まだ先生に萎縮しちゃてるな。私も最初の頃は、スゴイ人が教師になってくれたとメイドから聞いて、恐れ多かったもん。
最初の頃はね。
「ほら二人とも休憩は終わり。日が暮れる前までにキングフォレストオークを見つけて討伐しないと」
先生は、そういうと立ち上がり、移動準備を始めた。
私とシズルも、一緒になって倒したウルフの毛皮などを回収した。
ウルフの毛は加工すれば布団や服になり、とても安価で暖かいので庶民にも人気が高い。なので冒険者ギルドが買い取ってくれるそうだ。
私たちは先生から渡されたアイテム袋を使って回収していく。このアイテム袋はウルフ五十頭分くらいは余裕で収納出来るそうだ。
ゴブリンはどうするのかって放置だよ、放置。何にも売れる部位がないから徒労だよね。それに臭いから、私もシズルも鼻を抑えている。先生は慣れているのか平然としているけど。
これは長居したくないね。
死体は時間が経てば勝手に大気中の魔素と一緒になって蒸発していく。
案外、この世界の魔素はゴブリンで出来ているのかもしれない。
それにしても凄いねこのアイテム袋。持ち運びが楽ちんだよ。
それでも、このアイテム袋は中の下らしい。なんでもドラゴンが丸々一頭入る物もあるみたい。
いやー世界は広いね〜。
◇◇◇
しばらく森の奥を進んでいると、明らかに空気中の魔素の濃度が濃くなってきた。
確か地図によると、この先にはゴブリンの住処である洞窟の一つがあるはずだけど……。
シズルがクイッと私の服をひっぱり小声で囁いた。
「ねぇエト。なんだか空気がおかしいと思わない」
「うん、息しづらいっていうかなんというか。人間には合わない空気だよね」
ふと、前を歩いていた先生の足が止まった。
「止まれ! 二人とも、これから先は何が起こっても先生の指示に必ず従うんだ、分かったな」
「はい先生」 「もちろんです」
先生がそんな事を言うんだ、ここから、先はかなり危険なんだろう。
素人の私にでも、それくらいの事は分かる。体が本能的に嫌がっているからだ。
森を抜けると目の前に大きな洞穴の入り口が見えた。
そして、洞窟の前にはゴブリンとオークの群れが集まっていた。
「ギギ!!」 「グガガ!」 「グゲゲ!」
オークとゴブリン達は何やら会話しているようだ。 そして、私達の存在に気がつくと
『「グガァァァァーーーー」』
一斉に襲いかかってきた。
「来るぞ、オーク達は俺が受け持つ。二人はゴブリン達を倒してくれ」
「「はい」」
先生は魔剣の一つである
するとその衝撃波で、近くまで迫ってきていたオークとゴブリンは吹き飛んでしまった。
先生マジ半端ねぇ。
「行くぞ二人とも!」
先生は、吹き飛んだオーク達の所に私たちはゴブリン達の方に向かった。
「
「
私達は、それぞれの武器を生成するとゴブリン達に斬りかかった。
この森にいるゴブリン達は知能が低いので、武器をもたない。なので動きを読めば攻撃を受ける事はない。
一斉に襲い掛かってくるゴブリン達に、自分達の剣技を振りかざす。
受け手を行わないゴブリン達にとって、剣の攻撃の威力は相当なものだった。
ゴブリンの体に剣がぶつかる。
素早くぶつけられた魔法剣による衝撃で、ゴブリンの体の骨が砕ける音が響き渡る。
それと同時に剣が振り切られ、体が引き裂かれる。
「おりゃぁぁぁーー」 「ふうっ!」
私達は、どんどんゴブリン達の屍を積み上げていく。
『ギィーーー!』 『グガァーーー!』
ゴブリン達も必死になって抵抗してくるが、その爪や牙も私達には当たらない。
生々しい声を出しながら絶命していくそれに対して、声をかける者たちは誰もいない。
ゴブリン達は、ただただ剣を持った二人に特攻を仕掛けていく。
『グギャアアアアーー!!』
最後の一体倒した後、後ろからオークが向かってきた。
恐らく先生から、逃げてきたのだろう。
フォレストオークは私達を見るとついでとばかりに、その豪腕な腕を振り上げてきた。
私たちは咄嗟に後ろに飛び退き、躱すと私達がいた地面にはヒビが入っていた。
「私は右腕、シズルは左腕をお願い。同時に行くよ」
「分かったわ」
私達は同時に懐に入り攻撃を拡散させた後、左右が空いた瞬間に腕を切り裂いた。
『ギィャアアアアーーー』
両腕とも、地面に落ちフォレストオークは絶叫を上げた。
私はトドメとばかりに剣の出力を上げ、そのブタのような顔に剣を振り下ろす。
ブシューーーと音をたてて、オークの体が二つに分かれた。
「ふぅ。やったねエト」
「うん、フォレストオークは危険度Dの魔物だけど怪我もなく倒せて本当に良かったよ」
シズルと二人で戦いの感想を言い合っていると先生がオークを倒し終えて戻ってきた。
「二人とも上出来だったな。途中から見ていたがオークと戦って危なげなく勝つとは大したものだ」
「そういう先生は、十五匹近いオークと一人で戦っていて無傷とは一体どういう事なんでしょうね〜」
「はは、君達とはくぐり抜けてきた修羅場が違うんだよ」
先生も加わり戦いの感想を言い合っていると。
ズシーン! ズシーン!
洞窟の奥から、桁違いの魔力を放つ魔物が向かってきていた。
あれがキングフォレストオーク。今回の討伐対象。
姿を現した討伐対象は、私達をみると、その不気味な顔を歪めて、笑ったような気がした。
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