第4話 雷剣
シズルちゃんとは小さい頃から仲良しだ。家が近く、同年代である事からすぐに意気投合した。
シズルちゃんにも固有能力があり、水の魔法を自由自在に操れるのだ。
水と雷は相性が悪いと言われているが、実際は逆でとても相性が良い。
子供の頃に合体技を考えて、庭をボロボロにして怒られたのはよい思い出だ。
さてシズルちゃんも、選考会に出るみたいだし私も真面目に頑張らないとな。私だけ落ちる訳にはいかない。
え、メイドになるのが嫌じゃないのかって? シズルちゃんがなるなら私も当然ついていくよ。
まずは二人で、新しい技考えよう。
私は期待に胸を膨らませて、馬車に乗り込んだ。
◇◇◇
約十分程馬車を走らせ、シズルちゃんの家に着いた。
カーノルド家とは違い、ネルミスター家は昔からある由緒正しい家柄なので子爵の中でも一段と大きい。
我が家の二倍ほどあるだろう。
門の前では、シズルとシズルのお母様が使用人と一緒に出迎えてくれた。
え、なんでちゃん付けしてないかって? 本人の前で言うと子供扱いしないでって嫌な顔されるんだもん。
もちろん家庭内だと、バッチリちゃん付けだけどね。
「エト、久しぶり」
「シズルも久しぶりだね。前に会ったのはシズルの誕生日以来だね」
「私もエトもお互い忙しくて遊ぶ暇なかったもの」
そしてシズルは、一呼吸おいた後。
「エト、私も選考会に出るの」
「うん知ってるよ、お母様から聞いた」
すると驚きながら。母親に顔を向ける。
「お母様。昨日のお茶会でアメリア様に話したのですか」
「ごめんねシズル。アメリアには内緒にしてと言っておいたんだけど」
続けて私の母を見て、
「アメリア様の事ですから、エトの驚く顔が見たかったから言ったのでしょう。本来は私が拝む筈だったのに」
とかなんとか言いやがった。
え、私の顔そんなに面白い?!
やだー照れちゃう。
「シズルちゃんごめんなさいね。うっかり口を滑らせてしまったのよ」
わざとらしい口調で言った。
シズルも何か言いたげだったが、なんとか飲み込んだようだ。
それを見届けた後、シズルのお母さんである、アルフラ様が言った。
「まぁまぁ、おふざけもその位にしておきなさいアメリア。今日は他に客もいないし、後は大人は大人、子供は子供同士で楽しみましょう。シズルもエトと久しぶりに、二人で話したいでしょう。」
そう言うと返事も待たずに、使用人を引き連れて行ってしまった。
置いてけぼりにされた私達は、視線で「どうする」 「何する」と会話し「とりあえず庭に行こうか」とシズルに言われ、ひとまず庭に行く事になった。
「ここの庭もとても綺麗になったね。植物も凄い増えてる」
私は広い庭を見渡す。
「ハーブも沢山植えてるからこの辺りは癒しの効果もあるのよ」
ハーブの密集地を指差す。
「ここをボロボロにしたのは懐かしいね」
「そうね、すっごく怒られたものね。特にエトなんか大泣きしてたもの」
「そんな事ないよ、シズルも私の手を強く握ってたじゃん」
「そ、そんな昔の事覚えてないわ」
シズルは慌てて話題を変える。
「それよりまた二人で技を考えない? 今度はお互いが干渉しない、一人で使えるものを」
「いいねぇ。それなら私に考えがあるの、剣ってさ身体能力を魔法で上げても、私達にはちょっと重たいじゃん。だったら私達だけの剣を作らない?」
「私達の固有能力でって事よね? どうやって作るの?」
「まず、魔力を手の中に集めて、剣の形を思い浮かべるの。想像すればどんな風にでも形つくれると先生が言ってた」
「先生? あぁ、あの人の事ね。確かにあの人が言うなら出来るかもしれないわね」
私達は暫くの間指先に魔力を集めるが、中々上手くいかない。
そうだ、魔法を撃った勢いを利用して剣の形に魔力を維持できないか試してみよう。
「《
私は雷系でも最も威力が低い魔法を出して剣の形にしようと試みる。これも中々上手くいかず失敗に終わった。
だがさっきよりも格段に近づいている。こうなったら威力を上げて魔力を放ち、剣を想像しよう。
五回目の挑戦で、ピリ、ピリ、ビリビリビリビリ、手の付け根から黄色い光が音を発しながら伸び出した。
長さも普通の剣と同じくらいだ、なのにとても軽い。
「で、出来た! 成功したよ見てシズル」
私は振り返った。
「あ、エトも出来たんだ、私も水の剣作れたわよ」
そこには紛れもなく美しい、見事な水の剣がシズルの手から伸びていた。
す、凄い切れ味良さそう。
ていうか、いつの間にシズルちゃん成功してたの。え、私が集中しすぎてて気が付かなかっただけ、そうか、そうですよね。
「エト。これなんて名前つける?」
名前なんて全然考えてなかったな、うーん あ、思いついた。
「
「じゃあ私のは
私達は思い思いに決めた名前に満足した。
ていうか、この状態普通の魔法を撃つよりかなり魔力の消費を抑えられるのね。これなら長い間戦える。 凄い発見をしたわ!
でも少しでも、気を緩めると消えてしまいそう。
なら消える前に試し斬りしたいな。 私達は同じ様な事を考えていたようで、向かい会うと同時に斬り込んだ。
お互い剣は授業で習っているので、やり方は心得ていた。
一合打ち合うごとに凄まじい衝撃波が起こり、土は抉られ、花は根が剥き出しになり、庭がボロボロになっていった。
私達は熱が入ってしまい、周囲が変わり果てていくのに全く気が付いていない。
何事かと飛んできた使用人と母親が目を丸くしているのを見てようやく事態を悟り、私達は斬り合うのをやめた。
当然危ない事をした事と庭を破壊した事で、顔を真っ赤にした母親達からこっぴどく叱られるのは言うまでもない。
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