第2話 魔法の授業
「先生おはようございます。お待たせしてしまってすいません」
ま、そんな事は思ってないけどな。
「いえいえ、魔法の時間に三十分近く遅れるのはいつもの事ですので、いい加減慣れましたよ」
慣れちゃたのかよ。いや、悪いとは思ってるよ。
「それに今日もよく、自習してらっしゃたみたいですしね。十三歳で殆どの魔法を覚えて、なおかつ努力家とは、私の息子にも見習って貰いたいですな」
私を見習ったら、息子さんもっとダメになっちゃうと思うけど。
自習しないで、瞑想してるだけだし。
「私なんか見本にならないですよ」
「はは、謙遜なさらないで下さいよ。集中したいから部屋を開けないでとメイドに言ったのでしょう? 聞きましたぞ」
それは単に、サボりがバレないように、言ってただけなんだけどな。そういう風に解釈されたのか。
「集中が乱されると魔力も乱れて、魔法が発動しにくくなるのと一緒ですよ」
「さすがエト様ですね。家庭教師をやってるのに生徒に集中の大切さを教わるとは……今日から私の息子にも五時間程瞑想の練習させましょう。さすれば集中力も上がる事でしょう」
息子君すまない。お父さんをやる気にさせてしまったらしい……頑張ってくれよ。
ま、少しは助け舟を出してやるか。
「私の倍近くの時間じゃないですか! そんなには大変ですよ」
「エト様と同じでは、何も効果は得られませんよ。倍位にしなくては効果は現れません 。やはり六時間にしましょう」
ごめん息子君悪化した。
「息子さんのお名前、何でしたっけ?」
「リュクゲウェスタですな」
そっかリュクなんとかタ君ごめんな。あれ名前なんだっけ。
どうでもいいや。
こんな感じにたわいもない世間話で、更に三十分ほど時間を潰した後。
「いけませんな。エト様との会話に夢中で、時間が経つのを忘れていました。早速授業に移らねばお金を貰っているのに申し訳ない」
いや、全然申し訳なくないよ。なんならお金あげるから帰ってくれればもっと嬉しいよ。
「そうですわね。今日の授業では何を教わるのですか?」
「エト様の固有能力。雷について深くやっていきましょうか」
と先生は続けた。
「まず固有能力とは?」
「固有能力とは神に与えられし能力で、人によって様々な違いがあります。私の場合は、雷を自由に操れるみたいですけど……中々難しいです」
「そうですね。固有能力は人によって違いますが、私の場合は岩の能力ですな。これは土系の魔法と相性がよく、巨大な岩の城を作ることが出来ます」
「先生も作った事があるんですよね」
「昔の話ですよ。それに造るのも楽ではないですしね」
この人さらっと、凄い事言ったなぁ。
「いいですか、固有能力は貴族の特権みたいな物です。なので力に溺れて外道に堕ちてはなりません。民の事を一番に考えることが大切なのですぞ」
それは確かに。
「エト様の場合は雷の力を上手に扱えれば、上位貴族にも勝てると思いますぞ。それくらいの潜在能力があります。なのでお父様方は、エト様に期待して私を雇われたのだと思いますぞ」
……やっぱ重い能力捨てたい。
「はい! お父様達の期待に添えるよう、一生懸命に練習します」
精一杯の笑顔で答えてやった。
「いい返事ですね。ではまず昨日教えた、基礎の固有能力を扱い方から始めて下さい」
私は魔力を集め始め、準備運動から開始した。
この準備運動にも三十分かけた事は、先生も苦笑いだった。
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