記憶力と偵察

「いいか、サヌエ。俺達は彼奴らの偵察に行くんだ。気を抜くんじゃないぞ。」

「分かってますよ〜。クレフさん。私だって観察くらいはできますよ〜。でも〜、相手も見てくるんじゃないんですか〜?」

クレフにこう言っているのは、サヌエ。青龍騎士団の副団長だ。彼女もかなりのやり手らしく、前回のイベントでは5位をとっていた。伸びた口調がトレードマークらしい。

「確かにな。でも今度のイベントでは負ける訳には行かないんだ。サヌエ。お前も分かるだろ?」

「分かります〜。じゃあ〜素の攻撃に、偽のスキルを重ねたらいいんじゃないです〜?」

「それ、名案だな。俺はもうスキルはバレてるから、お前はそうしろ。」

「そうするね〜。」

「おい、もう集合時間だぞ。行くぞ。」

「わかった〜。」


一方カナデ達は、「ねえソラナ。相手が観察してくるって言ってたじゃん。じゃあさ、テイムモンスター達は隠して、スキルも適当に名前でもつけて別の能力を効果として見せたらいいんじゃない?」

「確かにね。じゃあカナデはバレてるスキルがあるから、それ以外は見せないで私はなんにもスキルを使わないようにするよ!どう?それでいい?」

「うん!そうしよう!じゃあ集合前に友情の指輪を2人分買って行こう!」

友情の指輪は、テイムモンスターを指輪の中に収納する事ができるアイテムである。常に引き連れると邪魔だという人も多いらしいので、大体の人が装備していると言う。

「私は青色!」とカナデがいうと、

「なら、私は赤色!」とソラナが言った。

2人は指輪を購入した。そして待ち合わせ場所に向かった。

「ごめんなさい!誘っておいて遅れてしまいました!」カナデがそう言ったが、クレフは

「大丈夫大丈夫!俺達も今来たとこだよ。な、サヌエ。」

「うん、待ってないよ〜。」

「へーサヌエさんですか!よろしくお願いします!」

「こちらこそよろしくね〜カナデちゃん。ソラナちゃん。じゃあ早速向かいましょうか〜。」

「はい!ありがとうございます!」

そう言うと4人で怪鳥の巣窟に向かった。

「うわぁ…広いね…ここが怪鳥の巣窟?」

「そうだ。このダンジョンは4つに別れた道があって、その一番奥にボタンがある。そのボタンを4つ押すと、目の前にある扉が開いて、ボスの奇怪鳥ケッツァルコアトルに挑めるんだ。」

「つまり、単独行動ってこと?」

「うん。そうなるね〜。」

「じゃあ、私は1番右の道に行きます。」とソラナが言った。

「良いのか?一番難易度高いぞ?」

「はい。私がやりたいって言い出したので。」

ソラナの意思は固い。

「分かった。それなら俺は一番左の道に行こう。」

「じゃあ、私は右から2番目のところに行くね〜。」

「なるほど、それなら私は左から2番目の道に行くね!」

「よし!じゃあ手分けしていくぞ!」

こうして手分けをして攻略をする事になった。


そのあと手分けをしている時に、トラップにかかったり、敵を大量に倒したりしたのはまた別の機会に。


「よし。こっちはやったぞ!」

「私も終わったよ〜」

「私も終わりました!」

「私も終わったよ!」

こうして全員が道を突破した。

「よし。扉が開くね!」

「行くよ〜!」

扉が開いて中に入ると、空から大きな鳥が飛んできた。


奇怪鳥はこっちに向かって突進してくる。

「来るよ!」

「サヌエ!」

「分かってます!」

そう言われると、サヌエは

「結界方陣・円!、疾風突き!」

円形に張った結界で皆を守りながら怒涛のスピードで突きを繰り出す。

「うわぁ凄い…こんなに速い攻撃は初めて見た…

(ソラナ以外で、だけど。)」

「速いな…私も負けてられないな!」

「よし!ソラナ、行くよ!双剣乱舞!」

「うん!双拳!」

ソラナはそう言うと的確な攻撃でダメージを与えていく。

「へぇ…ソラナちゃんもやるじゃん。

俺もやるか!青涼の断罪ブルーペナルティ!」

まあこんな感じで怒涛の攻撃を受け続けたケッツァルコアトルも無事では居られず、一瞬で消えた。

「やっぱり4人でやると早いね!」

「うん。段違いの早さだね!」

「私達も楽しかったわ〜!」

「ああ。なかなか良かったな!」

「ねえソラナ。あれ手に入った?」

「うん!バッチリ!」

「アレってなあに?」

「内緒です!」

サヌエに聞かれた2人だったが、顔を見合わせてそう言った。

「まあ、俺達もイベントで敵になりたくは無いから、今後とも頼むぜ!」

そう言うと、クレフはいやマジで、と続けた。

「今日はありがとうございました!」

「またいつか!」

そう二人が言うと、またね〜と聞こえて来た。

「多分あの二人で組むんだよね。」

「うん。そうだと思う。」

「あのね、あのサヌエって人居たでしょ。

あの人、多分スキル使ってなかったと思う。」

「え!?あれで?」

「うん。だってスキルならもっと動きが遅れるはず。でもあの人は絶え間なく攻撃してた。絶対そうだよ。私は分かる。」

「ソラナがそう言うなら多分そうだね。

じゃあもっと早くならないとダメだね。」

「うん。多分あの人クレフさんと互角か上だと思う。今のままだと負けちゃうよ。」

「じゃあ、私が最初に行ったダンジョン、しびれ沼に行って周回しない?」

「なんで?……あ!そっか!確かにそれがいい!」

「そう!あの人は多分麻痺系のスキルに弱い。だから、いいアイテムが手に入るか、いいスキルが手に入るまで周回だー!」

「おー!」

そう言うと2人はしびれ沼に向かった。

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