30:世界はそれを愛と呼ぶ……んだろうね!
【第142回 二代目フリーワンライ企画】
使用お題:すべては計算通り/次に会ったら伝えたい
#深夜の真剣文字書き60分一本勝負
:::
「小湊合歓、体も心も問題ありません。ですので、そのっ……ええいまどろっこしい、セッ、セックスし、したいです!! 君と!! 君は、準備はいいですか?!」
頭をめり込ませ、審判が下るのを待つ。言ってしまった! 恥ずかしいというよりは、これはあの「性的同意」と言う奴を求めているつもりなのだが、伝わっているだろうか。
あの、ええと、という戸惑いの後「合歓さん、顔を、あげてください」と静留くんの声がするので、びくびくしながら頭を上げる。すべては計算通りなんて行かないもんだ。いくら自分の誠実さを見せたって、どうにもならんときはあるのだからと自分に言い聞かせながら。
「あの……僕、実は土曜日に、検査を受けてきたんです」
YESかNOか、どっちかだと思っていた自分は、飛び出した「検査」の言葉に口をぽかんと開けてしまった。
「検査」
「はい。一応、その……性感染症がないか、どうかとか、そういうのを」
ああ! と声を上げる。土曜日の用事とはそれだったのか。
「えっまさか実費」
実は自分も先日産婦人科に駆け込んだばかりである。とはいっても、大きな生理不順も自覚症状もないため、内診(あの診察台とやらは尻がスースーとしてなかなか不思議な体験であった)をしてかねがね問題がないという結果が出たのだが。
……調べて分かったがあれらの費用を出すのはなかなか、抵抗があったのは否めない。
「僕の体はどうでも……いいっていうと怒られますね。ごめんなさい。でも、僕は一応、お付き合いのあったひとがいましたし、不安な要素もあって。その、ええと、合歓さんの……お相手をするなら、と」
そこまで言った静留くんの顔は耳まで真っ赤になっていて、思わず生唾を飲み込む。
「……準備、大丈夫、です。お待たせ、しました。セックス……しま、しょう」
どちらともなく手を伸ばし、指先を絡め合う。勢いのまま、静留くんの体を抱きしめて「お願いします!!」と叫んでいた。
「あのっ小生は初めてな故……お手柔らかにしていただけるとありがたく……」
「も、もちろん、です。大事に、抱きたい」
耳元で切実な声音で囁かれると、いっそう現実味が増して心臓がバクバクと音を立て始めた。
大事、に、なんて言われるのは、本当に幸せだなあ。
そんなことを考えていると「シャワーとかは、いいですか」と確認される。
「大丈夫です家で出来る限り綺麗にしたので」
どこを綺麗にしたかは乙女の秘密である。
「なので、その……始めましょう! だから――」
私から精いっぱい、キスさせてくれ。
そう伝えると、静留くんは口元をふにゃふにゃさせて「はい」と弾んだ声で答えてくれた。
ああ、私の彼氏は可愛いので、やっぱり我慢はできないんだよね。
◆◇◆
で、この後どうなったかって?
焦るな、焦るな。大人の階段上ったおねーさんが教えてやろうってんだ。
結論から言いましょう……気持ちよかったです!!!
え? 具体的になにが気持ちよかったって? 口では言えないよーなあんなことやこんなムフフな……いやまあそりゃあムフフだったさ……。
いやでもさ、聞いてくださいよ。
相手が自分のことを見てくれて、二人が一緒に気持ちよくなることを伝えながら致すってのは、いいもんだね。
そんで、実際にしてみて思ったさ。
体を許してくれるってのは、まるで相手の体も自分のものになったように感じるんだなって。怖いね。いや、女だから抱かれるのが怖いんじゃなくて、そういう風に相手のことを手に入れた気になっちゃうってところだよ。
……正直、静留くんの元カノが彼を支配したがった気持ちもわかんなくもないな、て、思っちゃったね。
でもさ、それも相手が声をかけてくれたり、気にしてくれたり……コミュニケーションなんだなって。
彼と一緒にいて、今まで見えてなかったものや、知らなかったこと、たくさん知ったよ。
気持ちいいことも、しんどいことも。
それでも、だれかを好きになって、可愛いな、素敵だなって思うことっていいことだなって、私は思うんだな。
だから、もしそういう存在が君に現れたら、一所懸命自分たちらしい形を探っていこうぜ。
きっとそれが愛……なーんちゃってな!
だいすきなひとを大事にして、自分も大事にしろよ!
次に会ったら伝えたいこと、増えてるといいな!
じゃあ、またな!
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます