第8話

 店長とオーナーに相談し、店でホウレンソウを取り扱ってもらえるようになった。一度食べていただいたお客様からの口コミで、評判が広まったらしく、たちまち店の目玉商品となった。

 おかげで三郎の時給もアップしてもらい、前ほどシフトに入る必要もなくなった。




 前より金銭的な余裕ができ、栄養も無事に取れるようになった三郎は、部活に復帰した。毎日練習に出られるわけじゃないが、再びラケットを握れるようになったのは、彼にとって何よりも幸福だった。


「お、少年。今日は何か珍しいもの持ってるな」


 通学途中、ホウレンソウ農家の男性に話し掛けられる。


「おはようございます。実は俺、今バドミントンやってるんですよ」

「バドミントンか、懐かしいな」


 意外な言葉が飛び出した。


「懐かしい? おじいさんもバドやってたんですか?」

「昔ちょっと大学でならしたおんだよ。ワシの頃は、まだオリンピックの競技じゃなかったから、ちょっと残念じゃがな」

「オリンピック? そんなにお上手なんですか!?」

「自分で言うのもなんだが、まあ下手じゃなかったぞ。良かったら練習を見てやろうか?」

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