第7話

 再会は意外にも早かった。翌日、通学路の途中にある畑で、例の男性を発見した。ここでホウレンソウを育てていたなんて、今まで意識したこともなかった。


「おはようございます、おじいさん!」

「おう、昨日の少年か! 今日は顔色がいいみたいだな」


 三郎は自転車を止め、話しかける。


「いただいたホウレンソウ、めちゃめちゃ美味しかったです! ありがとうございます!」

「喜んでもらえたようで何よりだよ。良かったらまた持っていきなさい」


 青いコンテナを指さす。中にはおそらくホウレンソウが入っているのだろう。


「いやー、今から学校なんで、帰りにまた寄ってもいいですか?」

「それもそうか。じゃあ待ってるよ」




 いつもは授業が終わると、まっすぐ家に帰っている三郎だが、この日は朝の約束通り、ホウレンソウ畑に酔っていた。


「こんなに美味しいのに、売れ残っちゃうんですね……」

「ま、味は食べてみなくちゃ分からんからな。一般流通してるわけじゃないから、なかなか難しいんだよ」


 そこで三郎は、ふと閃いた。


「そうだ! 良かったらウチの店で売ってみませんか?」

「店? お前さん高校生なのに、店なんかやってんのかい? たいしたもんだな!」

「そういうわけじゃないんですけど、実は俺、コンビニでバイトしてまして。何か売り上げを伸ばすための目玉商品って無いか、考えてたんですよ」

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