第6話

「というわけでホウレンソウをもらってきたよ」


 帰るなり、事の顛末を母に聞かせた。


「あら、大丈夫だったの?」

「お互い怪我はなかったけど、確かに栄養とか足りてないのかもな。さっそく食べてみようよ」


 ホウレンソウを使った料理といえば、三郎の頭には真っ先に、おひたしが思い浮かんだ。あまり料理は得意ではないが、たどたどしい手順で調理を行う。

 鍋でお湯を沸かし、沸騰したところでホウレンソウを根元から投入。さっと湯通しをして、ザルに上げて冷水で締める。めんつゆ、酒、白だしで味を調え、冷蔵庫に入れる。


「美味しそうね。三郎、料理上手になったじゃない」


 夕食時、鰹節をまぶして食卓に出すと、母が褒めてくれた。


「そんなことないよ。ただ我ながら上手にできたかな、とは思うよ。せっかくいただいたホウレンソウだから、きちんと美味しく料理しなくちゃな、って思ったんだ」


 一口含むと、ホウレンソウ独特の甘さと苦みが広がる。これならいくらでも箸が進みそうだ。


「うん、美味しいね!」


 おひたしは小鉢にちょこんと盛り付けていたのだが、二人しておかわりを重ね、結局一束分のおひたしを、一食で食べきってしまった。


「ちゃんとお礼を言わないとね」

「そうだね。でもあの人がどこに住んでるのか、聞かなかったな……」

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