第20話 志望校

「ごめんね、お母さんが。」


酔っぱらう大人達から、テツの部屋に避難してきた中学生二人。


「咲桜ママ、相当酔いそうだな。」


「久しぶりだしねー。いつもは飲まないから。それに、とっても嬉しそうだった。」


「いいんじゃない?今日くらい。本当にたまには二人で来たら。母さんもあぁ言ってたんだし。」


「まぁねー。さっきの…聞いてた?」


「いや、え?(胸の話かな…やばい。)あー、まぁ。」


「別に…哲ちゃんちに、行きたいっては言ってないけどね、またみんなでゴハン食べたりしたいね!っては、言ってたんだ。」


(あーーそっちね。良かった。)

「じゃー良いんじゃん。咲桜ママも楽しそうだし。」


「うん。また、お邪魔しちゃうかも。」


「うちはいつでも歓迎だろ。ごめん、咲桜、メールだけ返して良い?」


「うん、良いよー。」


ゲン、ヨネ、ダイゴ、ケン、松永の五人からのメールを順番に返す。

ちなみに松永も、合格したようだ。



「ねぇ…」


「ん?」


「あたしって、胸小さいのかなぁ?」


ゴトッ!思わずスマホを落とした。


「なっ、知るかアホ!」


「アホって何よー。さっきの話聞こえてたでしょ?もっと大きくなるなぁ。」


「うるせー知らん!アホはアホだろ。アホ咲桜!」


やばいやばい、アホ咲桜。しばらくそっち見れないわ。

メールは打ち終わったが、画面を眺めていた。


「ふーん…哲ちゃんも男なんだね。」


「悪かったなぁ。あいにく、昔からずーっと男だ。」


「あたしも、女だよ。」


「あー知ってる。」


「あたしのことも、女として意識してくれる?」


え?意識?なんて答えたら良いんだ?

意識するなって言ってもするだろ、普通。

だけど…咲桜にはゲンが惚れている…


「…意識は、どーかな。けどな、咲桜は咲桜だよ。」


「何それー。哲ちゃんのバカ!」


「な!?」


思わず咲桜の方を向く。


「やっとこっち向いた。ずっとスマホみてるんだもん。」


そう話す咲桜が、少し頬を赤らめている気がした。


「サッカー選手になるのかなー哲ちゃんは。なんだか、遠くに行っちゃうみたい。」


「まだわかんねーよ。あ、でも高校は志望校そのままだぞ。サッカーやるとしても。高校は行きながら、クラブの練習に参加する形。通える距離だし大丈夫だろうって。」


「え!?一緒の高校行けるの?」


「まぁ、ちゃんと俺が受かればな。咲桜は余裕だろ。」


「本当に!やったぁ!哲ちゃんも、大丈夫…だよね?」


高校は前から決めていた「伊崎高校」

バスケをやるつもりで決めていた高校だが、普通科の高校で勉強の方もそれなりに力を入れている。


「ん…おそらく、頑張れば大丈夫。」


「じゃあ苦手なとこ、教えてあげるねー!」


「あ、それはホントに頼むかも。」


ちなみに、ゲンとヨネも伊崎高校。

ダイゴは、サッカー強豪校が第一志望。


「オッケー!そろそろ、お母さん連れて帰らないと。また、来るね!」


「おう!」


そして、咲桜は「まだ飲めるよー。」と言う咲桜ママをなんとか連れて、自宅へ帰って行った。

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