第19話 お祝い

「おめでとうー!かんぱーい!」


嵐家で合格お祝い会が始まる。


「…うまい!私たちまで、お邪魔してすみません!」


ビールを一口飲んだ咲桜ママは、言葉とは裏腹に満面の笑顔で話す。


「大勢の方が楽しいじゃない!ね?」


「真弓ちゃん、気にせず飲んで!って、もうグラス空けてるし!」

【山野 真弓(まゆみ)=咲桜の母】


どーぞどーぞ。と、父がお酌をしている。


「お母さん!お願いだから飲みすぎないでよ!」


「いいじゃねーか、咲桜ちゃん!哲のお祝いしに来てくれてんだから!」


「だよねー!大和君、奈緒ちゃん、ありがとう!哲ちゃん、おめでとうね!」


「ありがとうございます。」


「もー。」


「まぁまぁ咲桜。赤飯おにぎりでも食べて。」


「いただきます!……美味しい。」


「てかさ、赤飯、準備早すぎない?」


「だって封筒来てたからねー。」


母もビールを飲みながら話す。


「結果知ったのは、さっきじゃんか。」


「そうね?勘かしら!封筒、少し厚みあったし、合格かなーって。」


「すごーい、哲ママ!」


いやいや、ダメだったらどうしたんだか。

そして、なんでこーなってんだか、まぁ楽しいから良いけどさ。

えっと、咲桜と合格を確認→母へ伝える→父に連絡→残業なしで帰宅→せっかくだし、たまには咲桜も一緒に夕飯→咲桜ママも呼ぼう→現在


ちなみに咲桜ママは、綺麗なのに裏表がなくて、どっちかって言うと男らしく、バリバリ働いていて、たまに帰りが遅い日もある。そんな咲桜ママはテツを息子のように可愛がり、「咲桜の旦那は哲ちゃんしかいない!」と良く言っている。

咲桜パパは…咲桜パパと父は、昔からの親友だった。結婚前から、4人で遊んだり仲良かったと話を聞いたことがある。小さいときに父と一緒にバスケも教えてくれた。テツは、咲桜ママも咲桜パパも大好きだった。

三年前…そんな咲桜パパが病気で亡くなった時、父の涙を初めてみた。



「…こうやって飲むのも、なんだか久しぶり。いつでも来てよ、まゆちゃん。」


「…そーね。奈緒ちゃん、ありがと。咲桜も来たいみたいだし、ねー?」


「え!?別に行きたいなんて言ってないし!変なこと言わないで!」


(え…聞こえないふり聞こえないふり)


「ハッハッ!しかし咲桜、綺麗になったなー。」


「でしょー!私に似て!」


「ありがとう、哲パパ!」


「でもまだ体はこれからね!胸だってもうちょっと大きく…」


「お母さん!!」


「ブフッ!ゲホッゲホ!」(変なこと言うもんだから、むせってしまった)


「…哲ちゃん大丈夫?ねー、哲ちゃんの部屋に行こう?」


「そーだな、みんな酔っぱらってきたし、相手疲れるしな。」(本当は咲桜ママの話もうちょい聞きたいけど…)


「お母さん!本当に飲みすぎないでよ!」


「りょーーかい!」


娘を見て、ウインクする咲桜ママ。


ダメだなありゃ…

咲桜とテツは、そう思うのであった。


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