第18話 結、果、発、表。
「ただいまー。」
「おかえりー。哲!封筒、来てるよ。」
!!
練習会から、5日後の金曜日、学校から帰ると一通の封筒が届いていた。
【高崎ツインズ 事務局】
結果が来た。
今すぐ開けようか、しばらく封筒とにらめっこしていた。
「開けてあげようかー?それとも父さん来てからにするー?」
あーなるほど、そういう案もあるか。
「んー。どーすっかな。」
確かに一人で開ける必要はない…そう思ったら咲桜へメールをしていた。
『何してた?』
まったく、いつもメールはぶっきらぼうだ。絵文字も使わない。SNSも興味がなくやっていなかった。テツにとってスマホは連絡のための手段、それだけだ。
この間のように、すぐは返事は来なかった。
「ピロン」
『ごめーん(>_<)今帰ってきたとこ!』
基本的に学校に持ってっちゃダメだもんな。すぐに返信をする。
『おかえり。うち来れない?』
「ピロン」
今度はすぐ返信が。
『すぐ行く!』
とりあえず、トイレ行って、部屋着に着替えるか。
しかし、トイレ中に咲桜は来た。
「哲ちゃんー!入るよー!哲ママ、お邪魔します!今日も良い匂いね!」
「どーぞー!匂いだけじゃなく味も良いのよ♪咲桜ちゃん今度教えてあげよっか!」
「うん!教えてほしい!」
「そーね!お母さんとお話してから、ゆっくりおいで。」
「はーい!」
一段落したタイミングでトイレから出た。
「じゃあ、上行こうか。」
「トイレいたの?まだ制服だしー。」
「咲桜もじゃん。」
「帰ってすぐに、誰かさんに呼び出されたんですー!」
「別に着替えてからでも…」と、言いながら二人は部屋に入る。
「早く来たかったんだもん。」と、小さな声で聞こえたが、なんとなく聞こえないふりをしてしまう。
「とにかく、いきなり、ごめんな。」
「大丈夫。もしかして、結果来た?」
「あ、うん。多分。」
「多分?」
封筒を咲桜に見せる。
「え?まだ開けてないってこと!?」
「あぁ。まぁ開ければ良かったんだけど、せっかくなら咲桜と一緒に開けようかなって思ってな。」
「あ…あたしで良いの?」
「良いから呼んだんだろ。」
「哲ママとか哲パパとか、友達とかじゃなくていいの?」
「良いの。どーせ、咲桜に最初に伝えんだし。じゃ、さっさと開けるか。」
「え…ありがとう。よし、…ふーー、なんか緊張するね。」
咲桜そう言われると、ほんの少しだけ緊張感が漂った。
封筒を切り、中から紙を取り出す。
一緒に開けようと言った手前、あれなのだが、咲桜が隣にいて肩を密着させた状態に、別の緊張も加わった。
「開くぞ。」
「うん。」
…
この度は合同練習会のご参加ありがとうございました。
…
厳正なる審査の結果、
…
【嵐 哲様】を高崎ツインズの一員として迎えたいと思っております。つきましては…
…
「これって…」
…
「哲ちゃん!おめでとう!」
咲桜はそう言って抱きついてきた。
「お、おう!」
成長した咲桜の上半身のぬくもりに、めちゃめちゃドキドキしたのは、きっと合格のせいだ。そういうことにしておこう。
合格の嬉しさと、違う喜びと、頭は案外冷静で、心の中でガッツポーズしていた。
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