第13話 PK
「よっしゃー!」
6人目のキーパー松永が5人中3人を止めた。
松永が、3本を防ぎトップ(うち1本ミスキック)もう一人3本防いだ選手がいるが、キッカーのミスキックが2本あったので、実質松永がトップの形。
全員が見ている中だ、5人と対戦できるキーパーよりも、1球しか与えられていないキッカーの方がタフなことは間違いない。
「あいつデカイし。威圧感もある。」
しかし、その中で3人を止めた松永を称賛する声が聞こえるのも、納得できる。
「次、ラスト!」
チーフコーチから声がかかる。
「持久走遅かったやつだ。」
「あー、デカイだけのやつか。」
他のポジションの選手は、午前中のイメージのままだ。
そんな中、最後の対戦が始まる。
「嵐は、PK得意中の得意だと睨んでます。私の目に狂いがなければ…ですが。」
他スタッフに、少し祈るような様子の鷲田が小声で告げる。
1人目。
(…んー。目線と体の向き、右に蹴りそう。)
「バシ!」
「おっしゃ!」
「おし!一発目から止めた。」
2人目。
助走がゆっくりなタイプ。
(…読みすぎず、ギリギリまで我慢。)
「バシ!」
左方向、少しコースが甘くなった所をしっかり止める。
「2人連続!完璧に止めたな。」
「素早い良い動きだ。」
鷲田とキーパーコーチが話す。
3人目。
いかにも自信ありそうな、良い顔つきをしている。
(…こいつ上手そうだな。いちかばちか…)
テツは軽く体重移動からの、飛ばない。
「ドス!」
「当たり!ど真ん中。」
さすがに、他選手もざわつく。
「すごくね。」
「まぐれかな?」
「いや、駆け引きしてる。」
いろんな声の中。
4人目。
(…読めないけど、緊張してる?)
「!」
シュートはゴールマウスから大きくそれた。
「うわ!決まらねー!」
選手の1人が叫ぶ。
「あとコーチだけだ!」
一同、状況を楽しんでわくわくしている様子。
5人目
「おいおい、プレッシャーが半端ないな。」
と、チーフコーチ。
(…コーチはコースを狙うか?ここは、ど真ん中は捨てよう)
(ギリギリまで粘って、右の下に飛ぶ!)
「バシッ!」
一同「おーーー!」
読みは当たった。
止めた。
ように見えたが、シュートの威力が強かった。テツの手を弾き、そのままサイドネットにボールが転がる。
「ふーー。あっぶねぇ!」
チーフコーチが安堵の表情を浮かべる。
「あーー、惜しい!」
「読み完璧じゃね?」
「コーチのシュートがえぐい!」
色んな言葉が飛び交う中、最後の練習を終えた。
「お疲れ様!また来週、解散!」
「ありがとうございました!」
テツの周りに数人が寄ってくる。
「ナイスキーパー!」
「すごかったね!」
「あー、ありがとう!たまたま!」
「ちっ、たまたまで止めれるか。来週は負けねーからな。」
少し離れた位置から、自称ライバル?が、そう言って去って行く。
「お疲れ、嵐君。」
「あ、お疲れ様です。」
「いやー、さすがと言うしかない!恐れ入ったよ!連れてきた私としても非常に鼻が高い。」
「ありがとうございます!」
「今日はしっかり休んで、また来週元気に頑張って。」
「はい!お疲れ様でした!」
こうして練習会初日が終了した。
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