第14話 松永と言う男

「まつながー!?」


クラブの練習後、練習会での話をしていると、ダイゴが目を見開く。


「松永って、もしかしてデカイ図体で、目が細くて、目付き悪かったろ?」


目を細めて、いやーな感じでダイゴは言う。


「あー、だな。身長は同じくらいかな。」


「くそっ。あいつも練習会に呼ばれた。だってよ!ケン!」


「聞こえてるよ、ダイゴ。松永君か。何か言われたり、めんどくなかった?」


「ん、まぁ、軽く絡まれた。」


「んー、やっぱり。」


ダイゴもケンも松永を知っているらしい。


「あいつとは小学校の時に、一緒にやっててな。親の都合で、中学上がる時に別の地区に引っ越しやがった。ムカつく野郎だ。な!ケン。」


「まぁ、癖は強いかな。けど、キーパーは抜群にうまかったね。あの頃から。」


「それが、またムカつく。」


何かあったのか。ダイゴにとっての松永は、相当イヤな奴らしい。


「好きな子が松永君に惚れちゃったから、なおさらだろ。他にも理由はあるかな?」


ケンは、一番の理由はそれだろう。と言わんばかりに話す。


「俺をフっといて、あんなデカイだけの性悪が好きとか言うんだぞ!思い出したくもないわ!」


「ハハッ!なるほどね。そりゃ嫌いにもなるか。」


「多分、嫌いではないんじゃない?」


「テツ!とにかく負けんじゃねーぞ。あいつにだけは。」


そう言ってこぶしをつきだす。


「ああ。お前のためではないけどな。」


ダイゴのこぶしこぶしをぶつけ、三人は笑った。



翌週、練習会。


「今日は実践中心で行くぞー。午前中はホワイトボードの通りのチームで、ミニゲーム回すぞ。」


チーフコーチが選手に伝える。


半分ほどの広さで、6対6を行った。

ルールはフットサルに近い。

狭い分、切り替えやポジショニングが難しい。飛び出すタイミングも違う。


実際、何度かタイミングを誤った。


それでも慣れてくると、状況判断しながら、思い切って飛び出し、ピンチを救った。

近距離からのシュートも大きい体と反応の早さで防いだ。


「よーし。あと午後はゲームな。チームは、ホワイトボードのこっちね。あと、交代はコーチの指示通りに行って。作戦は自分達で話し合うこと。」


そう言って、スタッフがホワイトボードを裏返す。




「おう。」


松永が声をかけてきた。


「別のチームで良かったわ。ゲームで失点が少ない方が勝ちな。」


「…オッケー。わかった。」


面倒だな。と思ったが、それはそれでおもしろい。そう思い、テツは了承した。

後悔しないよう、全力でやることに変わりはない。


ゲームでは、最後尾から前の選手を鼓舞し、味方ナイスプレーを誉め、ミスにはフォローをする。先週のPKで一目置かれていたテツは、更に試合をこなすごとに、チームにかかせない存在になっていた。


シンプルにサッカーを楽しみ、考え、声を出し、ひたむきにプレーする姿がそこにあった。


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