第12話 ライバル出現?

「よし、じゃあ集合!」


10月某日、テツは高崎ツインズの練習場に来ていた。


同世代の参加選手の前に、コーチらしき人が3人、あと鷲田さんを含めたスカウトらしき人が3人、計6人のスタッフが並んだ。


「えー、コーチが3人、私がチーフコーチです。あとこっちからフィジカルコーチ、ゴールキーパーコーチ。戦術・技術スタッフが3人。まぁスカウトと思っていいです。」


と、チーフコーチが話す。


今日と来週の2日間で練習会は終わり。その結果でチームへの合否が決まる。(実際はその前の大会などの、スカウト段階で決まっている選手もいるらしい。)


「午前は体力テスト、午後はポジションごとメニュー。来週はゲームなど、実践中心になります。」


フィジカルコーチの指示のもと、体力テストが始まる。


テツは、そつなく全種目、良い記録を残していく。

ただし、ラストの持久走を除いて。

そもそも持久走は得意だが、バスケを引退して走り込んでないせいもあるのか、この日はちょっと胸の違和感と早めの苦しさで、最下位になってしまう。


「大丈夫かい?」


鷲田さんが、心配そうに近づく。


「ハァハァ、大丈夫です。」


「無理はいかんぞ。ただし、ゴールキーパーも持久力は大事だからね。」


「はい、ハァ。午後、頑張ります。」


「期待してるよ。」


「では1時間の休憩のあと、またここに集まってください。」


「はい!」


少しして、呼吸も落ち着いてきた。


「キーパー?」


少し細い目の、テツ同じくらいの背丈の選手が話しかけてきた。


「あーうん。」


「やっぱ。俺は松永 達也(まつなが たつや)俺も、キーパー。」


「俺は、嵐 哲。よろしく。」


「お前、体力なすぎだろ。俺と同じくらいデカイのに、もったいな。これでライバル一人減ったわ。」


「なっ!今日はたまたまっ…!」


「いいわけか?試合だって、一発勝負だからな。」


悔しいが確かにこいつの言う通りだ。


「ま、午後もよろしくー。」


そう言い残し去っていった。


コーチ陣にも悪い印象で終わったことは間違いない。それに、皆が受かることはまずない、全員がライバルでもある訳だ。

もちろん初めから気合いは入っていたが、午後の練習に向け、テツはさらに気合いを入れ直した。



午後はポジション別のメニュー。

キーパーは7人。受かるのは多くても3人くらいだろう。


午後はテツが一際目立っていた。午前の無様さを挽回するように、必死に取り組んだ。

この身長で俊敏さも高いのは、コーチも驚いてしていた。あと松永も。


「ふん。負けらんねー。」


「……」



そして、最大の見せ場がやってきた。


「集合!じゃー今日のラスト、PK対戦。」


コーチ、スタッフ、選手全員が集まる。

ルールは、キーパーは5人と対戦。

キーパー以外は1人1本PKを蹴る。

キーパーが7人。それ以外の選手は計34人。1人足りないラストはチーフコーチが蹴るらしい。


コーチの指示により松永が6人目。

テツは7人目。

すなわち最後のキーパーとなり、PK戦が始まった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る