第8話 One on One
「そーいえば父さん。話があるってなんでわかった?」
テツは、名刺を見せる前に核心をついてきた理由を、ほろ酔いの父から聞き出そうとしていた。
「アホか、哲。いつもと感じが違うんだからすぐわかんだろーが。何年見てっと思ってんだ。」
「普通にしてたつもりなんだけどな…」
ボソッと呟く。
「じゃ教えてやる。今日だけな。何個もおかしいとこあったろ。まず、リビングに俺がいてちょっとビビってたな。あと母さんにサッカーの結果ふられて、少しどもったな。とどめに風呂もいつもより長い。3つもありゃー確定だ。」
……
「まぁ、帰ってから普通だったのはメシ食ってたときぐらいだわ。ハッハッ!」
…おいおいマジか。全部当たってんな。
……恐るべし父。
「NBA見てたんじゃなかったのかよ。」
とりあえず、さらに追及してみる。
「バカ野郎、そんなの間接視野だよ。わかるか、間接視野。バスケでもサッカーでも使うだろ。普段から鍛えとけよ、少年。」
この人にはまだまだ敵わないな。そして酔ってるな。そう思った。
「まだまだ修行が足りないってことか、精進します。じゃ、だんだん寝る。」
酔っぱらいの相手はキツい。それに、時計は22時を回り、眠くなってきた。
「哲、明日の朝早起きな。久しぶりに。」
「よっしゃ。明日は勝つ。おやすみ。」
テツはニヤっと笑って、部屋に戻った。
朝6時半。
家の庭で、親子が向かい合っている。
朝の静けさにボールの弾む音が良く響いている。
「ハァ、ハァ、まだ甘いな。哲。」
「ハァ、まだまだ。父さんこそ、息上がってんじゃん。」
11点先取の、One on One。
これまでの3ゲーム、全て父が勝っている。
11-5、12-7、11-8、徐々に接戦になってきている。
そして、4ゲーム目。
現在、10-10。
「ヤベーな、さすがに。」
ディフェンスする父にもう余裕は見られない。
背中を向けてポストプレイに持って行くが、良いポジョンを取らせてもらえない。
身長は二人とも187cm。
体重は父のほうが10kgほど重い。
それでも、強引に押し込み、ターンする。が、かわせない。
ならばと、体を軽くぶつけてから、少し後ろに飛びながらの、フェイドアウェイジャンパーを放つ。
「おっ、やられた!」
父のチェックは届かず、リングにボールが向かう。
テツは、着地と同時にリバウンドに向かった。このシュートはまだ確率が良くない。
「かー、リバウンドはえーよ!」
父も慌てて追う。
「ガンッ!」
シュートが外れる。
「ヨッシャ!」
ランニングリバウンドを取ったのは、
息子のテツ。
すかさずゴール下でシュートを打つ。
が、
「バシッ!!」
!!
ノーマークで打ったと思われたシュートは、父によってはばまれた。
「あっぶねーー。負けるとこだった。」
息が上がる父にブロックされたボールは、そのままラインを割った。
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