第10話

 吐いた息が真後ろに飛んでゆく。

 足の裏で踏みつぶされた小枝が小さく音を立てる頃には、身体は既にはるか先にある。

 触手のように伸ばした感覚の先が、舞い落ちる葉の一枚、巣で丸くなる小鳥の心臓の音までもとらまえる。灯りは要らない。

 眼より、耳より、鼻より先に、感覚が拾う。

 熱。前方に八つと、三つ。

 白い光球が三つ。おそらく炎。松明か、篝火かがりびか。

 残りの赤や黄や緑は、ひとだ。全員男。

 遅れて匂いが知覚される。松脂まつやにの燃える匂い。土と垢と金属の匂い。鼻を刺す汗の匂いに混じるのは、興奮のそれだ。

 それに――血。血の香り。

 夜の底で熾火おきびが燃えた。

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