第4話
――なるほど、自分とは正反対の人間のようだ。
ツチはそのように恩人を評価した。
出自を訊ねれば言葉を濁したが、
その代わりに、下々の――
「双六を知らないのか!? あれほど面白い遊びはないぞ!」
と、仰天したツチが、一手御指南することと相成ったのは、二日目の夜だった。
15個ずつ必要な白と黒の石は、いつの間にやら
にも関わらず、三日目の明け方にはもう勝てなくなっていた。
「あんた、強すぎないか?」
「あなたが弱すぎるのだ。
「むかつくなぁ……」
四日目には、そんな遠慮のない会話までできるようになっていた。
足の当て布は、目覚める度に新しくなっていた。薬湯も、日々の食事も、ツチが眠っている間に用意されていた。
よくしてもらっていると思う。
身内以外の人間に、ここまで気にかけてもらったことはない。
だから、こんなことを言うのは、本当に心苦しいのだが――
「
なんだろうか、と返す声音はどこかぼんやりしている。次の手を考えているのだろう。
「――肉が食べたいんだ」
「……にく?」
思ってもみないことを聞いた、とでも言いたげだった。
「猪だとか贅沢は言わない。鹿――いやいやいや、鳥でいい。小鳥でいい。
この通りだ、と
「肉は――好きではない」
ツチは目を丸くした。こちらもこちらで、思ってもみないことを言われた体だ。
「あんなに
たまらないんだ、とツチは今にもよだれを垂らしそうな顔をしてみせた。
「食す
「そうなのか。まあ、やんごとないひとは鳥獣の肉を忌むとも聞くしな。なんだっけ、殺生がどうのとか。しょうがない、忘れてくれ。にしても――食べたいなあ、鳥ぃ……」
翌日、膳には蒸した川魚が供された。
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