第2話

 ――青寧あおねのお山にはねえ、化け物が出るよぅ。

 ――身の丈三丈の大鬼サ。

 ――何人も食い殺されたんだ。

 ――いやいや、嘘じゃねえ。俺のじいさまがその目で見てんだから。


 ――鬼って親父さん、角の生えた大男かい。講談じゃあるまいし。


 ――いんや、あねさん。姿は人と変わらねえそうな。

 ――だってよぉ、その鬼は、もともとただの人なんだもの。

 ――鬼に食われて、鬼の血を飲むと、ひとが鬼になっちまうとよ。


 ――おっかないこと言わないどくれ。鬼に変じるなんて、とんでもない。


 ――そう悪いことばかりでもないらしいよぅ。

 ――鬼ってのは不老長寿。怪我もしねえし病知らずって話だぁ。


 ――冗談も大概にしなよ。

 ――鬼が長寿? ひとを鬼に変える? そんならこの世は鬼だらけになっちまうわよ。

 ――まあ、臆病な奴が猿かなんかを見間違えたってのが真相じゃないかしら。


 ――いや、だから、じいさまが本当に見たって……おや、坊主、行くのかい。

 ――街道をお行きよぅ、坊主。

 ――お山に入っちゃいけないよう。

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