第百十二回 動き出す悪意
一一〇五年、春。厳しい冬が去り
梁山泊では来たもの全てが戦闘要員になる訳ではなく、まずは各種仕事に適性があるかを見定められ振り分けられる。もちろん本人の希望も
まずは生産や利益をあげられる層を厚くし皆を豊かにする。そしてこの豊かな地での生活を守りたいという意識を
これらが実行に移せるのも梁山泊に集まった人材の多さからだ。抜きん出た力を持つ者達が統率力の高い者のもと、一丸となって働いた事による成果だった。
これだけの結果を皆が実感すれば王倫への支持が日増しに高まるのも当然。他の地域からすれば
更にこの地からは新たな道具や
そしてこの姫様達の気遣いを美談として感動し涙した……だけでは済まず、この箱庭なるものに自分も挑戦したいという者達が現れる事になる。
人気に火がついた箱庭は昔からあった
一方でその頃、
「
「先日起きた事件のこと。ききましたぞ」
「もう君の耳に届いたのか。人の口に戸は立てられないものだな」
聞煥章は朝廷内に知り合いが多い。その辺りから彼の耳に入ったのだろう。
少し長くなるが事件とその背景はこうだ。元々柴進の先祖、
しかし文治主義は軍事力の低下を招き、宋国を狙う諸外国とは
この財政の改善や軍事力の増強を任された人物が行った政策を「
それから
この一連の政治的争いを「新法・旧法の争い」と呼び、もはや両者には政策理論など関係なく、ただ対立相手が憎いがゆえの行動をとるようになっており、国政が混乱するのは必然であったと言える。
徽宗が信任している
「その人物は新法を悪用し
「うむ。
「蔡京に先手を打たれたのでしょう。して、師兄。私が今日ここに来た理由ですが師兄の
「うん? それはどういう事だい?」
聞煥章は宿元景に顔を寄せて声を落とす。
「その人物が処罰された理由。この冬の間に
「……君に隠し事は出来なさそうだ。陛下は朝廷内だけで処理するつもりだったのだが」
「陛下の薪となればその
「うむ……陛下に言われて部下に調べさせているところだ。間もなく結果が出るだろう」
「やはり」
「やはり?」
聞煥章は宿元景の手を取り真剣な表情で考えを伝える。
「これは蔡京の
「私は何もしていないのにか?」
「何もしていないのは今回の人物も同じです」
「! ……」
宿元景は考え込んだ。聞煥章は手を離し続ける。
「師兄は陛下への忠義に厚く、また陛下からも信頼されておいでです。しかし
「それは確かに……」
「あくまで狙いは政敵関係にあった人物です。しかし師兄は蔡京にとって敵でも味方でも無かった為に都合が良く、
「む」
「師兄はこの後陛下に正直に話すか
この説明で宿元景も
「私の管理責任を問われる話に展開してしまう訳か。ならどうすれば良いだろう?」
「師兄が急を脱するには……そうだ!」
二人の密談は夜遅くまで続いたが、宿元景はこの危機をどう乗り切るのか。
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