第百十三回 聞煥章の反計
都の
※蔡京
間もなくその謁見の間に宿元景が姿を現す。
「殿司太尉宿元景。
宿元景は
(蔡京……やはり同席していたか)
この場に蔡京が同席する事は
(おそらくその場には蔡京もおりましょう。それは
「よく来た。早速だが調査の内容を聞かせてもらえるか?」
「はっ!」
徽宗の問いにもう一度頭を下げてから宿元景は口を開く。
(良いですか師兄。蔡京は自分にとって都合の悪い話が出そうな時は口を挟んでくるはずです。なのでまずは……)
「はい。調査しましたところ確かに蔡京殿の言われるように
その宿元景の発言に蔡京は
(ほう。まさか
調査結果に目を通す徽宗を見ながら蔡京は次の展開に備えた。
「ふむ……大した量という訳ではないようだな。これなら別に」
「! 陛下。おそれながら」
蔡京が口を挟もうとするよりはやく。
「何を
宿元景がすごい
「お、落ち着け宿元景。お主がそんなに怒るとこなど初めて見たぞ」
「これが怒らずにいられましょうか!
「し、宿元景、とにかく落ち着くのだ。蔡京。そなたはどう考えるか」
「は? は。わたくしめ」
「蔡京殿! 不正に気付いていただけた事にはこの宿元景、深く感謝いたします」
「う? あ、いやなに」
「されど陛下の
蔡京は
(宿元景は処罰ではなく処断と言った。それはつまり
思わぬ所から良い方向に転がったものだと内心ほくそ笑む蔡京。最初は展開によって自分も激昂し、望む結果にしようとしていたが自分よりも遥かに熱くなっている宿元景を見て妙に冷静になってしまっていた。
蔡京は笑みになりそうな表情をつとめて真面目に装い、徽宗に
「陛下。確かに今回の件は宿元景殿の
「な、何。蔡京は宿元景に任せると言うのか?」
「はい陛下」
徽宗は前のめりの体を椅子深くに座り直した。
「では宿元景。そなたの考えは?」
「一族もろとも
「な、なんだと?」
徽宗は再び前のめりになる。
(ほうほう。そこまで怒り
徽宗と蔡京の反応は全然別のものであったが宿元景はすぐさまその場に
「そして陛下。この宿元景にも
「ま、まてまて。何故そなたを罰しなければならぬのだ。そなたは
「今回の件はわたくしの管理が行き届かなかった結果にございます! どうかわたくしめも罰してくださいませ!」
平伏したまま叫ぶ宿元景に徽宗は困ってしまう。大した量ではない、と口にしたように彼自身の中では取るに足らないと思えた案件。むしろ目の前の宿元景が騒ぎすぎのような気になってきていたのだ。徽宗にとってはこんな内容で宿元景を罰する気にはなれない。
徽宗は困った目で蔡京を見た。が、蔡京は
「そうだ! 朕は決めたぞ。もうこの決定に意見を言う事は許さん」
~宿元景の屋敷~
「ずっと
今日の出来事を
「ですが師兄の
「明日から陛下の私を見る目が変わってしまわなければよいが」
「普段激昂する事のない師兄だからこそ効果があったのです。その証拠に蔡京すら熱くさせずにこちらの
聞煥章は、人は
その結果、徽宗は問題そのものを
蔡京は自分の邪魔になる存在の命を奪って
悩んだ徽宗は両者の罪を互いに引くと言ったのだ。つまり宿元景を
宿元景は徽宗への忠誠と感謝を
また蔡京が徽宗の判断を支持した事で宿元景の管理責任を責める事は出来なくなった訳でもある。なにせその
「これで師兄は皇帝に忠実なだけの無害な人物との印象になったはずです」
「そう願いたいね。もう危ない橋を渡ったり
宿元景は聞煥章に感謝する。
「いえ、まだ気は抜けません。最後の仕掛けが残っていますから」
だが聞煥章の策とは彼を救うだけではなく、
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