第百四回 山士奇
史進は再び説得の為に街の門前まで
「何! 今日は俺の武芸は必要ないと言われるのですか?」
史進が
「史進殿の
「むう。それは構いませんが……呼び出してどうするのです? まさか孔亮殿が
孔亮は一瞬きょとんとしてから笑う。
「まさかまさか。今日は武芸で勝負は致しませんのでこう呼び出していただきたいのです」
そして門前。史進が山士奇を呼び出し、彼も
「待っていたぞ! 今日こそ決着をつけようではないか!」
準備していたとばかりに史進に近づく山士奇。
「そうしたいのは
山士奇は驚く。
(そんな男が指示に従って……だと?)
そして続けられた言葉に耳を疑う。
「
いまだ
「おやめください。これは敵の罠にございます」
「……そうかもしれんが……いや、もし罠ならまとめてひっ捕らえればよい」
言うが早いか史進に向かって叫ぶ。
「その申し出、受けよう! ……お前達は念の為守りを固めておけ」
「!? わ、若旦那様!」
周囲が驚いた時には山士奇は
そして史進に
「俺達も限られた
「それはお構いなく。皆様、今日はこの様な席に招いていただきお礼申し上げます」
「さあさあ山士奇殿、貴殿はそちらの席へどうぞ。
山士奇は朱武に
「お
「まずは山士奇殿。我等が他意のない証明をする
「梁山泊!」
その若者は孔亮と名乗り梁山泊に所属していると告げた。
「俺達は梁山泊を目指して進んでいるのだ。だから山士奇殿の住む街を通りたいだけで襲うつもりなどない」
史進が目的を話す。山士奇も梁山泊については知っている。
「梁山泊は最近勢いのある賊と聞く。合流させれば泣く民が増えるではないか。それを見過ごす訳にはいかぬ」
これは山士奇の本心。ならば民のためにも少華山の面々を通すつもりはないという。
「ふふふ。ならばこそ史進殿に貴殿を宴に誘ってもらったのです」
「……酔わせて罠にでもかけるつもりかな?」
「まさか。
孔亮は梁山泊が
「ふーむ。それが事実であれば確かに誤解と言えましょう。しかし申し訳ありませんがそれを
それでも山士奇の対応は最初に比べ柔らかいものになった。
「そうでしょう。ところでそれはそれとして……」
孔亮は話を変え
「噂は聞いた事が。私も武を
孔亮は待ってましたとばかりに話題を振る。今まではここまで
「史進殿と山士奇殿は見事な一騎打ちを
「全くお見事でした」
陳達が言うと
「いや、史進殿の腕前には本当に驚かされましたぞ」
史進もすかさず反応する。
「何を言われる。山士奇殿こそ。失礼だが師はどなたか?」
山士奇は答えようとしたが、それはその場にいる初めて口を開いた男に
「史進。彼は
「なんと」
「!?」
史進は色々な師について学び腕を
「そ、その通りで。失礼ですが貴方様は……」
「俺の先生だ。山士奇殿紹介しよう。言うのもなんだがすごいお人だよ」
「持ち上げすぎだ史進。失礼、私は
「!?」
史進が
「まさか……今話に出ていた禁軍師範の?」
「元、です。今は梁山泊を目指すただの旅人ですよ」
山士奇は王進の前に進み出て
「この山士奇! 王進殿にお会いでき
同時に史進が指示に従うという相手に
「元禁軍師範の王進殿が史進殿の師とは」
「この史進、
史進は師が口にした内容に感激する。山士奇もその言葉に
「感じました。それに加えて師が王進殿であるならばあの腕前も納得するしかありません」
「いやいや貴殿の才も
山士奇が
その読み通り彼は
「王進先生。
孔亮の願ってもない一言に山士奇の目が輝く。期待に満ちた目だ。そして王進も梁山泊の孔亮の言葉とあっては
「私の様な者でよければ喜んで。史進の
禁軍師範の
「まるで先生と初めて出会った時の俺みたいだ」
史進が昔を思いだす。
「ま、参りました!」
王進は史進と山士奇の共通点やそれぞれの欠点を
「明日皆様で来られれば門を開けて通過をお見送りいたします」
山士奇はそう言って自分の街へと帰って行く。
史進達も姿が見えなくなるまで見送ったが、その
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