第百五回 山士奇逃亡
「何、明日になれば私の言った事が正しいと分かる。彼等は
そして翌日。山士奇は門前に現れた史進達を案内するように街の中へと
街の者達も最初は不安で
しかしこの時、街の者達の考えとは違う別の
一行は何事もなく街を抜ける事が出来た。そのまま進み、ひらけた場所での
「
「うむ。母上の方も
王進は急ぎたいのだろう。だがここで孔亮が
「山士奇殿が信用できる方で良かったですね」
「別れるのが惜しい程の人物だった」
孔亮の意見に
「王進殿。
「うん?」
その腕前ではなく性格をきく孔亮。
「決して浅はかとまでは言わないが、物事に
その王進の分析は孔亮にとって策の成功を予感させる。
「だとするならば王進殿には申し訳ありませんが、
「ど、どういう事ですかな?」
王進も孔亮のこの言葉には
「実は朱武殿と
周囲からいつそんな
「それでは最後尾を馬に乗って歩いてきただけではありませんか」
「いやぁ孔亮殿の目の付け所は大したものでした」
「どういう事だ?」
「我等も山士奇殿を信用し、彼もまた我等を信用してくれた。その結果双方に全く被害が出なかったのは承知の通りでしょう」
いい事ではないかと皆頷く。
「ですがその結果、なんの利益も得られない者達が存在していたのですよ。孔亮殿はそこに目を付けられた」
「そんな奴らがいるのか? 双方争う方が得するとか意味がわからん」
「そうではない
「……ますます意味がわからんではないか!」
「だから目の付け所が
話が進まないと思ったのか王進が尋ねる。
「一体二人は列の最後尾で何をされたのです?」
「朱武殿とずっと山士奇殿の
しれっと言う孔亮を見て朱武は笑ってしまった。
「あまりの
役人。確かにあの街では武装していた者達の中に少数ながら役人も混じっていた。山士奇に
撃退したり相手の頭目を捕らえたりすれば
職務に忠実な役人ならそれでも不満は抱かないであろう。だがもしこの街に『腐った』役人が
孔亮と朱武の会話の内容から
そう、孔亮は山士奇と役人との間に
後日、梁山泊へと進む集団に後方から馬に乗った男が一騎で駆けてきて追いついた。その男の顔を見て驚く史進。
「山士奇殿! 一体どうなされた」
男は山士奇。一人の役人が山士奇に賊と内通していたと都へ報告すると
実家に対しては同情的な声も多く罪に問われなさそうであったが、当事者である山士奇はそういう訳にもいかず、街に
「こうなってしまった以上、私も梁山泊の一員に加えていただきたいと思いまして」
(そうか! 孔亮殿は最初から彼を仲間に引き入れるつもりだったのか)
本来、生活が安定しているはずの富豪の息子が賊になるなど『史進』のような出来事でもなければ考えられない。だから仮に富豪の息子を仲間に誘っても
そういう無意識による
こうして心強い仲間がまた一人。梁山泊へと加わろうとしていた。
一方その
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