第五十一回 集結する者達

 王倫おうりんが皆の意見を聞きながら区画くかくの整理や防衛設備計画・法の整備などを熟考じゅくりょしていた頃、梁山泊りょうざんぱくより北東の地、青州せいしゅうでは夢の通り大勢おおぜいの人間が梁山泊に押しかけてくるその前兆ぜんちょうとも言える出来事が発生はっせいしていたのである。


 それは晁蓋ちょうがいの義兄弟、宋江そうこう起点きてんとなり騒動そうどうを巻き起こしていた。


 梁山泊への帰路きろ途中とちゅうであった晁蓋は、一時期逃亡中の宋江の世話をしていた孔明こうめい孔亮こうりょうという兄弟と出会う。


 この兄弟、地元では金持ちの息子であったが喧嘩けんかきで兄の孔明、弟の孔亮、共に手下を引き連れて地元で暴れ回っていた。だが名声ある宋江をしたっており、その義兄弟の晁蓋と出会えたという事で彼は歓待かんたいを受ける。


 だが二人は当時他の金持ちと一触即発いっしょくそくはつの状態となっており、晁蓋は世話になった礼にと間に入りこれを見事におさめた。……のだがこれをきっかけに晁蓋がしたわれ、なんとこの敵対していた金持ちと孔明、孔亮らが和解わかいし、その一族と望む手下達を連れて梁山泊についてくる事になったのだ。


 内心、青州の政治に対し不安を感じていた彼らは梁山泊の将来性にける事にした、というのが本音ほんねである。



 一方、清風寨せいふうさいの知人を頼り柴進邸さいしんていを離れた宋江であったが、その途中とちゅう清風山せいふうざん山賊さんぞく燕順えんじゅん達と知り合う。そしてその仲間の王英おうえいが奪ってきたという清風鎮せいふうちん知寨ちさい劉高りゅうこうの妻を宋江の口添くちぞえで助けた事から頼るはずだった副知寨ふくちさいである友人、花栄かえいをも巻添まきぞえにする事件に発展はってんしてしまうのであった。


 元々もともと武官ぶかんの花栄と私腹しふくやす事ばかり考える劉高はそりが合わず、劉高はこれを機に花栄の追い落としを画策かくさく。妻が宋江を恩人おんじんどころか山賊の頭と口述こうじゅつしたため、花栄もこれに通じた賊として宋江そうこう諸共もろともわなにかけて捕縛ほばくする。


 青州府せいしゅうふから派遣はけんされた黄信こうしんが護送役を務めるが、今度は清風山の燕順達が動いて宋江と花栄を助け出す。


 青州府は次に秦明しんめいという腕の立つ男を派遣。だが清風山側は多くの犠牲ぎせいを出しながらも秦明を仲間入りさせ黄信をも説得した。


 この時花栄は冷徹れいてつな作戦を行い秦明を仲間にしようとしていたが、直前に合流していた梁山泊からの使者、劉唐りゅうとう白勝はくしょうが猛反対。特に白勝は王倫に妻を助けられている上、林冲りんちゅうの妻の経緯けいいも知っていたので、


『本人が捕虜ほりょの間に秦明の偽物にせもの仕立したてて攻撃を行い、劉高に疑心ぎしんを抱かせ秦明の家族を殺害させる。うらみを抱いた秦明は宋江達の仲間にならざるをない』


 という作戦にこうから対立たいりつ。怒りから奮起ふんきし劉唐と石勇せきゆうともない、なんと秦明の妻を救出してしまった。だが劉高のやり口と白勝らの男気おとこぎを見た秦明は宋江と花栄の謝罪を受け入れ、自ら仲間入りを決意した。


 白勝らは秦明の妻と同時に花栄の妻と妹をも救出していたので、宋江は皆を連れて梁山泊への逃避行とうひこうすすめる。清風山では大軍相手に持ちこたえるのは難しいと判断した花栄はその提案ていあんしたがう判断をくだした。


 その道中、土地をめぐり争っていた賊の呂方りょほう郭盛かくせいという男達を仲裁ちゅうさいし、そのまま仲間に加えた花栄達だったが、宋江は石勇から渡された手紙から父親が亡くなった事を知らされ、家に戻る決意をし途中で一旦いったん別れる事になった。


 これらの事変じへんにより梁山泊には時を同じくして数多あまたの人材や資金、資材が集まろうとしていたが、北京大名府ほっけいだいめいふ、そして新たに青州からもにらまれる形になってしまったのである。

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