第三十七回 敵軍現る

 晁蓋ちょうがい達が梁山泊りょうざんぱく合流ごうりゅうした翌日よくじつ彼等かれら王倫おうりんにある場所へと案内される。その場所、天命殿てんめいでんで王倫が北斗聖君ほくとせいくん南斗聖君なんとせいくん崇拝すうはいしている事、北斗七星ほくとしちせいは北斗聖君と関係があり、その事から晁蓋達が同志となる運命であったと王倫は語り晁蓋もまたその話に感銘かんめいを受けた。


 晁蓋は本来もう一人仲間(白勝はくしょう)がいる事を話し、その救出きゅうしゅつ助力じょりょくうったえたがそれは拒否きょひされる。


「申し訳ないがそれは出来ぬ相談だ」

「そんな! 彼も大切な仲間である事は変わりないのです! どうか考え直してください」


 なおも食い下がろうとする晁蓋達をせいし、王倫はまずは会わせたい人物がいるからと別の場所へ案内した。そこで彼等が見たのは……治療ちりょうされ静養せいようしている白勝とその妻。


「ごらんの通り救出対象はすでに梁山泊に居られましてですな? 助力のしようがなかったのですよ」


 王倫はいたずらっぽい笑みを見せ白勝の一件を説明した。これにより阮兄弟をふく一部いちぶ不審ふしんを抱いていた者達も完全に王倫を信用し、北京大名府ほっけいだいめいふ軍勢ぐんぜいに備える事となる。


 そしてそれから半月後、はなっていた手下から報告がもたらされた。


 ちなみにこの頃には白勝とその妻も回復し、そのまま梁山泊の一員となっていたのであるが。


ついに北京大名府が動いた」


 王倫の前に整列せいれつして話を聞く頭目達。


「それによると軍勢は二千五百。大将は索超さくちょうで副将に周謹しゅうきんおおむね予想通りだ。こちらは当初の計画で対応する」


 模型もけいを使って説明した作戦だ。作戦が可視化かしかできた事によりもと漁師りょうしげん三兄弟も自分の役割やくわりをきっちり理解している。


「こちらは千五百。この戦い、全くの無傷むきずという訳には行かぬだろうが今後梁山泊が官軍かんぐんに攻められにくくする為にも『短期で完全な勝利』をつかんでおかねばならない」

首領しゅりょうの立てた作戦なら何も問題ありません。この作戦、阮兄弟がきもだ。上手くやってくれよ?」

「もちろん他の者もだが万一などあってはならんぞ?」

おう!!」


 呉用ごようが阮兄弟に。王倫が全員に声をかける。そしてみなまかされた持ち場にっていき北京大名府の軍勢を待ち受けた。



 一方北京大名府では生辰網せいしんこう行方ゆくえつかんだ梁世傑りょうせいけつがそれを取り戻さんと躍起やっきになり、索超と周謹をかして出撃しゅつげきさせている。


 それは少しでも十万貫じゅうまんがん価値かちそこないたくないという考えからであったが、その為に索超の提案ていあんした慎重論しんちょうろん一蹴いっしゅうし、重圧じゅうあつまでかけていた。


 実際に梁山泊軍と対峙たいじしたことで得体えたいのしれない何かを感じ取ったからこそ慎重にかまえるべきといた索超だったが、臆病風おくびょうかぜに吹かれたかとののしられる。


 それでも軍令ぐんれいとあってはさからえず、副将の周謹と共に梁山泊を目指して出陣しゅつじんした。その兵二千五百。ただこのままでは備えも何もなく数に任せた力攻めしか選択せんたくできないであろう。残念な事に武芸の弟子で副官の周謹ですら相手をたかがぞくという認識だったのである。


 腕の立つ大将と統制とうせいのとれた部隊について聞かせ注意をうながした索超。そのはすんなり目的地へと到着し、湖をはさみ前面に梁山泊が見える位置に布陣ふじんした。


「ここまで何の抵抗ていこうもないのも気になるが……」

「きっとこちらの動きを掴めてないんですよ。それかこの二千五百の軍勢に怖気おじけいてるんです」


 王倫の真意しんいを読めないまま、索超率いる北京大名府軍は梁山泊攻略戦を開始する。

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