第十七回 林冲心服 後編
「まさか……お前なのか? 本当に?」
「はい旦那様。私もこうしてもう一度お会いできるとは思っていませんでした」
「ああ! 常に気にかけていた。 私の為に
「いえ。こうしてまたあの方のおかげで旦那様の元へ来れましたから……」
林冲は
「し、首領? なぜ我が妻がここに」
「それはこの者から聞くのが良いだろう。入ってこい」
王倫に呼ばれて入って来たのは……
「朱貴殿!? なぜ朱貴殿が妻を? 別の件で
「ええ。林冲殿の
「!? 一体何が……」
「林冲殿が山寨に来た日、話を聞いた首領は翌日私にこう言われました。
「な! ではまさか……」
林冲は妻の受難を想像して青くなる。
「……私が到着した時はまさにご自身でそのお命を
「!?」
林冲の顔色は青を通り越して白くなった。
「おのれ! あやつめまだ我が妻にまとわりついていたのか!!」
今度は赤くなり今にも都へ殴り込みをかけに行きそうな
「朱貴様には感謝しきれません。とめていただけたおかげでまた旦那様にお目にかかれました」
泣きながら本当に安心しきった笑顔を見せると林冲は、
「どうか
妻に謝罪し王倫達に顔を向けた。だが感謝の言葉を口にする前に王倫が続ける。
「林冲よ、この者も紹介しておく。入れ」
「え……」
王倫に呼ばれて入ってきたのは……
「と、
それは山寨から姿を消したはずの杜遷だった。無言で入ってきた杜遷だが、その動きのぎこちなさを林冲は
「杜遷殿その
杜遷が消えた
「謝罪ならいりませんよ、林冲殿。あれは『友』としての彼に頼まれてやった
「……え? し、芝居ですと……? な、なぜそんな自らが傷付くような芝居など……」
林冲にとっては当然意味が分からない話だ。妻の件は朱貴が動いたという事で分かる。だが杜遷が自らを傷付ける事が何に
「最初に言っただろう。そなたが必要なものを用意すると。杜遷よ危険な橋を渡らせてしまったが、彼に渡してやってくれ」
「はい頭目。林冲殿これを。わが友がどうしてもこれを貴方に渡したいと私にねだった物です」
林冲はその布でくるまれた何かを受け取る。それはずっしりとした重さがあった。
「……!? これはまさかっ! なぜこれがここに!」
それは高俅が息子の願いを聞き入れ、林冲を
「妻と離され、名刀や大金まで奪われたとは余りに
朱貴が言う。林冲は余りの事に口をぱくぱくさせていたが、
「名刀はどうやって? 買い取れるとも思いませんし、盗みに入るなら怪我をする必要などなかった。何より高俅達に
「……それは簡単でした。高俅の息子に
「……え? 今なんと?」
杜遷は
「当然でしょう。『
「杭州?」
林冲が流された
「受けた怪我をみせたら簡単に信じ込みましたよあの馬鹿息子」
「私が杜遷を叩いても良かったが武芸に関しては
「私が失敗したと判断し、
王倫の言葉で杜遷のあの行動の意味を
「私の為に無理を……」
「言えば反対されたであろうからな」
「なんという……なんという無茶を……」
「林冲の
林冲の為に知り合って間もない男達がここまでしてくれた事に林冲は
「なに、高俅とその息子の『嫌がる』事を考えたらそれが『
林冲は王倫の
「この林冲!今ここに
……夢で林冲に殺された王倫。しかしその彼がついに最悪の結果を
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