第五回 英雄問答
「して話とは……」
「そうですなぁ……
「英雄……? 何を
「いやいやまさにそこの部分でございますよ」
王倫は考える。だが
「では
そう問われるので王倫は自分の知識を
「始皇帝は長く続いた戦乱を終わらせた人物。英雄に
「では
「項羽は圧倒的武力でその秦を
「ではその三人で誰が一番秀でた英雄かを問えばいかがです? 最終的に国を興した劉邦になるのでしょうか?」
「いや、それは……」
「さらにその
「それは…… そうですな。
名が
「話を変えましょう。王倫殿は英雄を目指した事はないのですか?」
「は? ……いやいやいや、私などが一体どうして英雄などを目指せましょうか。今の話で英雄そのものが曖昧に感じた私に」
そう言った王倫だがこれは本心である。だが
「若ければ『そういうもの』も目指せたかもしれませんが、私もすでに三十一。ここから何か始めるには遅すぎましょう」
「これは異な事を申されますな。歴史を知っている王倫殿ならばそれより上の年齢で
確かに
「お恥ずかしい話ですが知識があるのは官吏を目指して勉学に
「では科挙に合格していれば英雄を目指した、もしくは目指せた、と?」
「……」
王倫は無言で首を振る。
「そうではないのです先生方。言うなれば私は最初から
副頭目の三人にも話した事のない胸の内をたった数日前に知り合った二人に素直に話し始めた自分自身に驚く王倫だった。
官吏を目指したのも安定した生活のためだけ。本当の姿は小心者の上、
「ふむ、それは妙ですな。私の知る英雄の中には王倫殿のいう性格のような者がおりますぞ」
と返ってくる。
「何を馬鹿な。こんな私ではせいぜい
「慰めなどではありません。事実始皇帝や劉邦も当てはまります。他にもおりましょうな」
「は? 始皇帝や劉邦がですか?彼等のどこが私と重なるというのですか」
王倫はさすがにそれはないと否定した。
「猜疑心の部分では彼等の方が王倫殿より
するとそれまで黙っていた
「
「え…… え?」
王倫は話の流れが歴史上の
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