1ー2ー4
天神和輝が元々いた世界での心寒い光景など露知らぬ、和輝たちはといえば。
「「アハハ……」」
城門を潜ろうが状況は変わらず、引き続き土下座の歓迎を受けていた。
土下座の列が土下座を作り、最早果てなど見えぬ土下座の道に、和輝たちは強張った表情を浮かべながら進んでいて。
吹けもしない口笛を吹く真似をして冷や汗を流すサナに向け、お前は本当に一体何したのかと問いかける視線だけが突き刺さっていた。
しかし、
「……何かなこれは」
強張った笑みを浮かべるサナは、平坦な声を微かに紡ぐ。
そして、重装歩兵など物理的に土下座できぬ者たちが自身に向け敬礼をしている様を見て、私何かしたっけかと首を傾げて虚空を見つめ。
受ける異様な歓待に、私の評価最悪じゃんと虚ろな笑みを浮かべて呟くサナは、ふと思いついたような顔をして。
「あ、和輝さん和輝さん! あれ、王城です!!」
「あ、はい……」
「サナ、やっぱり何かしてたのだ?」
「本当なのです。この街入ってから土下座率半端ないのですよ。何ならずっと土下座の道なのです」
話を逸らそうとするサナだったが、その後ろでは当然のごとく密談が始まっていた。
「絶対サナ危ないやつです」
そう時間が経つことなく全員が頷き結論が出たところで、笑顔を浮かべたサナは和輝の眼前より消失し。
「みなさん♪ 後でゆっくりお話ししましょうね♪」
「「あ、アハハ……」」
リィネ達の背後へと現れたサナは、3体の哀れな子羊の首元に殺気で形作られた死神の鎌を押し当てて、低く弾むような囁き声を微かに紡ぐ。
文字通り飛ぶ虫を落として絶命させるサナの殺気混じる重圧は、新たな伝説を紡ぐとも知らずに惜しむことなく放たれて。
そんな折、金を基調とし白く輝く刺繍を施された服を着た女性が現れる。
そして、中心にサナがいることを見て取ると額を押さえて息を吐き。
「……サナ、何やらかしてこの状況になったか教えてもらえる? あなたが変態なのと性癖が歪んでるのと心病んでるのは知ってるけど、さすがにこれは擁護のしようが……」
あぁ、またか。
そうとでも言いたげに嘆息し、これだから貴方はと首を振る女性の様子にサナはその顔より感情を消して。
「うっそー、更に私の株を下げてくるやつ湧いたんですけどー」
「サナ、貴方は昔から人を何だと……」
面倒くさいのが湧いたと嘆息するサナを気にした様子もなく、豪華な装束に身を女性が懐かしむように言葉を紡ぎ。
その瞬間、顔より血の気が退くサナは目を瞑ると深く大きく息を吐き、目を見開くと同時に唇を吊り上げ獰猛な笑みを浮かべ、遠い昔に思いを馳せ言葉を紡ぐ女性の話を遮るかの如く唇を太い声を響かせた。
「黙れや腐れ
響く狂気に満ちた声は辺りの空気を絶望へと変えるが、サナの顔に浮かぶは焦りと怯えで。
そんなサナの様子に、目を見開き口を押さえる女王と呼ばれた豪華な衣服を纏った女性は深呼吸をすると拳を握り。
親の敵を見るよりも強く親友の仇を見るよりも昏い、憤怒と憎しみが入り交じった表情を浮かべてサナを見据え。
「それ以上、喋らないでもらえる? サナ、不敬罪と大逆罪、その他諸々で処刑は勘弁してあげるから……」
「はっ! 勘弁するって何? あんたにそんな権限あったっけ? ほら、答えてみなよ! あなたの正体は……」
一音一音を発するごとにその目に理性を取り戻す女王は、意を決したように深く息を吸い込んで。
「黙れっつってんだよ! 死ぬより苦しい目に合わすぞ雌豚が!!」
この場に最も相応しく決してその顔には似合わない、使い慣れたかのような太く迫力に満ちた声を響かせる。
そんな女王に向かい、サナは最早何も映さぬ瞳を女王に向け狂気の笑みを浮かべると腰の剣を引き抜いて。
「アーッハハハ! やれるもんならやってみやがれ!! あたしに勝てるとでも思ってんの!?」
「ハッ! 威勢のいいこったなぁ!! そのまま泣き叫びながら許しを乞うてくれりゃ完璧だけど!!!」
威勢よく啖呵を切るサナに威勢良く啖呵を返す女王は、今この場を納める最良の方法はと呟きながら息を吸い、虚空から
「醜い体に臓器ぶちまけろ汚染物!!」
「普通に死ねると思うな猥褻物!!」
結果、サナを戦闘不能にまで追い込んで回収することにしたそうな。
そして、時間が経つに連れ戦闘の熱は自然と上昇していった。
一方その頃、天界の一画で足元の画面を見つめるスラオシャは。
「……失敗した」
画面に写る王国の
「ん? 先輩、どうかしたんですか?」
そんなスラオシャに、何気ない表情を浮かべ近くを歩いていた桜色の髪をした少女らしき女が声をかけ。
「いや、えっと……ラファエル、これ、見てみなさい」
そんな少女に、スラオシャは和輝を中心に写した画面を指し示す。
呆けたような声を表情をして首を傾げるラファエルと呼ばれた桜色の髪をした少女は、スラオシャに寄り画面を覗き込み。
「わー、綺麗に修羅場ってますねー」
「どこ行くの?」
即座に回れ右をして立ち去ろうとするも、その肩は勢いよく掴まれて。
肩を震わせ強張った笑みを浮かべるラファエルは、徐に首を動かし迫力のある笑みを浮かべるスラオシャの視線に挙動を止めて。
来る時間を間違えたと後悔したというが、それは最早後の祭。
「え、えー? いやー、えっとー……あ、そう、そうだ! 私ミカエル先輩のところに言って地球滅ぼしてこないと!」
「そんなもん、放っておいてもいいでしょ?」
そんなこと私が代わりにやっとくから、とでも言いたげな口調で重い視線を突き刺すスラオシャに、ラファエルは諦めたように息を吐いて地に座ると胡座をかいて。
「今度は何やらせる気なんですかー……」
面倒くさそうな弱々しい声を響かすが、はよ終われと投げやりな気分になったそうな。
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