第177話聖女の涙
ドスーーン!
ウィスラーの城壁で監視してた兵士達が平原方向から突然飛んで来た巨大な繭に驚いていた
「何だ?繭?何かいるかも知れない!確認しろ!」
兵士達は、城壁前に飛んで来た繭を包囲し確認しょうとする
「繭の中からすすり泣く声が聞こえます」
一人の兵士が繭に近寄り繭を解体すると中から商業ギルドのエルフ族のメンバーが出て来た
兵士が近寄り声をかける
「ベルバラ様!どうしてこのような状態になったのですか?」
ベルバラは、涙をにじませカミラスト平原で、何があったかを報告するためにウィスラーの防衛本部に向かい国王に報告した
グランブル国王は、ベルバラの報告を聞き暫く沈黙し一言
「足止めご苦労であった」
「は!我々は、戦えますゆえウィスラー防衛の任務に就きます」
「うむ、でどれくらい持ちそうだ?」
「恐らく長くても2日でしょう、では」
グランブル達防衛本部は、重苦しい雰囲気に包まれていた
そこに悲報が飛び込む
「ナトリム峡谷を2万のバルサート軍が通過して来ます」
それを聞きエアロが泣き崩れる
ネイルが近寄りエアロに尋ねる
「エアロ様どうしたの?確か本隊の前を進むバルサート軍は、確か10万だったはず2万なら対処できる」
エアロは、涙をふき首を振る
「峡谷を越えて来た事がダメなの、さっきライラから聞きました、ハル様から従魔を使役するために頂いたペンダントからハル様の魔力が感じなくなったと、ペンダントには、ハル様の魔力が込められていてハル様と繋がってるそうです」
「え?魔力が感じなくなったって事は…」
そこに偵察隊から報告が届く
「バルサート軍2万は、ナトリム峡谷を抜けた先で夜営を始めました、負傷者も多数見られます、状況からここで本隊を待つものと思われます、ただ夜営地に多数のナイフが刺さった少女が、わざと見えるように裸で吊るされてます」
その報告を聞きエアロもネイルも報告に来ていたライラも泣き崩れる
「「「ハル様ーーー!うわーーん」」」
「女神様が…… 」
グランブル国王始め幹部達が膝をつき肩を落とす
「女神様が… 何と言う事をするのじゃ!」
防衛本部は、哀しみに沈んでいた
そこに教会で祈りを捧げていた、聖女と巫女が本部を訪れる
「お話聞かせて頂きました、女神ハル様がティオール国を救うために犠牲になったと、相手は、まだ多数の兵力があると聞きます、私達が投降し、バルサート教皇に兵を引き、帝国と交渉してもらいます」
聖女の発言を聞きエアロ達は、反対する
「サリナトーレ様、投降はダメです!ハル様は、時間を稼ぐとおっしゃいました、まだ希望があるはずです」
聖女サリナトーレは、泣き崩れる
「でも私達のために女神ハル様が… 」
エアロは、サリナトーレを抱きしめ
「ハル様は、家族が来てくれるとおっしゃいました、凄く強いそうです、だからまだ希望はあるのです」
グランブル国王は、静かにつぶやく
「まだ希望があるか … 」
重苦し雰囲気の中ネイルは、これからの事を考えていた
暫く静かな時間がながれる
静かな防衛本部に突然各部隊長用の通信用魔道具から連絡が入る
「こちら海軍司令官マークハント、我が艦隊は、クオーク帝国海軍と海戦を行い、艦隊は壊滅旗艦ボストークは沈没、我々は駆けつけたミラーレ連合艦隊に救出されました、艦隊の乗組員は、海軍参謀クレハ他数百名が保護され、治療を受けています」
ネイルが国王を押しのけ、通信をか始める
「それでクオーク帝国海軍は、どうなったの?ミラーレ連合艦隊についての情報もほしい」
「クオーク帝国海軍は、ミラーレ連合艦隊により完全に壊滅しました、ミラーレ艦隊は、我々と同じ戦闘艦は50隻ほどでしたが、見たこともない兵器でクオーク帝国海軍は、反撃することもなく壊滅しました」
「え?壊滅?反撃出来ずに壊滅ですか?嘘でしょ… 」
ネイルが一人ぶつぶつと言っている
「それと、こちらの参謀長が聞きたい事があるそうです、変わります」
「私ミラーレ連合国作戦参謀のユリと申します、そちらの兵士は、全員治療をしてボストークまで送りますので、ご安心ください、質問したいのは、女神ハル様のことです!ハル様は、私達ミラーレ連合国にとって絶対的存在です、ハル様は、今どこにいるかわかりますか?」
この場にいる者達は、エアロの言ってた女神様の家族が来てくれたんだと確信した
グランブル国王が通信魔道具に話しかける
「ティオール国国王グランブルと申します、この度我々の艦隊乗組員を救ってくれた事感謝します、直接お礼を申したいのですが、今我々ミラーレの方々を招ける状況ではございません、事が落ち着けば改めてお礼を申し上げます、誠に申し訳ない、女神様については、救われた者がいますので変わります」
「女神ハル様について私の方から話させてもらいます、エアロと申します、ハル様は、使役する魔物を連れて私達が戦っていた場所に現れて、私を含め多くの者を救ってくれました、その後ハル様はナトリム峡谷に向かわれ今私達の国に侵略してきたバルサート軍を迎え撃つために向かわれました、けどハル様は、使役する従魔のほとんどを私達の国に侵略して来たもう一方の場所に派遣したのです、ナトリム峡谷でハル様がどうなったのかわかりません、でもナトリム峡谷に侵攻してきた軍は、10万、そのほとんどを倒してくれましたが、ハル様は… 」
その後声が途絶えたため後ろで聞いていたクルル達が
騒ぎだす
「ハルちゃんがどうしたのじゃ!その後どうなったのじゃ!黙ってたらわからんではないか!」
ユリは、クルル達を落ち着くように言う
ネイルは、溢れてくる涙をこらえて、報告を続ける
「申し訳ございません、先ほど偵察に向かった者が峡谷を抜けた生き残りの敵軍がハル様を捕らえ私達の見せしめのために、裸で吊るされ身体の数ヶ所に深々とナイフが刺さっていたと報告がありました、ハル様の生死はわかりません、ハル様を助けてください!」
通信からは、すすり泣く声も聴こえて来る
暫くしてユリが再びしゃべってくるも明らかに先ほどと違う涙を必死にこらえてるようだ
「い・位置を教えてください!私達の仲間がボストークにいます、我々ミラーレ連合国は、ハル様に敵対した国に女神の裁きを与えます!あなた達のいる場所も教えてください、ハル様の事を大切にしてくださったあなた方を守ります!」
「でも大国は、まだたくさんの魔道具も使役する魔物も何百万の軍隊もいます、ハル様を助けてくれるだけで十分です!」
「問題ない!ハル様の状態を知って暴走する魔族達は止められない、あなた達は心配いらない、位置もわかった、この魔道具の発信位置調べたから今から仲間達が向かう、あなた達は何もしないで!ハル様へ行った行為私達は許さない!」
通信が切れ、聞いてた者達が安堵する
エアロがユリの通信を聞いてぼそっとつぶやく
「何か相手の参謀官のユリ様は、ネイルに似てるね」
ネイルは気にすることもなくしやべる
「私達に何もするなって、どうなるんだろう、あの感じからすると、飛んでもないことになるって事?」
その後ネイル達は、話し合いハルを救出するためベルバラ達が部隊を組み出て行った
「陛下よろしかったのですか?エアロ様ネイル達だけでなく聖女様までも一緒に行かれましたが」
「よい!あの者達は、ハル様への思いいれも強い、好きにさせてやればいい」
国王達は、ハルを救出に向かうエアロ達を静かに見送っていた
☆・☆・☆
一方ハルの情報を得た司令室の者達は、ユリの発言を待った
暫くの沈黙の後ユリは、魔道具を全幹部に伝わる通信具に変えしやべる
「今回の作戦に参加してる全幹部に伝える、ハル様の場所わかったから状況をそのまま報告する、聞いた後のそれぞれの行動を私は、止めない… ただデリス!あなたは、ハルちゃんを確保して回復魔法のすぐれた聖女様に渡して、聖女様は、ハルちゃんの近くにいるはずだから」
「任せよ!妾の全ての力を使って確保する」
「ハルちゃんは、ナトリム峡谷の戦いで傷つき敵軍に捕らえられ今ナトリム峡谷を抜けた夜営場所に見せしめのように裸で吊るされて身体の数ヶ所に深々とナイフが刺さった状態だから後は、皆に任せます」
デリス達含め魔族幹部達も報告を聞き今までにない怒りがこみ上げてくるが、誰も暴走する者はいなかった、報告したユリの強い意志が皆に伝わったからだ
デリスは、8将軍達に呼びかける
「どうするのじゃ、あの冷静なユリが好きに暴れていいと言って来たぞ!妾は命令通り全力でハルちゃんを確保して聖女に渡すが、お主達は好きにしてよいぞ」
ウランは、他の将軍達を見てうなずき話す
「デリス様私達ユリの思いちゃんと理解してますから、まずデリス様がハル様を確保するのを私達全員でサポートします!作戦の最大司令はハル様の救出ですから、ハル様を確保したらユリの命令を遂行しますわ、ハル様を傷つけた国は、私達8将軍で滅ぼしてあげます」
デリスは、微笑み
「いつもすぐに爆発するウランじゃが、今回はビックリするほど落ち着いてるのぉフフフ」
ムムが叫ぶ
「デリス様右前方見えました、あれです!」
上空からハルの姿を見たデリス達は、全員が身体から怒りの魔力を放出させていた
デリスは、怒りを抑えた声で
「おのれー!人間!全員妾に付いて参れ!」
デリス達は、ハルの捕らえられてる場所に着地する
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