第21話叱られたのです

「ハルちゃん!聞いてる!起きて行くわよ!」


ハルを見ると、まだうつらうつらしている


「無理なのハルまだ 眠いの スゥスゥ」


グレープはその様子を見て諦める


「ハルちゃんはぁ・・ 仕方ないかほんと自由な子ね、でも憎めないし、この子といるとなぜか楽しくなる不思議な子ね」


グレープはハルをおぶって、街道を進んでいくが、ハルを背負っての行動はペースも落ち、今日中に村にたどり着けなくなり野営をすることにした。


野営場所を探し街道を進んでいると、王家の紋章の入った馬車を見つける。

どうやら車輪が外れ放置されている。

これかぁ…ハルちゃんが言ってたの


完全に日が暮れる前にと、ペースを上げ移動する。

やがて森のが開けた場所にでる。

ここならとグレープは進もうとすると


「止まれ!何者だ!」


グレープは声のする方を見ると、数人の兵士と女性2人がいた。

一人の女性は明らかに身分が高く、この兵士たちはその護衛と思われる。


なるほど、先ほどの馬車はこの方々だったんだ。

ハルちゃんは助けてあげることができたみたいね。

たぶんこの子のことだから、わからないように行動したと思うし、今この子の事詮索されるのはまずいわね。

仕方ないこのまま野営無しで進むか、この道は何度も通ってるし問題ないわ


「私は、グレープと申します、Aランク冒険者で、この先のホトス村からの依頼で向かうところです、背中で寝てるのは妹のハルと言います」


「我々は、王国騎士団所属する者だ、私はこの隊の責任者ロマリオと申す、あるお方の護衛で、今は王都に戻る所だ、確認のため身分証を投げてくれるか!」


グレープは冒険者カードをロマリオに投げる


グレープ・クラレス Aランク冒険者、ほぉー


「疑って申し訳なかった」


「いえ、お立場理解しています、お気になさらず、では失礼します」


グレープはそのまま立ち去ろうとすると、先ほどの護衛男性が話しかけてくる


「グレープ殿!まだ進まれるのか?もう日が暮れる、夜の森は危険だやめたほうがいい」


「いえ、私のような得体のしれないものと一緒に、野営するのは危険かと思います。

それに妹が寝てるうちに少しでも歩みを進めていたいので、ご心配なく!

私、この道は頻繁に通っていますので、大丈夫でございます。」


ロマリオにお辞儀をし歩き始めたグレープの前に、一人の少女が立ちはだかった。


「ダメよ!夜の森の行動は、ましてそんな小さな妹を連れてなど、この私が許さないわ!」


何言ってるの?この子は…めんどくさい


「許すも許さないも、私急いでますので、ここでのことも他言はしませんので、では…」


グレープは強引に少女の横を通り抜けようとすると女の子が立ちふさがり話しかけてくる


「先ほどは、危ないところを助けていただき、ありがとうございました」


グレープはその言葉に一瞬反応し、足を止めてしまう


「何をおっしゃってるのかわかりませんが、とにかく先を急ぎますので!」


そんなタイミングの時にハルが目を覚ましてしまう


「ぅう・・ うるさいのです。お姉ちゃんハルおしっこ行くの」


ハルは背中から降りて森の方に歩いて行く


はぁ・・なんで、またこのややこしいタイミングで起きるのよ


「少し失礼します」


私はハルを追いかけ森の中に行く


「ハルちゃん大事なことだからちゃんと聞いてね」


「はい…なの…」

ハルはトイレを済ませ寝ぼけまなこで話をきいている。


「今から、人が大勢いる場所に戻るけど、絶対あの人たちとしゃべるのはダメいい、わかった?」


「ほぇ?どうしてなの?」


グレープは、丁寧に教え諭すように話す。


「ハルちゃん大事な事だからよく聞いてね!

ハルちゃんは、今から戻るところ偉い人達がいるのね。

だからお姉ちゃんの言う事聞いて、ちゃんと行動してほしいの。

でないと今見たいに自由に行動できなくなるわよ。

買い物する、それダメ、魔法使う、それもダメ、遊び行くもダメ!

これを倒しなさいってなって、たぶん自由はなくなると思うの、それでもいいの?」


ハルは、少し震えながらはなす。


「そんなの嫌なの、その人達って偉い人?また道具でハルを縛ってくるの?」


そう言ったとたんに、急に激しく震えだすハル


ガクガクガク…


「ハルちゃん、どうしたの?」


「ハルもうあんな怖いの嫌なの…グスン 嫌ぁー ぅぅ… グスン」


何この異常なまでの震えようは…


「ハルちゃん?怖いって」


いったいこの子何があったの?

この怯え方、よほどのことがあったんだ


「ハルちゃん、戻っても何もしゃべったりしたければ、大丈夫だから、また眠っててもいいのよ」


「怖いの嫌なのグスン… また眠るでもお腹すいたの」


ハルはバッグから何か出そうとする


「ハルちゃん!それやると確実に連れていかれるから!バッグは絶対触ったらダメよ!」


ハルは叱られたことに驚きまたぐずりだす


「ぅわーんどうしたらいいのー グスン…グスン」


私はハルちゃんを抱き締めあやす


「お姉ちゃんに任せて、ちゃんと言う通りにしたら大丈夫だから、もう叱ったりしないから」


「わかっ グスン たの グスン」


ハルちゃんは、私に抱きついたまま離れようとしない


仕方なくこのまま連れて行くことにした。


『どうか何も起こりませんように…』


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