さよならベイベー

きっともう帰れないだろう

車内に響く90年代の音を奏でるラジオ

深夜2時の高速道路は真っ暗で

皆、焦るようにアクセルを踏み込む


オレンジ色のUFOがキラリと光る

「スピード落とせ」の電光掲示板

座り慣れた運転席に深く腰かけ

瓶に閉じ込められた眠りを服用する


だんだんと意識が遠のいていく

あの人の影が見える

こんな俺をここまで育ててくれた人

いつでも無理にでも笑ってくれた人


どんどんと意識が枯れ果てていく

あの日の君の横顔が見える

ここまで俺を連れてきてくれた人

最後の最後まで愛し続けてくれた人


ズルズルと体がずり下がる

あの時の笑顔が見える

僕らの間に訪れた幸せの象徴

例えそれが一瞬だったとしても


アクセルが沈み込み

誰よりも速くなっていく

景色が歪んで光はのびて

背後へ消えていく


90年代のR&Bが流れているのが聞こえる

ハンドルを持つ手が離れる

もう目は開けていられない

懐かしい思い出に沈む

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