第85話 3P両論
入院生活も残りあと一日。
弓花は毎日来てくれたし、華菜も部活終わりの短い時間であっても毎日お見舞いに来てくれた。
だから寂しさも無ければ不自由なこともなかった。
振り返るとあっという間だったな。
「あっ、お姉ちゃんまだ来てないんだ」
俺のいる病室へ入ってきた華菜。
「今日は早いな」
「部活休みだった」
放課後になってそのまま来てくれたみたいだ。
いつもは弓花の方が先に来ていたので華菜と二人きりになることはなかったが、今日は弓花が来るまで二人きりだ。
「調子はどうだ?」
「あたしは元気だよ。むしろ、それを言うのはあたしの方じゃん」
嬉しそうに腕へ抱き着いてくる華菜。
「お兄ちゃん大好きだよ~」
俺が死にかけてから素直に愛情表現をするようになった華菜。
弓花の前でも何も気にせず俺に大好きと言っていた。
「ちゃんと家族として大好きって言わないと、周りに勘違いされるぞ」
「いや、ガチ中のガチ」
「ガチなんかい」
嫌われるよりかは好かれる方が良いに決まっている。
だから、この状況も良いに決まっている。
「最近ね、妹ヒロインが出てくる漫画とかアニメとかめっちゃ見てるの」
「そういうのって実の妹からしたら、気持ち悪くなったりしないのか?」
「ぜんぜん。共感できるところもあるし」
妹ヒロインは一定の人気を得ている定番のヒロインだ。
俺もそういう作品はけっこう好きだ。みんな総じて可愛いしな。
「でもさ、結局は結ばれなかったり、中途半端に作品が終わって最後まで描かれなかったりとか、不完全燃焼が多いんだよね」
「倫理的に反している関係だからな。その先は描けないから読者の想像でお楽しみくださいって感じだろ」
「それがまじで嫌なの。リアルでは体験できないからこそ、先を見せてよってなる」
その気持ちはわからなくもないが、俺に言われても困るっての。
「だからさ、そういったことがフィクションでも味わえないなら、もうリアルで味わうしかないのかなと思って」
ベッドで寝ている俺の上に馬乗りになって頬へキスしてくる華菜
「おいおい待ってくれ」
抵抗しようと身体を動かすが、抑えられてしまう。
「駄目だよ、ちゃんと安静にしてないと」
華菜も弓花の妹なだけあって、強引なところがある。
そして俺もきっと二人に似ている。
今の華菜の様に好きな気持ちを止められなくなるかもしれない。
「ちょっと、何してるのよ」
「あっ、お姉ちゃん」
病室へ入ってきた弓花。ナイスなタイミングで来てくれた。
もう少し遅かったら、華菜に好き放題されるところだったな。
「俺は悪くない。悪いのはこの世の中だ」
「別に怒っていないわよ。華菜ちゃん以外の女だったら怒ってたけど」
俺の頭を優しく撫でてくる弓花。
妹とはいえイチャイチャしていると怒られてしまうと思ったが、寛容な心を見せてくれた。
「お姉ちゃんとは友好条約を結んでるの」
「いつの間に」
華菜は弓花に抱き着くと、弓花も嬉しそうに抱き返している。
「友好国とはパートナーシップを結ぶのが基本でしょ。それでお互いに利益が生まれるように協力する。色んな意味でズブズブの関係ということね」
「例えの規模が大き過ぎるって」
仲が良いことに越したことはないが、どんな約束を結んでいるのかが気になるな。
「これは、咲矢にとっても悪いことではないわよ」
「そうなのか?」
「咲矢がより強い刺激を求める時は、三人ですることもできるようになったから」
「……ふむ」
三人で何をするかはあえて聞かないでおこう。
その時がいつ来てもいいように、体力をつけておかないとな。
「その時はあたしが右のポジションってのも決まってるんだよね」
「何でもうポジションを決めてんだよ」
華菜はにししと笑いながら、自分のポジションを宣言してくる。
「ちなみに私がディフェンスで華菜ちゃんがオフェンスよ」
「作戦まで練ってあるのかよ」
俺もされるがままは嫌なので、今の内に試合を想定して作戦を立てておこう。
試合では攻守の切り替えの早さが大事だとグアルディオラ監督も言っていた。
相手の攻めを守って受けきったら、素早く攻めてカウンターしないとな。
「三人でするスマブラが楽しみね。咲矢強いから、華菜ちゃんと協力してボコボコにしないと」
「スマブラの話かよっ!?」
いやいや、まさかゲームの話だとは思っていなかった。
思わせぶりなこと言いやがって!
変な勘違いしちゃったじゃねーか!
「いったい何だと思っていたのよ」
「大乱交かと思っていたら大乱闘だった」
「……あなたはいったい何を言っているの?」
弓花が俺の発言を聞いて困惑している。
困惑したいのは俺だっての!
「まったく、お兄ちゃんってば困った人だね」
「そうね、こんなお兄ちゃんはちゃんと躾しないと」
ベッドで寝ている俺を見下してくる華菜と弓花。
いつの間にか先ほどの宣言通り、華菜が右に弓花が左のポジションを取っている。
「お、おい、何をするつもりだ」
「病院ではお静かに」
弓花にアイマスクをつけられてしまい、視界が真っ暗になる。
「待ってくれ、怖いって」
「安心して。ちょっと早い退院祝いよ」
その後に何が起きたのかは、俺にはわからない。
何も見えなかったし、何も知らされることはなかった。
ただ、二人の手や口でたっぷり躾を受け、立派な男になったことは確かだ。
最高の退院祝いだったということは、身体が実感しているようだ――
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