第51話 カルピス
夕食のパスタを食べ終え、俺と弓花は肩を寄せ合ってソファーに座る。
「今日も何かしたいことがあるのか弓花?」
華菜は明日帰ってくるので、今日も弓花と二人きり。
弓花には俺としたいことがたくさんあるに違いない。
「……あるけど。今日はいい」
「何でだよ。体調はもう悪そうには見えないが……」
「咲矢、咲矢のしたいことをして」
弓花は真っ直ぐに俺を見つめる。
「お、俺?」
「ええ。いつも私の我儘を押しつけているから、今日は咲矢のしたいことでいい。咲矢が私としたいこと、何でもしてあげるから」
弓花のような素敵な女性からそんなことを言われてしまえば、世の男子は何かが湧き上がること間違いなしだろう。
もちろん、俺も男なのであんなことやこんなこととか、あれをあれしてもらってあーしたいとか、あそことあそこをああして激しくあーしたいとか、ああああああになってしまうのだが。
だが、弓花は俺の大切な人なので、傷つけないために何でもかんでもやってくれと言うわけにはいかない。
「したいことって言われてもな……」
「何も無いの?」
弓花は非常に悲しそうな表情を見せる。
「二億くらいあるよ。どれにしようか悩んでるだけ。選択肢二億個あるから」
「もぅ、咲矢ってば」
嬉しそうに腕へ抱き着いてくる弓花。
幸せ過ぎて思わず顔がにやけてしまったよ。
「何だろう……俺の好きなところ十個言ってとか?」
「……意外と咲矢って乙女チックなとこあるわよね。私と咲矢の要求って普通、逆になるのよ」
弓花は俺の要求を聞いて少し戸惑っている。
「それに、せっかく二人きりなんだから二人きりでしかできないことにしてよね。咲矢の好きなところ言うなんて、いつでもどこでもできるのに」
「た、確かにな。じゃあ、今は言ってくれないのか?」
「言う。ちゃんと言う」
文句は言われたが、言ってはくれるみたいだ。
「まず私のことが大好きなとこ。カッコイイし可愛いとこもある。いつも私のこと考えてくれてるとこ。私を大切にしてくれてて、関係を守るために頑張ってるとこ。声も好きだし、言葉のチョイスも好き。意外とエッチなとこも好きだし、私が抱き着くと優しく抱き返してくれるところも好きで、家族思いのとこも良い。匂いも最高ね」
考える時間もなく好きなところを言い続けた弓花。
俺が思う弓花の好きなところとほとんど同じだったのが面白かったな。
「あと八千くらいあるけど聞く?」
「もうお腹いっぱいだよ。ありがと」
時間あればいつまでも続けそうな雰囲気だったので終わらせた。
「じゃあ次のやりたいことは?」
「……何か前にSNSでたわわチャレンジっていうのが話題になってたんだよ」
「何よそれ? 私のたわわな胸で咲矢を気持ち良くさせればいいの?」
「そう、その弓花のたわわな胸で俺を天国に連れてって……じゃなくて、これだよ」
俺はスマホで検索してでてきた事例を弓花に見せる。
「あーあったわね、胸の上にスマホを乗っけられるかってやつ。ちょっと前には飲み物を乗っけて飲めるかってやつも流行ってたわよ」
「俺は弓花の大きな胸を見るたびに、色んな物を置きたくなる衝動に駆られていたんだ」
「本当にしょうもないことを考えているわね咲矢は。まっ、その子供みたいな純粋さが好きなのだけど」
「駄目かな?」
「良いに決まっているじゃない。咲矢なら私の胸は好きに使っていいわ。他の女とは違うのよってとこをあなたに見せてあげるわ」
弓花から快諾を得られたので、俺は冷蔵庫から飲み物を取り出すことに。
偶然カルピスが冷蔵庫にあったので、コップに注いで水で割ることに。
俺は濃い味の方が好きなのでカルピスの原液は多めにしている。カルピスを選んだのは偶然だからな。
「じゃあ、置かせてもらいます」
「無駄に緊張するわね」
弓花は両手で胸を寄せて大きな谷間を作っている。
部屋着のシャツを着ているので万が一こぼれてしまっても大事にはならない。
俺は弓花の胸の上にコップを乗せる。
コップは落ちることなく、安定して胸の上に佇んでいる。
俺もスモールライトで小さくなって、あの柔らかそうな場所で横になりたいものだ。
「おおぉ、やっぱり弓花の胸は凄いな」
「でしょ? 私の胸、好きになった?」
「大好きです。いつもお世話になっております」
チャレンジは見事に成功した。
弓花の胸の大きさは本物だということが証明された。
「でもちょっと不安なのよね」
「何がだ?」
「胸って好きな人に揉まれると大きくなるって言うじゃない? これ以上大きくなったら、流石に困るかも……」
「頑張って触る日が来ないように我慢するから」
「咲矢にはたくさん触って欲しいから、我慢してほしくない。我慢するのは私の方ね」
贅沢過ぎる悩みだなおい。
貧乳でお悩みの方がいたらキレられるぞこれ。
「あっ、冷たっ」
油断していたのか、身体を少し動かしてしまった弓花。
胸の上に乗せていたコップは倒れて、カルピスが弓花の胸にぶちまけられてしまう。
白い液体が胸にかかってしまいお困りな状況だ。
これは……何かちょっとエッチに見えてしまうな。
「ちょっと、股間押さえてないで拭くやつ持ってきてよ」
「頭の中整理しないと動けない」
「もー何考えてんだか、バカ咲矢は……」
俺は切り替えて近くのテーブルにあったティッシュ箱を取る。
弓花が動くとさらにこぼれてしまうので、俺がそっと拭くことに。
何だよこれ……拭く作業もエッチ過ぎんだろボケが。
「谷間にカルピスが溜まっているわ。もったいないし、口つけて飲んでもいいわよ」
「それは、おい……どーすればいいんだよ」
不意に訪れた、めっちゃエッチなお誘い。
それはエッチ過ぎて駄目なやつだ。本当に駄目なやつ。
ここで自分の欲望に勝てないと終わりだ。
「こんな機会、今日だけよ」
カルピスがもったいないから飲むべきだろ俺。
いやいや谷間に口つけるとか、それはもう変態の域だろ。
「胸を寄せ続けているのもキツイから早く決めてもらえるかしら?」
俺は変態じゃない。谷間に溜まったカルピスなんか飲まない。
俺は今まで真面目に誠実に生きて、道を踏み外さずにここまでやってきたつもりだ。
こんなところで積み重ねてきたものを一瞬で失うわけにはいかない。
大丈夫、きっと俺の理性が助けてくれる――
……
…………
………………
「どう?」
「おいちいです」
初めまして、ぼく変態です――
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