第48話 生温い朝
どんな夢かは詳細に覚えていないが、めっちゃエッチな夢を見ていた気がした――
「おはよう」
俺が目を開けると、弓花は俺の腕に抱き着いていた。
「起きてたのか?」
「ええ。ぜんぜん寝れなかったの」
「俺と一緒に寝るのが心地良くなかったのか?」
「違うわ。目の前に咲矢がいて、自分を律するのに体力を使ってたのよ」
その言葉に嘘はなく、弓花は疲れ切った顔をしている。
「せっかく二人で寝るのだもの、その時間を楽しみたいと思ってたら朝になっていたわ」
「そうか。寝不足なら、今日は色々と気をつけて行動しろよ」
「わかっているわ。心配してくれてありがとう」
弓花は俺に身体を寄せてくる。
朝から大好きな人と一緒なんて最高な気分だ。
俺はベッドから立ち上がると、弓花はベッドのシーツを外し始めた。
「何してるんだ?」
「……たぶん、けっこう汚しちゃったから洗う」
「漏らしたのか?」
「そんなことはしてないわよ。色々と昨日の夜は大変だったの。あなたは可愛い顔して寝ているだけだったけど」
そう言いつつ、弓花はどこか気恥ずかしそうにシーツを持って立ち上がる。
ふらふらとしていて、今にも倒れてしまいそうだった。
「大丈夫か?」
「シャワー浴びて色々とスッキリしてくるわ」
そのまま部屋を出て行った弓花。
珍しく朝からシャワーを浴びるようだ。
弓花がお風呂場へ入った後に、洗面所で顔を洗うことに。
洗濯機の上には弓花が脱ぎ捨てたパジャマや下着が置かれていた。
別に俺は変態ではないのだが、その下着を手に取った。
黒いレースの下着がエロ過ぎるので仕方なく手に取った形であり、決して俺は変態ということではない。
少し生温かい下着に少し興奮してしまうが、別に俺はとりわけ変態というわけではない。
もしも俺が本物の変態ならば頭に被ったり匂いを嗅いだりするのだろうが、俺は変態ではないので手に持って少し顔に近づけるだけだ。
「何やっているのかしら?」
お風呂場の扉を開けて俺に問いかけてくる弓花。
別に俺はやましいことをしているわけではないので、慌てることはない。
「別に俺は変態ではないから、ただ弓花の下着を手に取っただけだ」
「人の脱いだ下着を手に取って顔に近づけている時点で変態さんだと思うのだけど」
「それは誤解だ。それに、こんなエッチな下着を普段から履いている弓花が原因だと思われる」
「あなたが黒い下着が好きということを知っていて、あなたが喜ぶと思って履いているのよ」
別に俺は下着の色一つで喜ぶような変態ではない。
ちょっとテンションが上がるだけだ。
「まぁ見なかったことにするから安心して。まだ五分ぐらいシャワー浴びてるから、その間は嗅ぐなり舐めるなり好きにしたらいいわ」
「俺を変態みたいに扱うな」
「そうなの? 私は咲矢がお風呂に入っている時に、咲矢の下着を自分の……」
「自分の?」
「内緒にしておきましょうか。変態じゃないと言うのなら教えない方が良さそうね」
「ぼくへんたいです」
俺の言葉が届く前に弓花は扉を閉めてしまった。
くそっ、俺の下着を使って何していたのか聞きたかったのに!
▲
シャワーを浴び終えた弓花はリビングのソファーでテレビを見ながらボーっとしている。
俺は既に着替え終えていて、準備は終えている状況だ。
「あんまりのんびりしていると遅刻するぞ」
「……そうね」
弓花は立ち上がると、そのまま立ちくらみを起こして倒れそうになるので俺は慌てて支えた。
「あ、ありがとう咲矢」
「おいおい、大丈夫か?」
弓花の額に手を当てるが、熱は無いようだ。
むしろ、冷え切っている。
「今日は学校を休め。俺も一緒に休むから」
俺の言葉に弓花は戸惑っている。
自分でもどうしようか悩んでいるみたいだ。
「……ちょっと今日は休むのがいいかもしれない。でも、咲矢は学校に行って」
「いや、俺は傍にいる」
「それは駄目。咲矢と私は付き合っていることを宣言しちゃったから、一緒に休むと色々と言われる。だから咲矢は学校に行って」
「誰かに何を言われるよりも、弓花が心配だ」
「気持ちは嬉しいけど、咲矢と一緒にいると休まらない。私の頭の中は咲矢でいっぱいになってて溢れてるの。ちょっと冷静になりたい」
「……そういうことなら学校行くよ」
昨日は二人きりで過ごしたため、弓花には刺激が強過ぎたようだ。
半日くらいは距離を置いた方が良さそうだな。
「体調がより悪くなったらすぐに連絡してくれ。早退してでも帰るから」
「ええ、ありがとう。あなたの帰りを待っているわ」
弓花との相談を終えた俺は、弓花をお姫様抱っこのように抱きかかえる。
「ちょ、ちょっと」
「弓花の部屋のベッドに連れてく。今はちょっと寝た方がいい」
「……ありがとう。大好き」
弓花を部屋まで運び終えベッドに寝かせる。
そのまま去ろうとするが、弓花に腕を掴まれる。
「どうした?」
「離れてても、ずっと私のこと考えててね」
「もちろんだ。というか弓花と出会ってから、ずっと弓花のことしか考えてない」
「私もよ。恋は盲目というやつね」
弓花は嬉しそうにする。
その表情を見て、俺も嬉しくなる。
俺は時間ぎりぎりまで弓花の傍で寄り添っていた。
やがて目を閉じて眠りについたので、相当眠かったようだ。
一人で学校に行くのは久しぶりだな――
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