第41話 ニューワールドオーダー
帰りのホームルームが終了し廊下に出ると、弓花は俺の隣を歩く。
付き合っていることが公表されたので、もう距離を空ける必要は無くクラスメイトはこの後デートなのかなと羨ましそうな目で見ていた。
「遅い、早く歩いて」
「慌てるな転ぶぞ」
「子供扱いしないで」
早く家に帰りたい弓花は早歩きで進む。
そういう俺も早く家に帰りたいのだが。
「身体が熱い」
「興奮し過ぎだろ」
「頭の中はもうめちゃくちゃよ」
顔を赤くして下を向く弓花。
いったい何を考えているのだか……
▲
「ようやく着いたわね……」
学校を出て十分も経っていないが、体感時間は一時間ほどにも感じた。
それは弓花も同じのようで、息を切らしている。
「ベッドに行くか、ベッドインするか、ベッドで遊ぶか、どれがいい?」
「全部ベッドじゃねーか!?」
ごはんとかお風呂とかの選択肢はなく、全てがベッド。
もうやる気満々のようだ。
「とりあえず水でも飲もう」
俺はコップを持って、冷蔵庫から取り出した水を入れてソファーに座る。
すると弓花は俺の膝の上を跨ぐように座った。
密着する弓花と俺の身体。
弓花の誘惑に俺の我慢ポイントが削られていく。
「あら、コップ一つだけなんて」
「一緒に飲めばいいだろ。洗い物が増えるだけだし」
「なんだ……口移しでもされたいのかと思ったけど」
何故かがっかりしている弓花。
キスもしてないの口移しなんてしたらあかんだろ……してみたいけど。
俺が一口水を飲んでからコップを弓花に渡す。
弓花には水を飲んで冷静になってもらいたい。
「あっ」
体制がキツかったので膝を動かしたのだが、弓花は甘い声を出して手を滑らせ水を自分に零してしまう。
「ごめん」
どうやら膝を動かしたことで、上に乗っていた弓花を刺激してしまったらしい。
「もーびしょびしょじゃない」
弓花は何故か嬉しそうにしている。
そして、ブレザーを脱ぎ、その下の濡れたブラウスも目の前で脱ごうとする。
俺は目を閉じて視界を封じることに。
自分のミスだが、弓花に服を脱ぐ理由を作ってしまった。
「見なくていいの?」
「見たら終わる気がする」
弓花は脱いだブラウスを俺の顔に被せてくる。
弓花の匂いが染み付いていて、凄く心地が良い状況だ。
「何するんだ」
「その状況なら目を開けていても私にバレないわよ」
「開けねーよ」
弓花の誘惑に負けて目を開けると、うっすらとだがブラウス越しに弓花の下着姿が見えた。
エロ過ぎるだろコラ。
「着替え持ってくるから、どこかに掛けて干しておいて」
どうやら弓花はちゃんと着替えてきてくれるようだな。
このまま下着姿でいられたら俺も終わっていたからありがたい。
「何でまだ私のブラウスを被っているのよ」
部屋着に着替えた弓花が戻ってきたようだが、俺は一歩も動いていなかった。
「これ取れない」
「取れるわよ」
心地良すぎて自分の意思では取れなかったブラウスを弓花は一瞬で取ってしまった。
「弓花よ、残念だがここから先は行動を制限させてもらう」
「無理」
「家で俺に触れることを一切禁じる」
「寝言は私と寝て言いなさい」
弓花は俺の言葉を無視して、腕に抱き着いてくる。
「俺は本気だ。約束が守れないのなら、俺はこの家を出て行く」
心を鬼にしなければこの修羅場は乗り切れられない。
俺と弓花の関係を守るためにも、攻めに出させてもらう。
「……それは困るわね。だが、一方的な要求は受け入れられないわ」
「弓花の気持ちも理解できる。そこで、この五つの紙を渡す」
「これは?」
「その紙に俺としたいことを書いていい。それに俺は絶対従わなければならない。だが、紙に書いた要求以外で俺に接触することを禁ずる」
ルールを作らなければこの家は無法地帯となる。
それを阻止するために、俺はこの家に新しい秩序をもたらす。
「あなた正気? 私にとっては天国だけど」
「俺に拒否権を三回設けることにする。その拒否権は絶対であり、ルールを破れば俺は家を出ていく」
「……なるほどね。あなたにも守りの手を作ると」
「そういうことだ。ちなみに複数の紙に同じ要求を書くのは禁止な。全て同じ要求にされれば、拒否できなくなる」
「そんなズルはしないわ。でも、一方的に決めたルールは私に不利が生じる」
「ただでは受け入れてくれないか」
「ええ。私が要求するのは、あなたの拒否権を二回にすること」
「そうきたか……」
俺の拒否権を減らして、自分の要求を多く満たそうとする弓花。
だが、それは想定済み。
その要求は検討に入れており、あえて二回を三回に盛って話を進めていた。
「その方がスリルがあって楽しいじゃない?」
「なら、それで決まりだな。これ以上、ルールへの口出しは認めない」
「構わないわ。それに良い提案だと思う。秩序が無ければ私も暴走してしまうでしょうし、ただ禁止にするのではなくゲーム性にすれば楽しめると思う」
弓花は俺の要求を受け入れてくれる。
弓花の性格は理解しているので、拒否する未来は考えもしなかった。
そして、俺と弓花の人生を賭けたライン際の攻防が始まろとしていた――
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