第12話 黒い下着
「眠い……」
朝起きたのに、俺は眠いと口にしてしまった。
昨日の夜はあまり眠れなかった。
恥ずかしい話だが、ずっと弓花のことを考えてしまっていた。
隣の部屋で寝ている弓花はどんな寝顔をしているのだろうとか……
いや、我ながら気持ち悪いな。
それもこれも、昨日の夜に弓花を抱きしめるトラブルがあったからだ。
あんなに密着したら意識しない方が無理だろう。
「ふぁ~」
部屋を出ると大きく口を開けて欠伸をしている弓花と目が合った。
「おはよう」
欠伸を見られたのが恥ずかしかったのか、慌てて下を向いたぼざぼさ髪の弓花。
「寝不足なのか?」
「ええ。昨日は何だか眠れなかったの……」
「何かあったのか?」
俺の問いを聞いた弓花は、頬を赤らめて俺を睨んできた。
まるであなたのせいよと言わんばかりに。
結局、弓花は何も答えなかったが、俺は心のどこかで少し喜びを得ていた。
弓花も俺と同様に眠れなかったってことは、同じ気持ちを抱いていたかもしれないと……
「咲矢ごめん、洗濯物干しといて!」
朝から慌てている母親。
急いで会社に行かなければならなくなったのか、俺に洗濯物を渡してくる。
俺は時間に余裕があるので、そのままベランダに洗濯物を干すことに。
洗濯自体を任されることもあるので、今さら妹の衣服や下着を干すことに抵抗は無い。
今まで何度も見てきた光景だしな。
だが、予想外の事態が発生した。明らかに大き過ぎるブラジャーの存在。
……これは絶対に弓花のやつだ。
あいつはいったい何カップなんだよと思いながら、その大きな黒いブラジャーを干す。
あまり余計なこと考えると、弓花に失礼だな。
そのまま黒いショーツも干すが、これに弓花の……
俺は自分を律するために壁に頭を叩きつけた。
次からは洗濯物は弓花に任せることにしよう。
これはちょっと刺激が強すぎる――
▲
「弓花、今日も一緒に学校行くか?」
俺は登校する時間になり、弓花へ一緒に学校に行くか確認することに。
「…………行く」
「やけに間があったな。無理しなくてもいいんだぞ」
「別に無理してないわ」
長い黒い髪を弄りながら無理してないと告げる弓花。
「じゃあ行くぞ」
「ええ。学校近くになったら自然と距離空けるから」
弓花と一緒に家を出て、学校へと向かうことに。
「そういえば昨日、咲矢の部屋に行った時に本棚見て気づいたのだけど、けっこう本を読むのね」
「そうだな。本も読むし漫画も読む」
「私が好きな本もいくつかあったわ。漫画のハンドゥー×ハンドゥーとか」
「流石は双子、本の趣味も一緒か」
「ええ。読んだことのない本とかもあったから、今度借りていいかしら?」
「いいに決まってるだろ。むしろ俺が好きな本を読んでくれるのは嬉しくもある。感想を言い合える相手がいないからな」
「わかるわそれ、自分の好きなものを理解されるのって嬉しいわよね」
微笑みを見せる弓花。
無愛想とはいえ、俺の前では少し表情が柔らかくなったというか自然になっている気がする。
「そう考えると、私達の相性って最強じゃないかしら? 同じものを好きになって共感できて、共用もできて、理解し合えるなんて」
「一卵性双生児……悪くないな」
「そうね、悪くない。むしろ良い」
互いを受け入れている状況に嬉しくなる。
思わず弓花に触れてみたくなったが、ぐっとこらえる。
そんな弓花は下を向きながら、俺の服の裾を掴んでくる。
「ど、どうした?」
「別にっ、ただ、その……」
慌てて俺から手を放す弓花。
その顔は真っ赤になっていた。
まさか弓花から触れてくるとは……
おかげで心がめっちゃ満たされたぞ。
でも、少し胸騒ぎがするな――
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