第2話 再会
「遂にこの日がやって来たねお兄ちゃん」
「だな。衝撃の家族会議から二日しか経ってないけど、遂にという感覚ではある」
母が駅まで俺の双子である
そろそろ帰ってくる時間なので、俺と
「お姉ちゃんと仲良くできるかな?」
「一卵性双生児ということは俺と似ているということだ。俺と仲良くできているということは、お姉ちゃんとも仲良くできるとは思うが……」
「お兄ちゃんみたいなお姉ちゃんとか想像できないけど。無愛想で目つき悪くて髪の毛ぼさぼさで……ちょっと吐きそうかも」
「悪い所じゃなくて良い所が似ていると考えてくれ」
「人には冷たいけどあたしには優しいとことか、寂しい時に構ってくれるとことか、ちゃんとあたしの話聞いてくれるとことか、何かあったらあたしを絶対に守ってくれそうなとことか? あっ、やばい……」
自分で俺の良い所を挙げておいて、顔を真っ赤にさせている華菜。
父親の出張が多いこともあり、父から華菜の教育はお前に託したと任されていて、華菜のことは過保護になるくらい気を遣っていた。
その結果、シスコンみたいな形になってしまったが華菜が荒れずに育っているので今のところは問題無い。
弓花さんも俺と同様にシスコン気質かもしれないので、華菜とは仲良くなりそうな気もするが、果たして……
「来たっ」
弓花さんを乗せた車が駐車場に入る音が聞こえてくる。
約十五年間、ようやく生き別れていた双子と再会する時が来たか……
自分の人生にとって歴史的な瞬間であり、これからの人生を大きく変えることにもなるかもしれない瞬間でもある。
こんなにドキドキするのは初めてだな……
扉の先から絶望ではなく希望の光をもたらしてくることを祈るしかない。
「……よろしくお願いします」
ドアが開き俺と華菜の姿を見た女性は、小さな声でよろしくお願いしますと頭を下げた。
彼女が岐阜から埼玉まではるばるやって来た俺の双子である
「ども」
俺は慌てて頭を下げる。
もっと気の利いたことを言えればよかったが、出たのは二文字だけ。
愛想良く笑うこともできず、顔を隠すように頭を下げた。
「意外……」
華菜は意外と口にしていた。
弓花さんが華菜の想像していた姿を大きく異なっていたのだろうか……
正直、弓花さんは想像以上に綺麗な人だった。
黒い長い髪が特徴的で、整った顔立ちをしている。
身長も百六十はありそうで、足が長い。白い肌も綺麗で、モデルをやっていると言われても信じてしまえそうな容姿だ。
そして何より胸がでかい。
直視できなかったが、メロンでも服に詰めてんのかってぐらい胸が大きかったぞ。
「お兄ちゃん、早く自己紹介」
「そ、そうだな」
華菜に脇腹を小突かれて自己紹介をせかされる。
弓花さんの姿に衝撃を受けていて、次の行動を考えていられなかった。
「俺は
「……よろしく」
特に笑みを見せることなく、よろしくと一言返してきた弓花さん。
その愛想の無さは皮肉にも俺と似ていると思った。やっぱり双子なんだなと実感する。
「あたしは藤ヶ谷華菜です。中学二年生です。よろしくお願いします」
華菜は礼儀正しく挨拶をした。
その姿を少し優しそうに見ていた弓花さん。
「よろしくね」
華菜にはほんの少しだけ笑みを見せて弓花さん。
だが、俺には伝わる。
あれが全力の挨拶時の笑みなのだと。
「怒ってますか?」
「いや、そんなことは……」
華菜には弓花さんの全力の笑みが不自然に見えたのか、怒っているのかと勘違いしている。
まぁ俺と違って弓花さんは綺麗な女性なので、表情が変わらないと不機嫌にも見えるかもしれない。
弓花さんは否定をしたが、華菜は不安を感じたのか俺の背中に抱き着いてくる。
「華菜、弓花さんを困らせるな。きっと愛想良くできないんだと思う」
「何で知ってるの?」
俺が弓花さんのフォローをすると、弓花さんは驚きながら質問してきた。
「俺も同じだからかな」
「そう……」
興味深そうに俺の全身を舐めるように見てくる弓花さん。
俺ももう少し弓花さんを観察しようと思うが、大きな胸にしか目がいかなかった。
「ほらっ、そんなところで不気味に突っ立ってないで、リビングに行きなよ。今日は弓花ちゃんの歓迎会も兼ねて、美味しい出前注文してるし、もっと明るくね」
遅れて家に入ってきた母親に背中を押される。
もっと明るくしろとは言うが、俺はうぇいうぇいできるタイプではないし、その俺の双子である弓花さんもうぇいうぇいするタイプとは思えない。
きっとこれからも俺達は騒がしくできずに静かなままだと思う。
それを仲悪いとか、馴染めていないと捉えてほしくはないな。
「華菜、雰囲気づくりは任せたぞ」
「責任重大じゃないそれ?」
頼みの綱は妹の華菜だろう。
華菜は俺と違って明るいので、食事や家族団欒の時間も盛り上げてくれるに違いない。
「お兄ちゃんがしっかりしないとね」
俺の腕に抱き着いてくる華菜。
普段はそこまで大胆にボディーコンタクトをしてこないのに、今日はやたらと多いな。
きっと環境が変わることに不安を抱いているのだろう。
俺もこの先どうなることやら、想像がつかなくなってしまったからな――
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