借金と洋服屋
NHKオンラインの初期街はわかりやすい十字路を元に入り組んだ横道が町中に走り様々な建築物が並ぶ街である。
教会やら孤児院、武具屋通りから食事処、様々な施設が備わっており総プレイヤー数も堂々の一位。
その中でも最も有名らしい食事処に来たのだが......。
「うわーん美女割引してくださいよ十割引き!」
「バカ言ってんじゃねぇこのクソアマがっ!警備兵に連れてってもらうからな!」
怒り狂う店長らしき人物。
「いやー!これ以上犯罪値が貯まるとお勤めになっちゃうんですいーやーでーすー!」
泣き叫ぶ亜麻色の髪の女性。
「じゃあ金払えや無銭飲食やろう!」
「うわーん虐めてくる!」
そう、店のカウンターで現在進行形で問題が起きていた。
どうやら亜麻色の髪の女性が無銭飲食したらしく必死に命乞いをしていた。
まるでこじき、哀れ。
だが同情なんて一切できない、なんだ十割引って店潰す気かよ。
どうやら会計が滞ってらしくどうも注文できるような雰囲気ではない。
せっかくゲーム内での食事を楽しみたいと思っていたのにこれでは台無しだ。
「おい浩介、別の店行くか?」
「いや、あの人ってもしや......」
訝しげに観察する浩介。
なんだその思わせぶりな言い方は。
ああ、今思い出した。
あの亜麻色の髪の女性は俺をアクセサリー商人にしたミス変態不審者だ。
確か店長はクビにすると言っていたし金がないのも頷ける。
まあしょうがない、金がないのに食いまくったあの女が悪いのだ。
「鏡花、俺はとてもフェミニストだからちょっと金払ってくるわ」
「......何企んでるんだお前めちゃくちゃ悪い顔してるぞ?」
「こんな紳士に何をいうんだ」
だめだこいつ早くなんとかしないと。
めちゃくちゃ悪い笑みを浮かべている、本当に悪そうな顔をしている。
なんせ笑っているのだ、心の底から笑っていい人そうな顔を浮かべている。
経験則状こいつがこういう顔をするときは誰かを騙して利益を得ようとしている時だ。
「すみません、大丈夫ですか?」
「大丈夫見えるなら眼科に行ってくださいよぉ!警備兵にドナドナされたくないぃぃぃ!!」
露骨に失礼だなこの人。
だが浩介は本当に優しい慈しむような顔で。
「もしよかったらお金貸しますよ。えっと、店長いくらぐらいですか?」
「あ?四万コインぐらいだよ。金もねぇのにめちゃくちゃ食いまくったぞこの娘」
うわぁ、リアル換算でも確か四万、同じと言っていた。
なら四万円って......どれだけ食ったんだ。
「四万コインならありますし、どうぞ。一番下の同意を押してくれればお金を貸せるので」
ーーん?
同意なんて押したか?
いや待て、金を一方的に譲渡できるのに同意?
それに払ってやればいいのになんでわざわざ彼女に?
「ここに神あり!ありがとうございます野菜の人!」
「いえいえ」
迷いなく説明文吹っ飛ばして一番下までスクロールして同意ボタンを押した。
それと同時に金が浩介のところから女へと。
お金を受け取った女性は素早く払って店長にぺっけちとロクでもない発言をしていた。
ーー
「ありがとうございますありがとうございます、いやーお金無いのすっかり忘れてしまってましてね?テヘッ」
「気持ちわるっというかお前何してるんだよこんなところで」
亜麻色の髪の女性ーー俺があの指輪を嵌める要因となった人である。
結果的に俺はアクセサリー商人になってしまったし今の地獄みたいな状況になっている。
ふと浩介の顔を見るとめちゃくちゃ悪い顔をしていた、俺はあの顔に記憶がある。
十中八九ろくなこと考えていない顔だった。警戒しておこう。
まあそんなことがあり無銭飲食でドナドナされずに済んだこの人はあっはっはと爆笑していた。
救う価値ないしそもそもあのまま警備兵に引き渡せばいいのに。
そう思っているのを察したのか浩介はニヒルと笑っていた。
うわ、絶対ろくなこと言わないぞこれ。
「さて、借金しましたがもちろん返済していただけるんでしょうね?
「ーーへ?」
店、先ほどと同じ店の外の席で机に両肘をついて笑う浩介。
間の抜けた顔を浮かべて女は首を傾げた。
「さて、今お貸しした金額は四万コインとなりますが、ゲーム内時間一時間一割の契約となります。ゲーム内での時間進行はリアルの半分二分の一、十二時間で一日なので......リアルでの一時間で一割増加しますよ。もちろん返済いただけますよね?」
「いやいや待ってください!そんな契約!」
ステータスを開き契約一覧とやらを開いた女性は真っ青な顔を浮かべた。
横から覗き込むとそこには確かに四万円と一時間一割の利子が。
借金状態となっており、下の方まで読むとそこには。
《借金返済不可状態》
借金が一千万コインを超えた場合強制的に労働場へと転移します。
借金返済までゲームプレイに制約が出ます、ご了承ください。
うわっ、エグいな。
借金返せなかったら労働場で強制労働ってどこのカ◯ジだよ。
しかも一時間一割って膨大すぎる。
今金銭を一切持たない彼女がこれを返すのは不可能に近いだろう。
「おい浩介、これは流石にやりすぎというか詐欺じゃ?」
「いや、大の大人が同意書をしっかり読まずに詐欺に遭いました!っていうのは話にならないだろ?同意したんだし」
「うわぁ.......」
これを企んでいたのか......
「まあ俺もそこまで鬼じゃないし、洋服屋である貴女ーーマリエさんが一つエンチャント済みの防具を作ってくれれば借金はチャラでいいですよ」
「洋服屋?」
「ああ、この人、マリエさんって一部界隈で有名で騙されて莫大な借金させられて店が潰れて失踪した人なんだ。ただ腕は一流でゲーム内でも一二を争うレベル。今でもこの人が作った防具......というか女性向けのドレスは莫大な金額で取引される」
「変態じゃなかったんですか!?」
振り返ると同時にマリエさんに思いっきり抱きしめられる。
胸はないが、やはり女性であり多少の膨らみ、窒息などしないがそれでも異性、大人の女性の胸に顔を埋める異常事態に脳が処理を止め顔が赤くなってしまう。
良い匂いがする、ゲーム内のはずなのにめちゃくちゃ良い匂いするし柔らかい。
ふっくらしてるし、うん、ヤバイ、控えめに言ってヤバイ。
残念な感じの人だが顔は整ってるし体型もスレンダーと言える。
「いやーやっぱ幼女可愛いですねぇぐへへへ」
「変態じゃないですかっ!?離してくださいよ!」
「あーもうそんなすりすりされたら抱きしめたくなっちゃうじゃないですかー!」
だめだこの変態早くなんとかしないと。
浩介に助けを求めるように視線を送るがふいっと目を逸らしやがった。
両腕で力一杯抱きしめられてるせいで抜け出せない、幼女の体じゃ抵抗できないし。
「それで作ってくれますかね?そいつようなんですけど」
「お安い御用ですよ!採寸やらなんやらが楽しみすぎて今から大興奮ですねぐへへ」
「浩介ぇぇ!!」
「あーもう動いちゃだめですよ、本当にお持ち帰りしたい.......」
結局しばらく離してくれなかったし浩介はニヤニヤと笑いながら眺めていた。
あとで絶対に締める、思いっきり絞め技をかけてやらねば。
助けろって話、いやでも幸せ空間なのだが年頃の男には辛い、待てよこれは男らしいということではーー?
「鏡花、多分そろそろ強化終わってるだろうし戻って受け取ろうぜ。あと町の近郊でブルーウルフを倒せるかの検証だ!」
「その前に助けてくれー!」
いやでもこれは男らしいのかもしれないうんだって男の反応だし、そう男として女性に欲情するのは正常であるし男らしいうん、このままでも良いかもしれない。
「あら、可愛らしい姉妹ね」
よし絶対に離れよう。
通りすがりの人の視線が恥ずかしい、そう思い必死に暴れた。
NHKオンライン〜筋力値ゼロで職業アクセサリー商人デバフ特化男の娘ショタの俺がPKの魔王になるまで〜 @Kitune13
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。NHKオンライン〜筋力値ゼロで職業アクセサリー商人デバフ特化男の娘ショタの俺がPKの魔王になるまで〜の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます