第3話〜装備選択〜

がっしりと構えた武具屋が立ち並ぶ装備街とやらに案内され辺りを見回す。

どの店も味があるし言うならばレストランが立ち並ぶレストラン街のようだ。

ぶっちゃけ良し悪しなんてわけわからないし経験上こういうゲームにおいてゴツい武器が中級ぐらいの強さで簡素な作りだけど色合いが凝ってるのが最強武器説。

どれがどうとかわからないし、ぶっちゃけ友人に装備構成相談するつもりだったからこんなに早く装備を買いに来る予定なんてなかった。


だがまぁ金を十万放り込んだこの騎士に免じて相談しようとおもった。

この幼女の体はとてつもなく面倒で仕方がない、なんせ走ってもそこまで距離行けないし疲れやすい、その上背が低いし他のプレイヤーに踏まれそうになる。


なので。


「うん、やっぱり視界が高い方が良いよなー」


騎士の髪の毛を引っ張ってしっかりと体を肩の上に固定する。

おそらく側から見れば愛くるしい(不名誉)兄妹が肩車している状況なのだろうが実際は違う。

もし自分が巨漢のキャラになっていたらこれぐらいの視界だったのだろう虚しい。


「そういえば君はリアルで弓道経験とか剣道の経験とかは?」


「一切無いな。あるとしたら逃げる経験だな、うん」


「逃げる?」


「ああ、そうだ、逃げるなんだよ.......後は気配を感知するとか......」


リアルで散々めちゃくちゃストーカーやらなんやらに追いかけられまくった結果なんとなく誰かが見てる事が若干わかるようになってしまった。

言うならば鼻の上が痛くなると言うか、そう言う感じ。

ものすごく使えないし使う機会もないのが普通なのだが......病みそう。


「それはそうとこのゲームって職業とかってあるのか?」


「本当に知らないんだな......このゲームにおいて職業は言わば趣味だ。俺みたいにギルドに所属して町の管理として騎士やってる人間もいるし家にこもって穀潰しをしてる人もいる。あとはこうやって店を開いてる生産職の人達ぐらいだな」


「ほーん、じゃあ俺は特に気にしなくて良いんだな?」


「まあ最初の方はそうだな。あっでも絶対にアクセサリー商人は選ぶない方が良いよ。アクセサリー類の装備スロットは増えるんだけど.......」


「増えるんだけど?」


なんかものすごく意味深な言い方だ。

アクセサリー商人って商人との違いはなんだよと突っ込みたいがそもそも商人があるかどうか知らんしどうでもいい。

乾いた笑いを浮かべながら男は。


「武器が持てなくなる」


「はい?」


「いや、この職業はネタ職業で知られててアクセサリー類を多種類装備できるんだが武器が持てなくなる上に攻撃力がゼロになる」


「えぇ.......なんだそのネタ職業」


剣と魔法で生存を懸けて第二の人生を歩むNHKオンライン!

冒険に繰り出し君の夢を叶えよう!

モンスターを倒してレベルアップ、君もステータスが上昇するぞ!

と言うキャッチコピーのゲームで武器の装備不可とかどんなネタ職業だよ。

しかも攻撃力ゼロってクソすぎるだろう。


「まあ運営の遊び心だろう。唯一の利点がアクセサリー系のドロップ率が高くなる」


「ああ、一時的に選ぶやつか?」


「選ぶ人間もいるが確率が上がると言ってもなぁ......」


「?どうした?」


髪の毛を引っ張るとイテテと笑いながら言った。


「このゲームドロップ確率が結構シビアで今人気のDestiny Grand Orderってあるだろ?あれの星五が出るガチャ確率並みなんだ」


Destiny Grand Order 略してDGO、大人気ゲームで歴史上活躍できなかった英傑を活躍させて大人気にするため歴史オタクがタイムスリップするゲームだ。

それでストーリーを選択するためにそのキャラを手に入れなければいけないのだが、ガチャを回さなきゃキャラは出ない。

ガチャの確率は沼と呼ばれるほどでオタク魂を消費して十連を回しまくっても出ないことの方が多いそうだ。

確か0.2%とか。


「いやオンラインゲームでそれって結構クソでは?」


「まあ確率バフで運営曰く確率が二倍になるらしいけど些細なものだよ。それにアクセサリーなんて一部の有用なやつを除いて敵キャラが使う弱いスキルが使えるようになるとかそう言うのだけだし。剣とか魔法で倒した方が早いし簡単なんだ」


「そりゃあ誰も要らんわな......」


「ああ、僕の知り合いにもアクセサリー商人を選んだ人間は一人もいないしね。多分アクセサリー商人を選ぶ人なんてアクセサリーのドロップ率より低いんじゃ無いかな」


「あーありえるかもしれない。それはそうとどの武器屋に向かってるんだ?」


結構歩いているが中々辿りつかない、煌びやかな武器屋街はすでに通り過ぎてしまっているし、一体どこに向かっているのだろう。

そう言った瞬間足を勢いよく掴まれ、思わず身構える。

こいつまさかーー!!

確かこいつが触れても警告は出なかったしあのAI駄女神も如何なる行為にも運営は反応しないとか言ってた、まさかこいつはロリコン趣味の変態やろうか!!


「離せこの変態!」


「痛い痛い、武器屋はここだし僕は八十代以外趣味範囲外だ」


「それはそれでおかしいし怖えよ!?まだロリコンの方が数倍マシだわ!」


「性癖は皆平等だろう?優劣をつけるなんて愚かでしか無いよ」


「ぐっなんか良いこと言ってる気がするけどくだらねぇ」


オタク的に同意しかできないし問題ないと思うのがひどすぎる。


「ここがその店だ。有名じゃ無いけど品揃えは結構良いし値段も安い、何より色物が多いけど......なんだこれ?」


「不安しかない」


降ろしてもらい店の看板を見るとマジカルアンちゃんのお⭐︎道⭐︎具⭐︎屋(キランっ)と描かれていた。

ピンクで。

ピンクで。

なんかもうめちゃくちゃ不安しかない。

このイケメン男もドン引きしてるあたり何かしら問題があったのだろう知らんけど。


だが男は度胸女は愛嬌、ここは男として度胸を持って店に入るしかないだろう!


ドアを勢いよく開いて。


「ここはやはりエロ下着を着せるギャップ萌えというやつをですね!」


どっかで見たことのある亜麻色の髪の女が涎を垂らしながら。


「うるせぇ勝手に看板改造しやがって。と言うかいきなり消えてどこに行ってやがった!」


スキンヘッドの三十代後半ぐらいの筋肉ムキムキ男が怒っていて。


店内は変態性あふれる防具と武器であふれていた。

なんだかR18タグをつけなければいけない気がしてくるビキニアーマーや下着、なんだかうねうね振動しながらぐるぐる回る短剣的なピンク色のやつ。

ひのき棒が陳列されており視界一杯に不適切が広がっていた。

視界一杯に不適切が人がっていると言う表現を人生で初めてしたやったねた◯ちゃん。


「なっなぁ、お前が勧める店、幼女に勧める店、えぇ?」


「違うんだ.......おやっさん、どうしたんですか?」


「ああ、トーフか。どうしたも何も募集した店番に来たこのガキが店を勝手に改造しやがったんだよ!うちは健全経営してるっつうのになんだこのカオスは!」


よかったおっちゃんはまとものようだ。


「カオスとはなんですか!人間社会は混沌としているものなのです!浄化された世界などゴミ以下QED、よってカオスは正義、ドゥーユーアンダースタンドッ!!」


「わからないしわかりたくもねぇよ!?早く直せ。可及速やかに。できなきゃクビだクビ、今すぐクビにしてやりてぇ......」


額を抑えて心底怠そうにため息を吐くおっちゃん。


「まるでクビにできないような言い方ですね?」


こんな変態とっととクビにして仕舞えば良いのに。


「ああ?嬢ちゃん、このお姉ちゃんはな、残念ながらあと一週間はさようならできないように設定されてるんだよ。おいトーフ、お前何ガキンチョ連れまわしてんだよ?」


「いえ、ガキンチョと言ってもこの人男ですし高校生らしいですよ」


「はぁ!?あり得ないだろ!?どんな手品だよ!!」


「ランダム生成ポチったらこうなりました」


心の底から驚くおっちゃんの反応は正常だ、同じ反応を俺もした。

今もしてるしぶっちゃけキャラ作り直したい、今すぐ作りたい......作れないんだよっ!!


「ってことは初心者......そう言うことか。はぁ.......このゲーム数年やってて初めて見たぜ」


「僕もですよ。それはそうと彼初心者なので防具を見繕ってもらいたいんですけどおそらく筋力が低いはずなので短剣系で」


「そうだよな......そんな小さな体じゃあ筋力値相当低いだろう......」


「ここはやはりエロ下着」


「お前は黙ってろ」


「痛い、痛いです店長ヘッドロックはやめて!」


がっしり掴まれた変態は涙目でジタバタと暴れて抜け出すと店の裏まで駆けて行ってしまった。

変態がさるだけでこんなにも安心感があるのか、新発見だ二度と知る必要ねぇよ。

それはそうと武器だ。


「武器持てるかどうかってさっきこのイケメンがやってたみたいにステータスっての開いて確認できないんですか?」


「ログアウトと金譲渡、後は装備確認しかできないんだ。だから重い順に持たせてって大体の数値を割り出すわけだが......まずこれ持ってくれ」


店長が渡してきた両手長剣を受け取ろうとするが手の上に乗せた瞬間重量に負けて顔面から地面に倒れた。

両手の甲が地面に激突してすごい痛いし鼻が痛む。

重すぎだろ、なんじゃこりゃ。


「始める装備が重すぎでしょ!」


「それ両手長剣用で最軽量の武器なんだが......」


「えぇ......」


「じゃあこれはどうだ?」


店長は軽々と剣を持ち上げて近くにあった短剣を手渡してくる。

今度は慎重に地面の近くで渡してくる。

ここは慎重に両手で握りしめ、ゆっくりと店長が手を離す。

めちゃくちゃ重いが持てないほどではないかもしれないーー


スルッ


「痛っぁ!?」


重くてしっかり持てず右足におもいっきり短剣が落ちた。

めちゃくちゃ痛い、刃の方が下じゃなくてよかった普通に痛かった......


イケメンが短剣を拾い上げて物凄く神妙な顔を浮かべている。

店長の方を見ると似たような顔で段々と嫌な予感が脳裏に走る。


「もっもしかして今のって......」


「その、強く生きろよ」


「今のが最軽量の、武器全体で最も軽い武器なんだ......」


「はぁぁぁぁ!?って待て、筋力値ゴミカスすぎないかそれ!武器持てないってどんなバグだよ!!あれか?ステータスはレベル上げで振れるとか......」


「いやステータス上昇はHPと自動回復だけだ」


まずい、何がまずいって詰んでる。


「どうしようこれ......」


まじめに、切実に、どうしようこれ........

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