第2話〜街、そして悲報
そんなくだらないことを考えていると視界が開け、両眼を見開けば視界一杯に中世の石畳の街が広がっていた。
ものすごくリアルな上空気も若干違う感じがする。
言うならば石畳が水に濡れた匂いというか、なんというかそういうの。
ぶっちゃけめちゃくちゃ雰囲気がいい、街ゆく人々もそれぞれなんかそれっぽい装備を着て和気藹々としている。
辺りを見回していると何故か結構人と目が合う、まさか、これはまさか。
ーーとうとう自分は巨漢の大男になれたのだろうか!!
ふふふじゃっかん視線の高さもいつもと違う気がする、どちらにしろ前とは違うことが確かに実感できる、これはあれだ、多分普段と違うからバグってるのだろう。
確か女神を名乗るAIも体格によってステータスが変動すると言っていたな。
巨漢男ならば引くて数多、やっぱりあれかシールダーというタンク職業ってやつとか、バーサーカーとか、そういうアタッカー系の職業もいけるのでは!?
あれか、周りの人間がこちらを見るのはスカウト的なあれか、ふふふふ、性的な意味ではぁはぁされることはあったがこの視線はーー
ん?なんだかいつもと視線が似てる気がするおいおい冗談よせよ。
ここはあれだ、ひとまず自分の姿を確認するべき、うんそうだそうしよううん。
熟考していると眼鏡をかけてエプロンを着た亜麻色の髪の女性が駆け寄ってきた。
なんだこいつ、そう思う間もなく脇に手を差し込まれ
「あなた!これランダム生成ですよね!こんなロリスキンがあるなんて知りませんでしたよえぇ!素晴らしいですね!」
「はぁ?ロリスキンって、てかよく持ち上げ......」
視界に自分の手が映り、思考が止まる。
眼前の自分の手はそれはもう紅葉のように小さく華奢な手だった。
視界が高くなった、ということは先ほどまで自分の身長が低かっただけでバグとかじゃなかったということか。
じゃあ、じゃあもしや。
ぺたぺたと顔に触れるとやけに大きさが小さい気がする、それになんだかもちもちしてるような......
キラキラと輝く謎の女性の瞳には赤い髪の幼女が覗き込んでいる姿が写っていた。
「は?」
「貴女可愛いですねぇペロペロしていいですか?」
マジでこの女何言ってるんだ?頭おかしいんじゃねぇの?
というかそれよりも問題はこれだ、四肢が短くなってるしなんだか胸に覚えのない膨らみが若干あるし、それに簡単に持ち上げられるレベルの体重って......
「いや、ちょっと待て、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!??」
「大声出してどうしたんですか!ここは是非お持ち帰りして.......」
「おいお前何してる!」
怒声、声が聞こえた方向に視線を向けると鎧を着た兵士っぽい感じの人五人が駆け寄ってきた。
顔は見えないが恐ろしい、ゲッと声を上げて露骨にやばそうな顔をした女性は俺を下ろして一目散に逃げていく。
なんだあの不審者、怖すぎる。
駆け寄ってきた兵士のうち数人がヤバい人を追って走って行き一人がしゃがみ込んで頭の装備を脱いだ。
イケメンだ、露骨にイケメンだ。
金髪碧眼整った顔にこいつ少女漫画のイケメン野郎かってぐらいイケメンだ。
一回おんなじようなイケメンに告白されて性別明かしたら発狂して逃げてってストーカーになったことが......うっ頭が。
「君、大丈夫かい?年齢は?このゲーム子供がやるなら親も同伴しなくちゃいけないんだけどな......」
「いっいや子供じゃ無いんですよ!」
「失礼、レディだったね」
「うわキモ」
どうやったらこんな歯の浮くようなセリフ吐けるんだこのイケメン。
気持ち悪い生理的に無理、露骨に嫌そうな顔を浮かべるとイケメンは豆を喰らった鳩みたいな顔している。
「君、ほっ本当に子供じゃ無いのかい?」
「最初からそういってるだろうが!なんかランダム生成したらこんなキャラになったんだよ!」
「ランダム生成って......あれは元の容姿を数値化してその数値に見合ったキャラを作る筈なんだが」
「俺男だしどうやったら俺が女になるんだよ!?」
だって胸はあるし下半身にはもっこりとあれが......はい?
自分が来てる初心者装備、その下で窮屈そうにしている存在、これはもしや。
そっと手を触れアレの存在を確認する。
ーー息子だぁぁぁぁぁぁ!!!
あれ?胸はある、うん胸はある、息子もある、美少女っぽい顔になってる、身長は多分十歳ぐらい。
はい?
不味い本格的に頭痛がしてきた。俺は巨漢の男らしい男になるためにランダム生成したのになんで悪化してるんだ?一体俺が何をしたっていうんだよまずい病む。
精神的に辛い、これはアレか、新しいアカウント生成すべきか?
悩んでいると騎士の男が口を開く。
「一先ず君は初心者プレイヤーなんだよな?」
「ああ、そうだよ。なんかキャラ生成したらこんな幼女になってたんだよ!!」
「幼女って......まあこういうこともあるのかもしれないな.......」
ものすごく神妙な顔で騎士の男が熟考している。
とりあえずこんなクソキャラ使えない、巨漢男になるのだ俺は。
「ぶっちゃけ新キャラ生成した方がいいよなこれ」
「?いや、このゲーム新キャラ生成不可能だよ?このゲームが言ってる通り第二の人生ーーつまり人生のやり直しというか体の選択なんて不可能だろう?」
「は?」
「は?と言われてもしょうがないだろう?だからキャラのランダム生成はゲーム攻略掲示板ではギャンブル的なやつなんだ。実際強力なキャラになることもあるが大体平凡なキャラになって実際の体を使ったほうが強いことが大体。始める前に調べなかったのかい?」
「いや、そりゃあゲームは攻略見ないでやったほうが楽しいだろ......?」
攻略見れば余裕で攻略できるが完全初見でやったほうが楽しいし......何より達成感が違う。
達成感といえばやっとこさ攻略し終えたゲームで友人にRTA余裕だったわwwwと笑われてクッソムカついた。
というか本当にどうする......キャラ生成不可って......真面目にどうするべきだろう。
ここはアレか?詰みか?詰んでるな?
「どうしようこれ.......」
「あまりにも不憫すぎるし.......そうだ、ちょっと待ってくれ。ゲームガイド」
騎士男の前にポリゴン状の画面が出現し色々と装備やら資金やらの画面が現れる。
ぱっぱと男が選択していくと俺の眼前にも似たような画面が現れる。
資金と表示された画面が現れ、十万コインが譲渡されましたと書かれ、資金ゲージに金が増えていく。
合計金額が十万千コインとなったみたいだ。
「とりあえず最初はこれぐらい有れば十分だろう。なんだか......うん、かなり、うん」
「同情はやめてくれマジで......ぶっちゃけどうすればいいんだこれ」
「しょうがないし僕が通ってる防具屋まで案内してあげよう。君のステータスは確実に低いだろうけどまあ短剣とか、弓ぐらいなら持てるだろうしね」
「えぇ........まぁ、うん、頼む」
なんだこのクソゲー......まあゲームはちょっと不遇ならぐらいが丁度いいし?楽しいし?別にこんなクソキャラでも頑張ればなんとかなるだろう!
意気込んでガッツポーズをすると生暖かい視線を感じる。
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