変化
帰りの電車に揺られ、心地よい騒音に俺は眠気に襲われる。ぼんやりした
はきはきした社交的なところは変わっていなくて、顔は大人びて、華のある、派手な美人になっていた。中学生の頃から綺麗な女の子だったけど、俺は彼女が友達として好きだったので、彼女の好意を受け取れなかった。そんなことがあっても今まで通り仲良くしてくれた辺り、本当にいい子なのだと思う。
「浅石、久しぶり!……か、カッコよくなったね……。でも、浅石のことだし彼女とかまだいないんやろ〜?好きな人とかもさ、いなさそうやなぁ?あたし今フリーやけど、どうよ?」
あの頃みたいに、揶揄うみたいに言う真嶋。俺はちょっと固まって、なんだか少し気恥ずかしくも、
「好きな人、出来たんだ。は、初恋……ってやつ?」
と言うと、彼女も目をぱちくりして一瞬固まった。しかし、彼女はすぐにいつもの笑顔を浮かべて、俺の腕をぱしっと軽く叩いた。
「うわっ、ウッソ〜!?どうせまだ男同士がいいとか言ってると思っとったのに〜!」
「何だよソレ。お前、変わんねえな」
「……浅石は変わったね。都会に染まっちゃったんかなぁ?関西弁抜けとるしぃ。……あたしはなんも変わってへんのに」
冗談めかして彼女が言う。一瞬寂しそうな顔をしたのは気のせいだろうか。
「関西弁は友達に使うの恥ずかしいだけ。真嶋も変わったじゃん。綺麗になったし」
真嶋はまた目を見開く。ちょっと目を逸らして、俺を思いっきり殴った。痛い。
「あんたやっぱ変わらんわ〜!そういうところ!ほんま嫌や〜!……でも、ありがとな。そや、連絡先交換しよ」
俺は如何して殴られたのかよく分からないまま真嶋とLINEを交換した。真嶋からはちょくちょくLINEが来て、人懐こいところは変わって無いな、なんて思った。
***
駅のプラットホーム。さっきまで乗っていた電車が去っていく。座りっぱなしで痛くなった体を伸ばして、家に辿り着く。やっぱり少し疲れてしまった。いつの間にか、我が家はこっちになってしまっていたようだ。こっちにたくさん大事なものができたのだと思ったら、少し嬉しい気分だった。
俺は加山さんに帰ってきたこととお土産のことを伝えた。荷物を整理して、お土産を分けておく。藤花ちゃんにあげる予定の簪の重みが心地よくて、自然と口角が上がった。
会いたい。
中学のクラスメイトと会うのも久しぶりだったし嬉しかったし、会いたかったけれど、藤花ちゃんにはそれ以上だ。前にあった時から一ヶ月も経っていないけれど、会いたい気持ちでいっぱいで、会えない時間がとても長く感じる。
俺はとっくに、藤花ちゃんに溺れてるんだろうな。
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