プレゼント
「か、かわぁ……」
「か、加山さん!コイツも……このナンパ男も呼んだんですか!聞いてません!」
「怒るなって、藤花ァ。当たり前だろ、誠も従業員なんだから。つうか、もとは誠が寒いクリスマスを過ごしそうだから……」
いや、寒かったけども。
藤花ちゃんは俺が来るって知らずに来たのか。俺も知らなかったし、大人ふたりの意図が見え隠れしてるが……ありがたく楽しませて貰うか。
「メリークリスマス、藤花ちゃん」
「あー、1日過ぎたけどね。メリークリスマス、マコちゃん」
「マコちゃんやめろっての。はい、コレ、プレゼント。会えたら渡そうと思ってたんだ」
お店で綺麗にラッピングして貰ったプレゼントを渡す。鞄に入れっぽにしていて良かった。藤花ちゃんは、少し困った顔で受け取る。
「ありがと。でも、あたし、こんな格好だけど、あげられる物無いよ」
いいよそんなの、と笑うと、藤花ちゃんも優しく笑った。わ、笑った、可愛い。
藤花ちゃんは俺に開けていいか聞いてから、楽しそうに袋を開けた。袋から出てきた深い赤色の手袋を見て目を輝かせる。
「ありがと!あたし、赤って好きなんだ。手袋も丁度失くしてたし」
「失くしたってこの前言ってたから。良かった、喜んで貰えて……」
藤花ちゃんは早速手袋をはめて、にへっと笑う。藤花ちゃんはいつも赤い髪飾りをつけているので、赤が好きなのかなぁと思って選んだけど、合っていたようだ。
彼女の笑顔の余韻に浸っていると、誠、と加山さんが俺の名前を呼んだ。振り向くと、加山さんが何かを投げてきたので、慌ててキャッチする。
「び、
「プレゼントだ。久しく貰ってないだろ?開けてみていいぞ」
両手で持てるくらいの四角い箱にはリボンが掛かっていて、そこそこの重みがある。朝起きたら枕元にプレゼントがあるワクワク感を思い出す。小さい頃、サンタさんに会いたくて布団の中で頑張って起きてようとしてたっけ。
「なんだろ……加山さんだしなぁ……!」
お洒落な物入ってそう、と呟くと、
「育毛剤!……嘘嘘、冗談だっつの、アホヅラすんなって」
「わぁ!マグカップですか!ありがとうございます!……って陶器なら投げちゃ駄目じゃないっすか!」
「キャッチできたしいいだろ。それに、藤花には手渡ししたし」
「えぇ……」
貰った黒いマグカップにはわんこの絵が小さく描いてあって、なんと藤花ちゃんとお揃いだった。藤花ちゃんのは薄紫で、白い猫の絵が描いてあった。なんかお揃いのペアカップみたいで……ありがとうございます。
ひとりで幸せにじんわり浸っていると、佐野さんもプレゼントをくれた。開けて開けて、と言われて開けてみると、紺色のニット帽が入っていた。生地が柔らかくて暖かそう。
「佐野さんありがとうございます!でも俺、何もお返しできなくて……」
「あら、いいのよ。子供はプレゼントを貰うものでしょ?」
子どもとしてカウントされたのは久しぶりだ。佐野さんや加山さんからしたら、俺だって十分子どもなのか。よし、来年は藤花ちゃんにだけじゃ無くて、加山さんと佐野さんにもプレゼントを用意しよう。大きなケーキを買って、閉店後、また今日みたいに少し遅めのクリスマスパーティーをしよう。
ケーキを食べてコーヒーを飲んで、沢山お喋りをして、最後にみんなで写真を撮った。
ニヤッと笑う加山さん、ふわっと笑う佐野さん、可愛い照れ笑いの藤花ちゃん、気持ち悪いくらい笑顔の俺。
また来年、同じ日にみんなで写真が撮れますように。
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