第20話 姉妹の土産①
昼食を済ませ園内を見終えた俺たちは、お土産ショップに来ていた。
俺は特に買う予定もなかったので外で待っていようと思ったのだが、強引に連れてこられてしまった。
「ねえ、
「俺おじさんの好みとか知らないからわからないよ。
おじさんと話すときは向こうからの質問に答えてるだけだったから。おじさん自身のことに関してはあんまりわからない。
「う~ん。私もあんまり好みとかわかんないんだよね」
「私も~」
香花の言葉に相槌を打つ
まじかよ……。二人して親の好み分からないのか……。
と思ったけど、俺も父親に何買ったらいいかわからないな。意外と難しい問題かもしれない。
「
「……………………」
「ごめん……私も、あんまり、わからない、から……」
「だよね」
「でも……一緒に、考える、ことは……できる、から……。皆で、お父さんと、お母さんのお土産、探さ、ない……?」
珍しい杏の提案だった。たどたどしくも杏なりにコミュニケーションを取って仲良くなろうとしているのが伝わってくる。その一生懸命な姿は、いつも縮こまって見える杏を大きく見せていて、成長しようとしているんだなというのがひしひしと伝わってきた。
「いいよ~」
「うん。いいね」
「……うん」
そんな杏に対して姉妹たちは三者三葉の言葉を返す。
そして四人であれこれ話し合いながら店内を見て回り始めた。おそらく唐子だけは会話に参加していないのだろうが……。
しかし、少し離れたところから見たその姿だけは四姉妹だなと思える光景だった。
四人の距離が近づいている。会話は聞こえないが、彼女たちが同じ目的をもって行動している姿を見ることができて俺は嬉しかった。お土産を買うというほんの些細な事だけれど……。
手持ち無沙汰になった俺は店内に所狭しと並べられた商品を手に取ったり取らなかったり物色してみる。お菓子やぬいぐるみ、キーホルダーなど色々ある。
でもこういうお店の商品って高いんだよな……。値札を見ると本当にこんなにするのかと思うほど高い商品があったりする。だから、俺はあまり買う気にはならない。
しかし、今日は買ったほうが良いのかなと思ってしまう。それは四姉妹が真剣にお土産を選んでるのを見たからかもしれない。
家族にお土産か。何を買えばいいのだろうか。無難にお菓子とかかな。
その考えに行きついて、結局さっきの香花と同じことを思っていることに気が付いてしまった。
やっぱり難しいな……。
しばらく考え事をしながら店内を歩き回ってみるが、何をお土産にすればいいのか全然思いつかない。
そこへ、買い物を終えた四人がやってきた。
「結局何にしたんだ……?」
「パパのは象のマグネットにした~」
「お母さんのは……ウサギの、ぬいぐるみに、しました……」
蕾來と杏がそれぞれ教えてくれた。
おじさんへのお土産は蕾來がチョイスしてそうだな。
「牧は何か買わないの?」
「買おうと思ったんだけど、何買えばいいかわからなくて……」
「誰にあげるの?」
「家族に」
「家族かー。そういえば牧って兄妹いるの?」
「いるよ」
「まじ!? 初耳なんだけど。弟かな?」
「私は妹がいると思う~」
「姉と妹がいる」
「やった~当たり!」
「外れた……」
右手を突き上げて喜ぶ蕾來と肩を落とす香花。この話題でよく取れるなと思うほどの大きなリアクションだ。
まあ何事にも全力なのは良い事なのかもしれない。
「私見たことないよ」
「別に紹介もしたことないしな」
「高校生?」
「いや、姉が大学生で妹が中学生」
「そうなんだ。名前は何て言うの?」
「
「へぇ~、会ってみたいな」
香花はそう言うが、これはなかなか難しい相談だ。
「多分無理だな……」
なぜなら。
「俺の言うこと聞いてくれる気がしないから」
「「「?」」」
唐子以外がそろって首を傾げた。
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