23戦目 予想対決
僕はエリスの行動ならだいたい予想ができる。
もちろん突拍子のないことをしてくることもあるけど、全部が全部予測不可能というわけではない。
「ふっふっふ。今度こそ完全なる運ゲーよ」
「最近エリスの方から勝負を提案することが多いけど、そんなに早く100回負けたいの?」
「ばばばバカ言わないよ。早くあんたを負かしてこの勝負生活を終わりにしたいだけ!」
なぜか顔を真っ赤にして焦ったような表情で言い訳されてしまった。
僕だって早く100勝したいからエリスのやる気はありがたい。
「とにかく気を取り直して次の対決よ。名付けて予想対決」
「はあ……?」
何かの予想をするんだろうけど肝心の何かがさっぱりわからない。
僕があっけに取られているとエリスが腰に両手を当ててドンと立ちふさがる。
「あそこの路地から男の人か女の人、どっちが出てくるか当てた方が勝ちよ」
エリスが指差した先には人通りの少なそうな路地があった。
コンビニと喫茶店が並んでいるので店の前は人の流れがあるものの、その間となると通り抜ける人は少ない。
予想するのはいいけど結果が出るのを待っていたら日が暮れそうだ。
「2人の予想が被ったらどうするの? 引き分け?」
「いいえ。ここは負けが込んでる私が先に予想して、星夜は私と違う方を選んだことにするわ」
「つまり、エリスが負けるのは自分の責任ってわけか」
「なんで私が負ける前提なのよ!」
ツインテールを逆立てて反抗する姿は何度見ても可愛い。本当にイジりがいのある幼馴染だ。
でも困ったな。これは完全にエリスのペースだ。
今のところ勝てる見込みは完全に50%だし。
「まあ平日の昼間だし、ああいうお店の間からは男の人が出てくるんじゃないかな。納品とかで」
「なるほどね。なら私は女の人が出てくると予想するわ!」
僕はガチな予想で男の人と予想したのにエリスはそれに逆張りして女の人を選んでしまった。
誘導する気なんてさらさらない。
意地を張って僕の逆を行く可能性はあったとはいえ、まさかここまで簡単に逆張りしてしまうとは。
「星夜の予想はたしかに正しいと思うわ。だけどね、その逆をいって勝ってこそ真の勝利なのよ!」
仁王立ちをしてドーンと立つものの体が小さいせいで迫力はない。
むしろ真の勝利とか言い出した時点で若干の負けフラグのようにも感じる。
「じゃあ僕は男の人でいいんだね?」
「もちろん。ふっふっふ。負けた時の言い訳でも考えておくことね」
エリスが勝手に選んで僕は余りものだから言い訳も何もないし、それに僕は勝つつもりで路地を見守っている。
そっちこそ自分の選択のせいで負けても吠え面かくなよ?
「……なかなか人が来ないわね」
「だから言っただろ。この人通りに対してあそこは人が少ないんだって」
下手したら店の敷地みたいに見えるからなかなか通りにくい。
わざわざあんな狭いところを歩かなくても困らないしね。
「あっ! 誰か来た」
「本当か!?」
あまりに誰も来なかったので、ついに動きがあったのかと妙に期待が高まる。
「さあ、どんな人が来るかしら」
僕は男の人が来るという予想を立てたものの、男の人だけが通るわけじゃない。
たまたまこの1回だけ女の人が通る可能性だってある。
完全なる運勝負にゴクリと唾を飲み込んだ。
「あれは……! 男の人ね。どこからどう見ても」
「だよな。だよな!」
ただ男の人が歩いて出てきただけとは思えないテンションに、何も知らない男の人が怪訝な顔が僕を見つめる。
そんなことも気にならないくらい勝利の喜びに酔っていた。
「あんたの予想通り納品の人みたいね。これは完全に負けだわ」
「普段は素直なエリスが変に意地を張ってくれたおかげだよ。ありがと」
「ぐぬぬっ! なんかそういう風に言われると余計に悔しさが込み上げてくる」
うなだれていたかと思えば今度はほっぺをぷくーっと膨らませて僕をにらみつけてくる。
この表情の変化は何年見続けたって飽きることがない。
多少エリスの選択をコントロールしたみたいなところはあったけど、運の要素が強いこの対決を制してほっと胸を撫でおろした。
大宮エリス、23敗目。
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