22戦目 再度じゃんけん対決

「むむむむ。やっぱり運ゲーを仕掛けるべきかしら」

「どんな勝負でも僕は勝ち筋を探すけどね」


 英会話に英語禁止と真逆の両対決を制して、僕は改めてエリスに勝ち続けることを宣言した。

 白星を積み重ね続けているもののまだ20台。まだまだ先の長い戦いだ。


「よし! じゃんけんしましょう。三分の一の確率で勝てるから」

「いいよ。僕はその確率を経験と予測で上回るけどね」

「何を言ってるのやら。じゃんけんの神様は平等よ」


 はいはいとエリスをなだめつつ僕はカバンの中をあさる。

 確かこの辺に最近お気に入りのアレを入れていたはずだ。

 単純なエリスのことだからきっとこれで勝利を掴める。


「そうだ。飴食べる?」

「いいの? ありがとう」


 僕が差し出した飴をエリスは何の疑いも持たずに受け取った。

 もちろんこの飴に惚れ薬が入っているとかそんなことはない。

 ただ、飴を手にしたことで彼女の手は一度ギュッと握られる。


「じゃんけんぽん!」


 勢いよくじゃんけんを宣言した。

 するとエリスは反射的に飴を握った手、つまりグーを出した。

 こうなるように仕向けた僕は手のひらを大きく広げてパーで勝利を収める。


「星夜、あんたまさか……」

「作戦勝ちということで」

「ぐぬぬ……あ、おいし」

「それは良かった」


 ハチミツにレモンを加えた甘酸っぱい、僕が最近気に入っている飴。

 エリスの口にも合ったみたいで良かった。


「今日のところはこの飴に免じて卑怯な手を使たことを許してあげるわ」

「飴に釣られたエリスが悪いんだよ? 誘拐されなきゃいいけど」

「そこまで子供じゃないですー」

「ある程度は子供だって認めるんだ」

「当然よ。だってまで高校生だし」


 高校生らしからぬ、下手すれば小学校高学年にも負けそうな薄い胸を張り上げてエリスは高らかに宣言した。

 この子供っぽさがエリスの可愛いところであり、それを受け入れるところがエリスの強さだ。


 大宮エリス、22敗目。

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