11戦目 カラオケ対決

 土曜日の夜が一番好きな時間帯だ。

 宿題を終わらせてしまえば自由な時間がやってくる。

 この高揚感に勝るものはなかなかない。


―星夜、明日カラオケ行きましょう


 幼馴染から送られてきた1件のメッセージが土曜夜の高揚感を遥かに上回った。

 休日に2人でカラオケに行くなんてもう実質恋人じゃないか。


―いいけど、採点機能で勝負でもする気なの?


 歌にはあまり自信がないので自分からは勝負を持ちかけなかった。

 もちろんエリスが挑んできたら受けて立つけど。


―当然! ふっふっふ。覚悟しなさい。


 文字を見るだけでエリスの不敵な笑みが目に浮かんでくる。

 一体どんな浅知恵で僕に勝つ気なんだろう。

 声自体は可愛いしパッと見は歌もうまそうなんだけど、実際はあんまり……なのがエリスの可愛いところだ。

 

―で、どこのお店に行くつもり?


―決まってるじゃない。駅前のお店よ。


―あそこ3月で閉店したけど。


 既読が付いて5分。エリスからの返信が途絶えた。

 カーテン越しに向かいの部屋の電気が付いてるのは確認できるので寝落ちではないはずだ。


―ちょっと! いつ閉店したのよ。


―だから3月だってば。


―うぅ……今回はちょっと自信あったのに。


―これは勝負を持ちかけたエリスの不戦敗ってことでいいのかな?


―んが!?


―うん。エリスの不戦敗。やったー。おやすみ


―待ちなさいよ!

―まだ話は終わってない

―おーい

―起きてるんでしょ?

―ねえ!


 何回か連続できた通知でチラッとメッセージを確認できたので僕的にはもう用事は済んだ。

 あとはこのまま未読スルーしておけばエリスの不戦敗ということで処理されるだろう。

 いやー、一緒にカラオケに行けなくて残念だ。


 大宮エリス、11敗目。

 

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