4戦目 早起き対決
身長対決みたいに100%自分が勝てるものはそう多くない。
突然じゃんけんを挑まれたらあっさりと僕が負けるかもしれないし、テストの点数勝負で僕が名前を書き忘れて0点になるかもしれない。
エリスを100回負かせるまではほんのちょっとの油断すらも許されないのだ。
3連勝した余韻を引きずらず、気を引き締めて大宮家のインターホンを鳴らす。
「はい。星夜くん?」
「おはようございます」
時刻は午前7時10分。
こんな時間にインターホンを鳴らすとしたら登校の迎えに来た僕かピンポンダッシュくらいだ。
「毎朝ごめんなさいね。エリスったらまた寝坊して」
「いえ。エリスは寝坊した。つまり早起きできなかったんですよね?」
「そうよ。まったくもう毎日毎日」
エリスママの呆れた声とは反対に、僕は大宮家の玄関で小さくガッツポーズした。
絶対に言い逃れできない、それも身内の証言をしっかり確保したのだから。
「おはよう!」
玄関を勢いよく開けたエリスはヘアゴムで長いブロンドヘアーを二つにまとめだす。
「支度が終わってから出てくればいいのに」
「だってママが星夜を待たせるなって」
「いや、エリスが髪を結び終わるのを待ってるけど」
行動の順番が逆になるだけで結局出発する時間は変わらない。
一つ良いことがあるとすればエリスが髪を結ぶところを見られることだ。
基本的にツインテールにしているので髪を下ろした状態の姿を拝む機会は少ない。
娘を急かしたエリスママに感謝だ。
「エリスママから聞いたぞ。寝坊したんだったな」
「ぐっ……ママったらまた余計なことを」
「早起き対決は僕の勝ちだな」
「はぁ!? そんな後出しみたいな対決で勝って嬉しいわけ?」
「嬉しいよ。これでエリスが僕の彼女になる未来にまた一歩近づいたんだから」
「なっ! あんた、そういうことを平然と」
ぷいっと視線を横に逸らされてしまった。
ぷにぷにのほっぺをつんつんしたい欲求に駆られたけど、それはちゃんと彼女になってからにしよう。
大宮エリス、4敗目。
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