3戦目 身長対決

 順調に勝利を重ねてはいるもののまだ2勝目。目標の100勝までは遠い。

 そんなわけで今日は自分が確実に勝てる勝負を挑むと心に決めていた。


「昨日はエリスの勝負に乗ったんだから今日は僕が仕掛けていいよね?」

「構わないわ。どんな勝負でも受けて立つ」


 腰に手を当てドーン! と立ち塞がる姿は勇ましいんだけど、いかんせん背が小さいので迫力を感じない。

 我ながらだいぶ卑怯な勝負なのでこんな風に堂々と受け止めてくれるエリスに若干申し訳ない気持ちを抱いた。


「で? 一体何で対決するわけ?」

「うん。身長」

「……は?」


 先程までの勇ましさはどこへやら。

 エリスはマヌケな顔を浮かべて上目遣いで僕を見つめる。


「僕は170㎝だけどエリスは?」

「ひゃ……142㎝。伸びしろはあるわ!」

「うんうん。そうだね」

「胸を見るのはやめなさい!」


 おっと視線に気付かれてしまったようだ。

 女子は胸への視線に敏感という噂を聞いたことがある。それは平らな胸のエリスにも当てはまるようだ。


「とにかく僕の勝ちだね」

「ふ……まあいいわ。こんなことでもしないと星夜は勝てないってことなんでしょ?」

「まあね。エリスは手強いからなー」

「棒読みで言うな!」


 ずっとエリスと一緒にいた僕だからこそ勉強も運動も苦手なエリスの強さを知っている。

 そんな幼馴染に敬意を表したコメントなのにあまり感情を乗せられなかったせいで煽ったように聞こえてしまったらしい。


 大宮エリス、3敗目。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る