2018年8月21日
僕らの学校、私立平城学園高校は自称進学校だ。だからなのかなんなのか知らないけれど、長期休みの補講がそれなりに充実している。高3だけ。でも僕の友達は基本みんな来ない。
「暑い〜また教室開いてないやん先生〜」
今は夏休みだ。ただ僕は家が嫌いなので、基本毎日学校にいる。けれど家から学校がそれなりに遠い。でも長時間満員電車に乗りたくないという理由で、早い時間に学校に来るのが習慣になっていた。いつも朝練しにくる野球部の中でも、登校が早いメンツと一緒に山を登っている。だから朝7時には学校に着く。
そんなわけで地獄のように暑い夏休み期間も、早くから地獄坂を登って僕は学校にきていた。1時間目に世界史の授業があるときだけ、授業のあるレクチャー教室を20℃急速冷凍にするのが僕の日課だ。自習用の教室は空調をいじれない。暑い。
廊下で1人で待っていると、河合さんがきた。河合さんは夏休みでもたまに見かける。山の下に彼女の通う塾があるので、きっと塾が開くまで時間を潰しにきたのだろう。
「おはよう!めっちゃ暑いなぁ!」
「おはよう〜まだ開いてないで」
地獄やわ、と呟きながら、河合さんはしきりにタオルで汗を拭っている。今日はなにをするのか聞こうとすると、彼女はレッドブルのパチモンが起訴起こされたかなんかでなくなったから代替品を探してる話と、幽霊の話をして1時間目セミナーあるから、と去っていった。嵐のようである。
そんなことをしていると、世界史の先生が教室を開けてくれた。西洋史担当の先生とはそれなりに喋るが、東洋史担当のこの先生とはなかなか仲良くなれない。先生に褒めてもらうためにももっと世界史を頑張ろうと思いながら1人で自習をした。
2時間目にレクチャー教室で英語の補講があったので移動すると、丹波さんと
「おはよう〜今日2人とも学校おるねんな」
「さぼれへんわ、さっきそこで丹ちゃんに会ってんやん。から一緒にきた」
「そうなん、えらいやん。てかこの教室寒ない?」
そう言って僕は教室の冷房の温度を上げた。上げている途中にふと好奇心が湧いて温度を上げるボタンを連打した。
「いや、何してるん?!暑いて!」
「これ何度まで上がるんか気になった」
全力で止めようとする丹波さんとボタン連打の攻防をして、結局35℃まで上がると分かって僕が満足して終わった。ちゃんとそのあと24℃にしておいた。横で立花さんはずっと爆笑していた。止めてや、と丹波さんがぼやいていた。
授業が終わってご飯を食べに行くと、食堂で
宮ノ下さんとも会ったのでみんなでごはんを食べた。なんでかわからないけれどゴルバチョフの話になって、そういや高1のとき日本史リッスンアンドリピートとかわけわからんことしたな、という思い出話になった。同じクラスだった僕と丹波さんと齋藤さんで、
「いくやまいまいおやいかさかさ!」
「漢冶萍公司!」
など習った単語を思い出して笑っていた。ふと僕も思い出したので、
「福地は立憲帝政党!」
と言うと、丹波さんが爆笑した。なんだかツボに入ったらしい。外野はなんやこいつらみたいな目をしていた。内輪の話してごめん。
齋藤さんと僕は世界史選択で、同じ世界史の補講をとっている。ちなみに立花さんも世界史選択だが補講はとっていない。仲良しの武島さんがこの補講をとらなかったかららしい。立花さんは割とすぐ人に流される。齋藤さんと食べ終わったあと次の時間の世界史の授業に一緒に行きたいなと思ったので、
「次世界史一緒にいかん?」
と誘った。彼女はすぐに了承してくれた。
「でもな、ちゃうねん聞いて、僕の周りなんでか知らんけどいっつもみんな座ってくれへんねん。なんか僕だけアパルトヘイトされてるんやん。やから次横座ってや」
「それお前が世界史受けたいからって1人で前行くからやん。私ら後ろにおるのに。」
「後ろやったら前見にくいしやる気ないみたいやんか〜」
「知らんて、世界史だけやる気ありすぎやろ数学やれや」
ずっと駄々をこねていたら、哀れんでくれたのか齋藤さんは横に座ってくれた。なんだかんだ優しい。
最後に国語の授業があったので、帰ると言っていた齋藤さんと別れて教室に行った。また丹波さんと立花さんに会った。英単語帳で問題を出し合っていたので入れてもらったが、
「recognize」
「発生する」
「pity」
「小さい?」
呆れかえられた。ごめんやん。
授業が終わり、
「小説2問しか合ってなかった〜」
「たっちゃんまだいいやん。小説なんて根拠載ってないから全然わからん」
「現文てフィーリングじゃないん?」
そんな話をした。今日はみんなもう授業がないらしいので一緒に山を下った。今日は珍しく人がいっぱいいて楽しかったなぁ。みんなといると恒常的に変なことが起こって楽しい。そういや宮ノ下さんはなんで学校おったんやろ。まあいいか。明日も楽しく変なことしよう。
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